2007-10-31
5000本売れないアニメにとってテレビは大きすぎるメディア。但し原作付きを除く。
アニメ |
ここ数日、製作ネタが多く書かれていて、嬉しい限り。はてブで補足されている分は全て読んでいるが、玉石混淆といった感じ。気になるエントリは、私のはてブに入れてある。
ただ、今回のエントリはそれらとは直接関係しない。私の過去のエントリに類似のエントリがあるので、よかったら見て欲しい。→動画共有時代のアニメ広告ビジネス(中編)
なお、今回のエントリでは制作会社についてはほとんど触れない。製作会社・製作委員会がビジネスを回すのと、制作会社に潤沢な予算を与えるのは、また別の話だからだ。ビジネスの成功と因果関係がないとは言わないが、近頃のエントリではあまりに混然した意見が見うけられた。
関連する前エントリはこちら:灼眼のシャナ』2期の放送局変更のビジネス的な重要性について
アバン終了
U局にアニメが「流れる」理由
先月から立て続けにアニメ製作会社や制作会社のプロデューサーや社長の講演などでアニメビジネスの聞くことがあった。その場では、講演と言うことで多少口がなめらかになりポロッと本音を言う。驚いたのは、その時の愚痴が異口同音なことである。
彼らは何に文句を言うかというと、放送局の電波料(波代)の高さについてである。前のエントリで書いたが、製作委員会を作って「放送させてもらう」場合は、どういうわけか、放送局からの番組提供料を貰えずに、逆に波代を支払う羽目になるのである。
この波代がこのところ値上がり傾向にあるそうである。約10年前に、隙間産業的に始まった深夜アニメは、今やある種のターゲットにとっては激戦区で、需給のバランスにより、値段が上がるのは仕方がない。しかし、1作品の製作費は限られている。このため、人気作品の続編を放送しようと思っても、前作の局の波代を払えず、独立UHF局でネットを繋ぐ作品もある(シンジケーションという)。この傾向は増えており、前出の値上げした局からは深夜アニメが減少傾向にあり、プロデューサーは値下げを進言しているのだが、局の偉い人はそのような経営判断をしないようである。
余談だが、ネット界隈でよく言われる広告代理店への愚痴はあまり聞いたことがない。番組枠以外にも、雑誌広告ほかの広告仕事を一手に引き受けるため、仕事量とマージンに違和感は少ないためではないだろうか?唯一渋い顔をしたのは、大手代理店が製作委員会に出資することで、それは委員会内でのイニシアチブの問題らしい。
波代の高さは仕方がない
ただ、私はある程度これも仕方のないことだと思う。
テレビは、言うまでもなくアニメのためだけに存在しているのではない。インフラとして設備費・メンテナンス費など、莫大なランニングコストがかかるため、(値上げは別にして)たとえ深夜でも、一定料金を必要とするのも仕方がないと思う。それがアニメ1作品の製作委員会にとって厳しい額だとしても。
深夜アニメの原型は、ビデオメーカー主導の製作委員会方式だ。深夜アニメの多くは、一昔前ならOVAレベルの企画だというのは、業界の多くの人が口を揃えることである。90年代後半の深夜アニメに比べ、この傾向はますます先鋭化する一方だ。
マニア誌原作、ライトノベル原作、コンシューマー機に移植前の18禁ゲーム原作…etc
私たちアニメオタクは、より先鋭的な作品を求めるスパイラルに嵌り、気がついたらとてもテレビで流して、DVD販売でリクープできないほど細かなターゲットに向けての企画を求めるようになってしまったと言える。誰が悪いわけでもなく、ここまでの先鋭さは最早テレビというマスを越えてしまっている。そして、私たちは今更その先鋭性からは立ち戻ることができない。海外のアニメオタクが、日本のアニメはスゴイと只見をしながら脳天気に言っているが、それはこうした様々な犠牲(?)に下に成り立っているのである。
オリジナル作品を作る理由
この状況下で、制作会社はオリジナル企画を立てようとする。もちろん、クリエイターの表現の発露というのもあるが、ビジネス的にオイシイのは作られたビデオグラムやマーチャンダイズ全てからライセンス料が入ってきて、単なる原作付きアニメよりも何倍も稼ぐことになるからだ。『コードギアス』『グレンラガン』の成功は、他の制作会社に夢を見せるのに十分すぎる。
作る方はいつだって大ヒットして欲しい。しかし、現実的にはマニア受けで終わるオリジナル作品も後を絶たない。プロデューサーだって馬鹿ではないから、企画段階でDVDがどの程度売れるかを、様々なマーケティングデータを駆使して予想する。不良在庫を作るわけにはいかないからだ。
この段階で、イニシャル(初回出荷)5000本を売れない規模と判断できる企画は、もうテレビで波代を使って「DVD宣伝」をするレベルではないと思う。逆に言えば、これらの先鋭性には最早テレビは大きすぎるのだ。
5000本売れないアニメの露出方法
「5000本売れないって、どんだけ」と思うかもしれないが、2007年10月8日の発表データによると、発売1週間に5000本以上売れた作品は15作品しかない。もちろん、これらの作品ももう少し時間を経て売れることもあるが、1巻あたり5000本売れない作品は、視聴者が思っているよりもずっと多い。
この秋の新番組の幾つかは、すでに数局ネットとバンダイチャンネルなどのプロバイダ系動画サイトで1週間限定公開のような方法で視聴者に届けている。この方法は正しいと思う。小規模の作品は、波代を少しでも費用を減らし、別のところに製作費を充当すべきだ。
Youtubeやニコ動にも、アニメ製作会社が正式に関わり始めた。前者にはGDHや角川が、後者にはランティス、ジェンコ、エイベックスが参加した。この記事を書いている時に、両サービスがJASRACに著作権使用料を払う協議に入ったニュースが飛び込んできた。こうなると、合法的な動画サイトの量が一気に増え、サービスからインフラの段階へと変化しつつあると言っても過言ではないだろう。最近のエントリが、一足飛びに「アニメはニコ動だけで流せばいい」と過激な意見を書くのも理解できなくもない。
原作付きアニメをテレビにかける意味
ただ、いわゆる原作付きアニメについては、時期尚早であると考える。このエントリのテーマを、オリジナルと限定したのは理由がある。
出版社がアニメ化を許諾する場合、製作委員会に出資する場合もかなり多い。ほかの製作委員会参加会社がこれを拒否することは、まず難しいだろう。何せ相手は原作を抑えているのだから。そうした場合、アニメ作品を流す場合に、ネット重視のハンドリングは難しい。なぜなら、出版社はアニメのDVDよりも、そうして作品を多く知らせることによって原作を多く売り上げたいからだ。書店平積みで、原作の帯に「アニメ化」と付くだけで作品の知名度・売上への貢献は大きく、書店や取次も含め、ネットを中心としたアニメ化だけというのは、まだまだ世の中の認知と金の動きを納得させるだけの力はないだろう。
ARIAは、テレビシリーズの時も売れていたが、OVA『ARIA The OVA 〜ARIETTA〜』はそれ以上の売上を示した。もちろん、これまでのテレビシリーズの積み重ねであるが、単体で見ると利益率はずっと高い。ここまで考えると、3期シリーズをテレビで波代を払って放送するよりも、ネット露出やOVAシリーズ展開だけで良いかと思うのだが、原作出版社(マッグガーデン)の広域の宣伝と考えれば、十分にその支払いに納得がいくのである。しかも波代を払うのは、この場合、製作委員会で、いわば他の会社に宣伝を肩代わりさせるのである。これだけでも出版社にとって原作をアニメ化する旨味がある。
![]() | ARIA The OVA ~ARIETTA~ 葉月絵理乃; 斎藤千和; 広橋涼; 大原さやか; 西村ちなみ 佐藤順一 メディアファクトリー 2007-09-21 by G-Tools |
![]() | アニメビジネスがわかる 増田 弘道 エヌティティ出版 2007-07 by G-Tools |
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その時から疑問に思っているのですが、レンタルショップに置かれるDVDは
ビジネス的にはどのように位置づけされているのでしょうか。
単に自分が勉強不足なだけなのかもしれませんが、教えて頂けますと嬉しく思います。
これも当然、製作委員会の収入源の一つになります。なお、販売用とレンタル用で窓口会社(製作委員会内でその部門を仕切る会社〜トップオフを持っていく)が違っていることもよくあります。上記のARIAシリーズは、販売MMV、レンタルはSHVです。
ビデオからDVDになり、レンタル店1軒に置かれる本数は多くなりましたが、アニメだけに場所を割くわけでもないので、アニメの扱いが大きく増えたと言うことは無いようです。同時にアニメの本数も非常に増えましたからね。新宿や渋谷のTSUTAYAのように、ほぼ全てのタイトルを入れるところは稀です。
タイトルのセレクトは、きっと書店流通と同じように、ある程度店主の判断と、お仕着せのセット(安パイのタイトル)なのではないかと、推測します。
元々広告代理店が地上波の権利口を出せるようになったのは昭和40年代から50年代にスポンサーシステムが確立されていない時代、番組を作る体力が無かった局が電通博報堂の前身の会社に番組編成件を時間事に売り渡した事から始まります。この時は局からすればかなり金額を提示したらしいですが、広告宣伝の効果を知っている代理店は余りの安さにこの時にかなりの枠の権利を買い取ったのです。なので一般に言われている放送権は現在数年に一度局と代理店で話し合いが持たれ一定の金額で取り決めがなされています。どの局も自前で番組が組める枠は5枠ほどでしょうか?
バブル期、ITバブル期に局の編成局長は「どんな大金積まれても現存枠は死守!」と号令を掛けてたくらいです。
既得権益は、映画、演劇、TV、音楽とも恐ろしいくらい単純で利益の筋道がはっきりしています。又ここまでの歴史があるとおいそれと切り替える訳にもいきません。実視聴率、オリコンの集計の不確実さ、DVD&ゲームの総売上の実数の内、どれも公にされていませんし公にするわけにはいかないのです。全体の売り上げの変動は当たり前ですが株価のように小刻み変動しているし内訳をしらない他業種のスポンサーに効率よく商売されて困るのです。
これが産業障壁です。乗り越える為には高い授業料と痛い目に会って貰わないと
自由競争をしていない既得ビジネスの利益を守れないからですね。
U局に流れた理由はキー局が少なくて波代が安いからです。始めた当時はU局深夜枠が他の深夜枠と比べて安かったからです。フジのおかげで深夜は80年代半ばに大幅に波代があがりました。
インフラはNHK、アメリカ、家電企業、国、利権、政治、次世代DVD企画などがが絡んでいるので枠や波代に余り関係はないです。ハイビジョンの顛末とアメリカの外圧、DVD家電の情報をネットで探すと色々と出てきます。
なのでTVの番組ビジネスはそれ自体がかなり特殊なのです。
アニメによってクローズUPされて来たの良い傾向ですが、どこまで普通のビジネスや労働業態の枠に引き戻すのか?が今後問題になるでしょう。
ご回答の内容は、大体自分が考えていたとおりで何だか安心しました。
ネット上ではよくオリコンなどが引用され、アニメDVDの売り上げが話題に
なっていますが、レンタルショップが1枚ずつでも置いてくれればそれだけで
かなりの売り上げになり、製作委員会から見れば、何とか採算が合うのでしょうね。
当方は田舎在住ですが、よく利用するレンタルショップでは殆どのタイトルが
置かれています。引用されていましたデータ中では、「らき☆すた」「北斗の拳」
「超劇場版 ケロロ軍曹2」が3枚ずつ、その他のタイトルは殆ど1枚ずつ
置かれていました。
レンタル用の別のDVDはGONZO作品の殆ど(当方の知る限りでは「ぼくらの」「パンプキンシザーズ」
「ウィッチブレイド」)が今でも作り続けていますね。それもセルDVDが3話収録なのに対し、
レンタルDVDは2話収録という方法で。少しでも購入して貰いたいという逞しい商根は認めますが、
正直「何だかなあ」という感想を持っています。
少々話が逸れてしまいましたが、今後も楽しみに拝読させて頂きます。
本当にありがとうございました。