
2008-09-29
東大で同人ゲームの講座があるというので行ってみた。
日本デジタルゲーム学会 同人ゲームの潮流1
講師:
今でこそ、東大は大学院情報学環でコンテンツ文化なんて開講しているが、1996年に岡田斗司夫氏が「オタク文化論ゼミ」を開講した時は衝撃をもって迎えられた。東大でオタク、オタクを文化なんて呼ぶこと自体が物笑いの種であった。現在の状況がすべて岡田氏の功績という訳ではないが、それでも最初の扉を開いたという認識は持っておきたい。
(なお、当時の講義は「東大オタク学講座」に収録されている。現在でもオタク初学者向けには十分すぎる内容なので、/現在の岡田氏とは切り離して/読んでみることを勧める。)
![]() | 東大オタク学講座 (講談社文庫 お 103-1) (講談社文庫 お 103-1) 岡田 斗司夫 by G-Tools |
そんなパイオニア期で、同時に「何でもあり」が許された頃でも、東大で同人について講座が開かれるなんて状況は、ありえない状況だっただろう。理由としては同人で作られる物のほとんどが、同人のマーケットの業として多品種少量生産であったことだ。「同人文化」や「同人気質」という概論について語ることはできたかもしれないが、同人発の1次創作作品やそれらのシーンについて語るには、語られるべき規模の作品の出現を待たなくてはならず、その当時にそうした作品は想像だにできなかった。
今回のような発表ができるようになったのは、そうした状況を変えるヒット作が複数出てきたことによってシーンが形成されるようになったからである。具体的なタイトルとして挙がったのは『月姫』、『ひぐらしのなく頃に』、「東方シリーズ」である。
そして、市場的な意味でこれらの下地を作った最初の大ヒット同人ゲーム『Queen of Heart』(サークル:渡辺製作所/1998年)である。『QoH』単発のヒットではおそらくこうした研究にはならなかっただろう。しかし、『月姫』の作者たちがインディーズゲーム指向を志す上で、2次創作といえど同人ゲームを語る上で重要な位置を占める。
七邊氏によると、同人ゲームとインディーズゲームの使い分けは、メディア研究の視点とサブカルチャー研究による捉え方の違いである。前者は、ユーザーがどのように作品を解釈するのかという視点に立ったもの。後者は既存商業に搾取される側から、いかに脱却し、商業から侵されない場を作るかという視点で捉えることになる。
その意味で、「同人サークル TYPE-MOON」から、「ノーツのブランドとしてのTYPE-MOON」を指向した彼らの作品は「インディーズゲーム」ということになる。「07th Expansion」も同様であり、逆に「同人ゲーム」であり続けるのが「上海アリス幻樂団」ということになる。
七邊氏が語る広義の「同人ゲーム」の歴史は、1976年発売のTK-80(NEC)によるマイコンブームによって雑誌「アスキー」「I/O」「マイコン」への投稿が流行したことによる。これらの雑誌は、アマチュア投稿ゲームを買い取り、雑誌の付録に付けたり、カセットテープで販売したという。チュンソフトの中村光一氏はこれらについてロイヤリティ契約を結び、100〜300万円の収入を得たという。
同人にとっての報酬は何であるか、ということを考えた際に、知識や技術の習得、発表の満足感や賞賛といったものの他に、具体的な金銭的な充足を彼らにもたらしたことは大きい。その後、同様に得た金銭でハドソンや光栄はプロとしてパソコンゲーム業界に参入した。中村氏は『ドアドア』でエニックス主催の第1回ホビープログラムコンテストで準優勝を獲得する。この頃活躍していた彼らが「プレ同人ゲーム」ということになる。これらの人々が後に家庭用ゲーム業界の一端を担ったことは言うまでもない。
閑話休題。
『月姫』は、ある意味で『QoH』と姉妹的な存在である。この頃流行していたLeaf・keyらの泣きゲーから換骨奪胎し、伝奇的な要素や少年漫画的な強い男キャラクターを入れたのが本作となる。
一方で、キャラクターを借用し格闘ゲームとして構築したのが『QoH』であり、『Eternal Fighter Zero』(サークル:黄昏フロンティア)である。後に『QoH』が『メルティブラッド』を、『EFZ』が『ひぐらしデイブレイク』、『東方緋想天』というように、同人ゲームのコラボ相手が初期段階からの2大サークルから変わっていないのが面白い。
同人ゲームは、ヒット以前にそもそも完成することが第一の大きな関門である。プロの技術者以外でも入っていけるような同人ゲームの制作環境を支えるものとして挙げられたのが、開発ツール(吉里吉里、NScripter等)、無料素材(音楽や背景画像)、制作者募集サイト、ニュースサイトなどである。
さらに、こうして完成をしたソフトがヒットへ繋がるには、「サポート体制を含むサークルの調整」「キャッチフレーズに代表される分かりやすさ」、「世界観/謎/対戦などのユーザーが遊べるコミュニティ」、「画が二次創作をかき立てる」などが挙げられる。
こうした課題点についてゲームスクール等で今後、教育が行われていくことが望まれると、七邊氏はまとめた。
また、「ひぐらし」「東方」の例からだろうが、キャズムを越えた作品の場合、18禁の要素がない方が特に女性向けに対して広がりやすいという。メッセサンオーの棚で言うと、現在は年齢制限4に対して一般向け1の割合まで、一般向け作品が迫ってきているという。さらに「ひぐらし」はアニメイトや、秋葉原に進出しはじめた「まんだらけ」に積極的に営業をかける担当がいたために、大ヒットとなったことも挙げられる。現在は作品の正規パートナーで17社、取り扱いで150社あまりという規模になった。
次回予告
「同人ゲームの潮流2「ひぐらし/うみねこのなく頃に」に見るコンテンツとコミュニティ(仮)」
開催日時:2008年10月31日(金) 18:00開始 20:00終了
講師:
竜騎士07 (07th Expansion、シナリオ、グラフィック)
BT (07th Expansion、HP管理運営、スクリプト)
以下、第二部はウィル・ライト氏(シムシティの作者)のエコシステム論を元に、ユーザーコミュニティの形成について、「ひまわり」(ぶらんくのーと)、セカンドライフやニコニコ動画、「マイコンBASICマガジン」を例に論が進められた。
詳細は以下のレポートにまとめられている。
4gamer.net http://www.4gamer.net/games/042/G004287/20080928002/
- 当日の資料
ゲーム作りの文化のために―独立系デベロップメントシーンの比較試論―
http://www.critiqueofgames.net/2008/09/post_4.html
- 参考リンク
購入: 1人 クリック: 2回




