雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

城の中のイギリス人/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ


闘牛と遠近法

城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))

城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))


マンディアルグが匿名で出版した奇書といわれている作品。
シュルレアリスム系の作品には性的な要素が多いが、これもまたそう。
性的な趣味が奇であるところに目が奪われるが、注意深く読むと奇であることの根源はそうではない。
まずは、マンディアルグの作品の多くがそうであるが、オブジェに対するこだわりが随所に見られる。
つまり、ただの風景描写では留まらず、そのモノに対して、あたかもクローズアップするかのように、あるいは狂言回しが解説するかのように、本文に割り込んでくる。
そのため、もともと小さなものが大きく、意味の無いものが意味あり気に、見えているはずのものが省略され、物語の遠近法というか、物語空間が歪んでいる。
意味ありげなイデオロギー的な事も、実は意味が無い。
その歪みを引き起こすことこそがシュルレアリスム的手法では無いかと思うのだ。
言わばマグリットがよく使用する手法のような。
物語の筋はここでは書かない。
ほぼ3日の出来事であるが、時間の流れも歪んでいる。
意味ありげなエピグラムも、物語の最後も、ある種のユーモアでさえあるようだ。


再版されたのだろうか?

城の中のイギリス人

城の中のイギリス人

生田耕作氏の訳もある。
こちらは、ピエール・モリオン名義だが、もちろんマンディアルグの偽名である。
閉ざされた城の中で語る英吉利人 (中公文庫)

閉ざされた城の中で語る英吉利人 (中公文庫)