常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

のけ者pariah

最近,THE DAILY YOMIURIのCOMMETARYに進出し始めているpersimmon柿生です。今回は,そこのTea Party kowtows to NAACPという記事(THE DAILY YOMIURI, 7/22/10付け)から英語の落ち穂拾いをしていきます。以下は記事から一部引用したものです。WilliamはCalifornia出身のジャーナリストMark Williams氏を指します。彼は人種差別に強く反対してきました。
If William is now a pariah in tea party circles, that’s progress.
今回はpariahという単語に注目します。『オーレックス英和辞典』(旺文社)には「(社会の)のけ者」とありました。さらに『ニューズウィーク雑学版 はまり訳読本』(TBSブリタニカ)には以下のような解説がありました。
「インド人は,このいわゆるカーストに当たる四つの身分,つまり司祭階級バラモン,王侯・武士階級クシャトリア,庶民階級バイシャ,隷属民シュードラを「バルナ」と呼んでいる。そして実際にはこの下にもう一つのバルナがあった。不可触民として社会からつまはじきにされていた「パリア」である。マハトマ・ガンジーはこの不幸な人々をビシュヌ神の子を意味する「ハリジャン」の名で呼び,彼らの解放に力を尽くした。以来,ハリジャンはパリアの呼称なったが,残念なことに階級による差別が全廃されたわけではない。タミール語からきたこのpariahは英語でも,世間から白い目で見られる人,のけ者の意味で使われるようになった。…pariahと同じ意味の言葉にoutcastやuntouchableがある。往年のテレビシリーズで最近映画にもなった『アンタッチャブル』は,カポネの側から見ての「不可触民」。つまりいくら誘っても買収にはいっさい応じなかったいまいましい奴というわけだ。」(pp.80-81)
ちなみに,先日の読売新聞(7/16)の朝刊(8面)にインドやパキスタンで問題になっている名誉殺人が採り上げられていました。カーストに対しての考え方に世代間で差があり,カーストを無視して結婚しようとする若い恋人同士をその家族が一族の名誉のために殺害してしまうというものです。
pariahの背景には,このような歴史的・文化的意味も含まれているのですね。(ゼミ生persimmon柿生)