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2009-07-10

30年間で1680本のゲームを開発したトーセが裏方に徹する理由

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トーセというゲーム開発会社をご存知だろうか。

私はゲーム業界にそれほど詳しくないので、有名だったらこんなことを書いて恥ずかしいのだが、非常に変わった会社である。

創業30年間、これまでに手がけたゲームは1680本超。単純に割って毎年50本以上(ゲーム市場規模からすると近年は100本近くなるのでは?)これだけの本数を出していながら、ゲーム雑誌には出てこないという裏方の開発会社である。さらに自社でコピーライトを持たず、クレジットにも極力名前を出さないというのだから徹底している。


たしかにゲーム業界は、引き抜きを防ぐためなのか、開発者名をあまり表に出すことはなかったというのはあるが、それでもPS時代以降は有名クリエイターとされる人が相応に表に出るようになった(ただ、ごく一部のリーダーのみで開発の本質メディアに晒しているわけではない)。それなのに、ここは会社ぐるみで隠れようとする。

さらに著作権ビジネスが華やかりしこの時代に、それを行使しないで「縁の下の力持ち」に徹する。これだけのマンパワーを持つのだからそうした交渉を有利にするような発言力もあろうかと思うのだが、そうはしないのがこの会社の奇妙なところである。ちなみに、れっきとした東証大証一部上場企業であるが、IR情報にも具体的なタイトルは記されていない。


そもそも、ここが手がけたのはどんなソフトか。そのほとんどが謎に包まれているのだが、『伝説のスタフィー』、『ドラゴンクエストモンスターズ』あたりは確定している。そのほか『バイオハザード』、『スーパーロボット大戦』、『ファイナルファンタジーシリーズ移植作など、大手メーカーの柱となるシリーズを手がけていることが噂される。また、ファミコン初期の頃から数多くのタイトルを手がけ、かの有名な『燃えろ!!プロ野球』や『いっき』などもここの開発らしい。ただ、ソフトクオリティというのはパブリッシャーからのディレクションや予算、納期に左右されるものなので一部のソフトを挙げても、ここの開発レベルを推し量ることはできない(文末に参考にさせてもらったリストを載せておく。かなりの情報がまとまっているので読んでみることをお薦めする。もっとも信頼性については保証できないのだが)。


そんな、長らく謎だったこの企業の一部が明らかになった。BS朝日で放送している『賢者の選択』というビジネス情報番組社長の齋藤茂氏が出演し、自身の半生と社歴のインタビューに応えた。

齋藤茂は1957年、京都にある電子部品メーカー・東亜セイコー社長・齋藤豊の長男として生まれた。立命館中学に入学後そのまま同大学に進み、理工学部電気工学科卒業後、1979年に父の会社に入る。この年の秋、東亜セイコーからアーケードゲーム開発(当時はインベーダーブーム)に特化するためにトーセが分離独立し、茂は開発本部本部長として創業メンバーに加わる(1987年社長就任)。なお、現在のトーセの個人大株主取締役には父や弟の名前がある。


まもなく、83年にファミコンは発売されブームが起きるのだが、ここで幸運だったのはトーセが当時、主流派だった80系CPUを使わず、65系で開発をしていたため、いち早くファミコンソフトの開発に転換できた点である。これのお陰で初期のファミコンソフトの受注が多く集まったそうで、だとすると『ドラゴンボールシリーズなどバンダイにおける初期のキャラゲーの多くがここの開発であるという噂も頷ける。一時はファミコンソフト売上ベスト10のうち半数が開発ソフトだったこともあるという。


インタビューは、件の「縁の下の力持ち」に徹する話題に続く。そこで社長は京都の企業風土について説明する。京都には創業300年級の企業ごろごろあり、企業が長く続くことのステータスが非常に大きな意味を持つそうである。また京都の経済界は狭く、企業倒産させた経営者情報はすぐさま広まり、再チャレンジがしづらい風土があるという。そうした状況があって、会社を保持するために「メーカー」(開発と販売)になるのではなく、確実な受託開発の道を進むのだという。父親の東亜セイコーもその社是があり、その結果、トーセは30年間増収増益で無借金経営を続けているという。2000年代になり、かつての大手ゲームメーカーの浮き沈みや合併がある一方でトーセが規模を拡大し続ける様をを見ると、ゲーム業界という水モノの世界で生き残るためにこれも一つの経営戦略として成功だったと納得せざるを得ない。


また、トーセには人材登用の仕方に特徴がある。新入社員アルバイトからスタートし、キャリアを積んで社長面接を通ると正社員になれる仕組みだ。これが早い人で2年、遅い人で8年かかるという。アルバイト学生のうちから人材を確保し、これがおそらく人件費を抑えるのに一役買っていそうだ。腕に覚えがある技術者は京都の他のメーカーなり、大阪方面へと転職してもよさそうなものだが、不思議なことに一度辞めても半数近くが復職するという。創業以来、13年間退職者を出さなかったアットホームな雰囲気とか、「やりがい搾取」といった言葉では説明できない社内の様子がありそうである。


このほか、株式上場お題目としてM&Aを掲げて携帯ゲーム開発企業を買収したら、その直後に携帯ゲームブームが来たりと、羨ましい話がゴロゴロしている。この模様は公式サイト*1無料配信されているので、興味がある人は全部見てみるといいだろう。


なお、トーセは2008年7月に大手出版社と共同でWii向けデジタルコミック配信会社のリブリカを設立している(出資比率・約43%)。これまでのところ目立った発表はないが、今後どのような動きを見せるか、携帯以外のデジタルコミック業界のキープレーヤーとして注目する必要があるだろう。

IR資料:http://www.tose.co.jp/jp/ir/pdf/librica_20080717.pdf

参考資料

SIT Developer Table:http://review-site.net/developer/to.html#%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%BB

次世代亀 : トーセ。ゲーム業界の知られざる秘密。:http://nextgame.exblog.jp/5934112/

(上記の元は1up.com: http://www.1up.com/do/feature?cId=3156447)

[NS] 任天堂発売のニンテンドーDSWiiソフトの開発元一覧:http://n-styles.com/main/archives/2008/10/28-080000.php

Wikipedia-TOSE(英語版):http://en.wikipedia.org/wiki/TOSE


ゲーム開発会社マンガと言えばこれ。下手な虚像で固められたノンフィクションよりもリアリティがある。

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