来楽零『ロミオの災難』

 近づく文化祭に備え、演目を決めあぐねる一年生5人だけの演劇部。突然現れたおあつらえ向きの『ロミオとジュリエット』の台本でなんとか全員の配役を決めてしまう。しかし、いわくつきの台本に秘められた思いは、突然4人の部員にロミオ役の如月への恋心を強く抱かせた・・・


 これはなかなかおもしろい作品でした。
 カラーページのイラストからかなり怖いホラーを覚悟したのですが、全然そんなことはない青春恋愛ものでした。台本のおかげでドロドロではありますが。
 自分のものなのか、それともほかの誰かのものなのか判別し難くなってしまった感情と、それによって変化する人間関係で最後まで引っ張りきっています。特に、5人の部員と登場人物との重ね合わせ方がうまかったですね。無難にロミオ役の如月と4人の女性という組み合わせにするのではなく、男性の西園寺を加えたのがいろいろなところで生きています。


 基本的には純な恋愛ものですが、随所にコミカルなシーンを挿入して場を和ませ、それでいて『ロミオとジュリエット』の劇中はドタバタしながらも張り詰めた緊張感をキッチリ最後まで維持するなど、ぐんぐん読ませる力がありました。
 ラストできれいにまとまっているだけに、続編がないであろうことが残念です。もっとも、これで続編があって、芝居をするたびにいろいろな人の感情を押し付けられるのでは本当にコメディになってしまいますが。

2008年3月22日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
ロミオの災難 (電撃文庫 ら 4-5)
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