立春 ( L’ EQUINOXE DE PRINTEMPS – vieux calendrier )

今冬は雪も雨もよく降ります。雪が積もれば電車のダイヤが乱れ、道路は渋滞、足元が滑るので気を遣います。雨が降れば歩道に水が溜まり、それが深いので歩行者が車道に下りて歩くため自動車はノロノロ運転、丁度1世紀前の1910年1月に起こったパリ大洪水(la crue de 1910)が100年に1度起こると云われているのを思い出し、恐ろしくもなります。寒さが戻って空気が凍るように冷たく、パリの運河(les canaux de l’Ourcq,de Saint-Denis et de Saint-Martin)が凍って厚さ4−5cmの氷が張りました。5年振りで“砕氷船”(le brise-glace)が現れての作業に、川舟(la peniche)の為かと思えば、パリっ子達が悪戯にアイススケートをやったり、運河を歩いて渡ったりするのを防ぐ為とのことでした。皆に寒い寒いと書き送るものですから、或る友人が「世界中で温暖化、温暖化と叫び続けているので、“少し頭を冷やせ”との天の配慮でしょうか。」と書き送ってきました。それでも“立春”を迎える頃となり、自然はそれなりに活動を開始、木々の枝先は赤く膨らんで、向かい側のポプラの木(le peuplier)には既に春を近くに感じているのでしょう、カササギ(la pie)のカップルが小枝を咥えてやって来ては不器用に巣作りを始め、その周りを、自分の領域内に断りもなく何だ、とばかりにカラス(le corbeau)が意地悪げに飛び回っています。毎日2分3分と日が長くなり、春に向かっているのが感じられると、何か明るい希望に胸膨らむ思いがします。2月4日は立春、2月14日はバレンタイン・デーそして旧正月でもあり、パリのベルヴィル(Belleville)や13区のショワジィ通り、イヴリィ通り(avenue de Choisy, avenue d’Ivry)など中華街では「春節」を祝う赤い提灯も派手やかに、正月用品の大売出しで賑わっています。最近ではこちらの人も”Nouvel An Chinois”(中国の正月)と呼んで共に楽しむようになりました。

“ドラクロアへの情熱”展 ( UNE PASSION POUR DELACROIX )

1863年8月13日に結核(la tuberculose)で亡くなる迄ドラクロア(Eugene Delacroix(1798 –1963)が制作に励んでいたパリの住居は現在ドラクロア美術館として知られていますが、この度ドラクロアの作品を主に集めて所有するアメリカの富豪カレンBコーヘン(Karen B.Cohen)のコレクションからデッサンや素描、下絵を含む90点を展示、作品を通じてドラクロワの知られざる面や制作の手法、経緯などを公開しています。インク、アカレル、グワッシュなどで仕上げた1828年制作の“虎に引き倒された野馬”(Cheval sauvage terrasse par un tigre)は激しく、また寅年に相応しい作品と感じました。パリでの展示後は全てニューヨークのメトロポリタン美術館に寄贈される事になっているそうです。Musee national Eugene Delacroix (6,rue de Furstenberg,Paris 6e)にて4月5日迄開催中、火曜日を除く毎日09時30−17時00 入場料5ユーロ、 メトロSaint-Germain-des-Pres下車

偽札の激増 ( INFLATION GALOPANTE DE FAUX BILLETS )

パリの警視庁科学技術研究所(Laboratoire de la Police technique et scientifique de Paris)の発表によりますと、欧州中央銀行(Banque centrale europeenne)に回収された偽札だけでも、この2年間に53%増という急激なもので、偽造が正式な印刷を上回るのではないかとの恐ろしい現象です。最も多いのはフランスで偽造(les reseaux francais de faux-monnayage) の20ユーロと50ユーロ札で(Les faussaires francais preferent les petites coupures)3000枚に1枚の割合で流通しているのだそうです。昨年国内での記録はパリ郊外アンギャン(Enghien)で摘発された1万枚の20ユーロ札でフランスではコンピューターを使って手作りの小額紙幣が特徴、パン屋、タバコ屋、新聞雑誌のキオスクなど忙しい場所で疑われる事も無く、早く使って釣銭を稼ぐのを目的としています。オフセットなど本格的に機械を使っての偽造はイタリー、スペイン、イギリスで500ユーロ札、ブルガリアギリシャオーストリーは200ユーロ札や100ユーロ札とのことですが、最近では南米コロンビアなどもUSドル札の偽造を止めてユーロ札に乗り換えたと云われています。高額な500ユーロ札など見たことも無いので気になりませんが、お店でも受け取らないと聞いたことがあります。この頃そう云えば現金で支払うと喜ばれるどころかお札を光にかざして疑わしそうにこちらの顔を覗うので「失礼な」と思う事がよくありますが、納得です。でもどの様に注意すればよろしいのでしょうか。

トゥール・ダルジャンのワイン競売 ( LES VINS AUX ENCHERES )

ノートルダム大聖堂の美しい後姿を見下ろす“トゥール・ダルジャン”、創業が1582年という最も古いレストランの一つ”La Tour d’Argent”、昭和天皇も名物“鴨料理”を召し上がった所、戦時中ドイツ軍に飲まれまいと地下の酒倉をコンクリートで固めた、など数々のエピソードでも知られますが、45万本と云われる所蔵からこの度18000本がオークションに掛けられ、420ユーロと見込まれた1998オー・ブリオン(Chateau Haut-Brion)が1400ユーロで競り落とされ、最も高値で売られたのは1788年のコニャックで25000ユーロだったそうです。