常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

英語思考を誘発する本

蔵出しです。もう何回目の再使用でしょうか。英語ライティングの基礎をつくってくれた本の紹介です。(by UG)

(ニュース専修2004年1月号原稿)
「英語学習のための読書ガイド」(第7回)
和文英訳の修業』(佐々木高政,文建書房,1991年,1,785円)

 これまで音読と文法の本を紹介してきましたが,小生担当の最後は「書く英語」の本で締めます。
 若いころは「話す英語」が一番難しいと思い込み,それが目標でした。でも,今,何が難しいかと問われれば,即座に「書く英語」と答えます。「書く英語」は永遠に残ります。はかない(ephemeral)「話す英語」とは違い,それには怖さがあります。  
 本書との出会いは大学3年。通訳のまねごとをしていた筆者は,話し言葉の「ゆるさ」に身をゆだね,適当にお茶を濁す体たらく。そんな若者に次に進むべき段階を示してくれたのがこの名著でした。
 本書は「予備編」「基礎編」「発展編」の3部構成。「予備編」には「基本文例集500」があり,和文をみて即座に英語がでるかの自己分析ができます。「基礎編」には「英語らしい英文」のこつが満載。その中の「予備練習」(書き換え)と「研究問題」にある「考え方」を通して,訳出への視点が身につきます。「考え方」では例えば,「夜,ものを食べると胃にもたれやすい。」が,なぜFood at night is likely to sit heavy on our stomach.となるのかのプロセスが丁寧に示してあります。「発展編」は挑戦セクション。「添削例」と3通りの「訳例」と自分の英文を比較することによって,思考回路が活性化されます。
 頭と口と手を使って,実際に紙に試訳を書き,推敲を重ねる。そのような思考の繰り返しの機会を,これからの学習過程のどこかで与えてください。それは『英語教育』(大修館)の「和文英訳演習室」担当者としての信念でもあります(2009年度末まで—by UG)。本書はそのための格好の「誘発剤(?)」です。