ライトノベルを読んでいるオタクは実はそれほど多くない

複雑な気分ではありますが、「ライトノベル」というジャンルは

アニメ・マンガに対してまだまだ比肩しうるものではないと考えます。

主な根拠は媒体としての影響力と市場規模の小ささです。

ただ、そうすると美少女ゲームというジャンルの影響力の大きかったことに説明が付かないんですよね。

ネットでの言及数などに鍵があるのかもしれませんが。

 ライトノベル美少女ゲームでオタクへの影響力に差があることについては、ライトノベルを読んでいるオタクは実はそれほど多くない、ということで説明がつくかと思います。美少女ゲームユーザーのほとんどが(自分がオタクであることに自覚的な)オタクなのに対して、ライトノベルのメイン読者は中高生です。そして中高生のライトノベル読者のほとんどはオタクコミュニティとのつながりを持ちません。結果として、オタク界隈では美少女ゲームの影響力が強いように見えるわけです。

 このように、ライトノベルの歴史や変化を考える際には、私は作り手よりむしろ読者の側に目を向けるべきだと思っています。

 少なくとも『スレイヤーズ』以降、ライトノベルは長らく「中高生を対象とした読み物」でした。多くの読者はそのうちライトノベルを読むのをやめてしまいますが、一部は大人になっても読み続けます。そうした読者が徐々に増えていき、最近になって目に見える大きさの読者層を作るようになった。彼らと中高生の読者とではもちろん作品の嗜好が異なるため、それまではあまり売れなかったような作品が売れるようになります。そのうち作り手の側がそれに対応するようになり、結果としてライトノベル全体が変化したように見えるわけです。さらに、大人の読者は美少女ゲームの素養がある人間(=自覚的オタク)が多い、と考えれば、ライトノベルへの美少女ゲームの影響についてもうまいこと説明がつきます。

 しかしながら、ライトノベル読者のメインが完全に大人(オタク)に移行したわけではなく、メイン読者はあくまで今でも中高生。ゆえに美少女ゲームの影響はあちこちで見られながらも、全体としてはそれほど強い影響を与えているようには見えない、という結果になるわけです。今後ライトノベルの読者構成が変わればそうした状況もさらに変わっていくでしょうが、少なくとも現時点ではまだ「メイン=中高生」の図式は崩れていないというのが私の認識です。

 この「ライトノベルのメイン読者は中高生である」というのはライトノベルというものを考えるうえで非常に重要な命題だと思うのですが、なぜかこういう時にあまり話題にのぼりません。というか、中高生の読者というもの自体に目が向いていない人が大半のようにも思います(まあ、だからこそ今回のような話題が出てくるのだと思いますが)。そもそも読者サイドから変化を追う、というやり方自体がマイナーなんですかね。ううむ。