常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

英語の発想へと誘う本

蔵出しです。6年くらい前に書いたものです。30年前の英語学習者には『アメリカ口語教本 上級』(研究社)と並ぶ定番だった本です(当時,英検1級に受かった連中は皆やっていたなあ)。
確かに古い。例文も古色蒼然としています(英文のすべてが戦前の新聞,雑誌,小説から著者 佐々木氏が収集したもの!)。しかしながら,達意の英文を書くには,どういう心がまえで,どのようなアプローチが具体的にとればよいのかを,これほど具体的に示した本はそれほど多くはありません。
この本とつきあった後には,同じ著者の『英文解釈考』(金子書房)へと進みました。これはかなりの英語力を前提にする英文修行の次の段階の本です。
なお,著者は元一橋大学教授で,一昨年,幽明界を異にされたと,研究社の編集部の方からお聞きしました。合掌。

これから白金です。関東では今日は嵐になりそうとのこと。お互いに気をつけましょう!(UG)

  • -

和文英訳の修業』(佐々木高政,文建書房,1991年)
若いころは「話す英語」が一番難しいと思い込み,それが目標でした。でも,今,何が難しいかと問われれば,即座に「書く英語」と答えます。「書く英語」は永遠に残ります。はかない(ephemeral)「話す英語」とは違い,それには怖さがあります。  
本書との出会いは大学3年。通訳のまねごとをしていた筆者は,話し言葉の「ゆるさ」に身をゆだね,適当にお茶を濁す体たらく。そんな若者に次に進むべき段階を示してくれたのが,この名著でした。
本書は「予備編」「基礎編」「発展編」の3部構成。「予備編」には「基本文例集500」があり,和文をみて即座に英語がでるかの自己分析ができます。「基礎編」には「英語らしい英文」のこつが満載。その中の「予備練習」(書き換え)と「研究問題」にある「考え方」を通して,訳出への視点が身につきます。「考え方」では例えば,「夜,ものを食べると胃にもたれやすい。」が,なぜFood at night is likely sit heavy on our stomach.となるのかのプロセスが丁寧に示してあります。「発展編」は挑戦セクション。「添削例」と3通りの「訳例」と自分の英文を比較することによって,思考回路が活性化されます。
 頭と口と手を使って,実際に紙に試訳を書き,推敲を重ねる。そのような思考の繰り返しの機会を,これからの学習過程のどこかで与えてください。それは『英語教育』(大修館)の「和文英訳演習室」担当者(*当時)としての信念でもあります。本書はそのための格好の「誘発剤(?)」です。