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資料館所蔵資料紹介-7

資料館には、明治5年の博物館の創設以来、収集、蓄積してきた貴重な資料が数多く所蔵されています。2009年7月より展示コーナーを新設し、資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、種類別にご紹介をしています。

第7回 埋蔵文化財発掘調査報告書 

埋蔵文化財とは、文化財保護法の用語で、文化財のうち「土地に埋蔵されている文化財」を指し、考古学的には貝塚、土坑墓、住居跡等の「遺構」と土器・石器等の「遺物」に相当します。また、埋蔵文化財を包蔵する土地を「埋蔵文化財包蔵地」と呼び、これは、考古学でいう「遺跡」に当たります。埋蔵文化財は長い歴史の過程において残ってきたものであり、各々が歴史的時間の重みを有しているとともに、それを作り、残した人々、社会、地域、時代などの内容をそれ自身に内在させている学術資料として歴史的・文化的価値を持っています。
戦前の埋蔵文化財関係の保護は、有形文化財の保護が主でしたが、古墳や出土物に関する措置は天皇陵の比定と関連して早くから整えられました。明治7年(1874)の「古墳発見ノ節届出方」、明治13年(1880)の「人民私有地内古墳等発見ノ節届出方」は、古墳の発掘規制と不時発見の届出制を定めたものでした。出土遺物に関しては、明治32年(1899)の遺失物法制定に伴う内務省訓令第985号で、石器時代の遺物は東京帝国大学、古墳出土品などそれ以外の遺物は宮内省(博物館を所管)において取り扱うこととなりました。(※)明治44年(1911)に史蹟名勝天然紀念物保存協会が設立されるなど、民間での保護運動も高まる中、大正8年(1919)史蹟名勝天然紀念物保存法が制定され、遺跡のうち重要なものは史跡として保護されるようになりました。
昭和25年(1950)、それまでの史蹟名勝天然紀念物保存法、国宝保存法、重要美術品等ノ保存ニ関スル法律の3法を統合し、保護対象に無形文化財埋蔵文化財を新たに加え、保護対象を「文化財」という新しい概念にもとに包摂する文化財保護法が成立しました。埋蔵文化財は、ほかの文化財とは概念が異なり、土地に埋蔵されている状態に着目して保護の制度が設けられたもので、保護内容はその後の改正で整備・拡充がなされています。
埋蔵文化財は現状のまま保護されることが望ましいのですが、埋蔵文化財包蔵地内で開発行為が行われることは避けることができないため、保存や調査の措置が講じられないまま破壊されることがないよう、埋蔵文化財包蔵地の周知や、調査目的の発掘や開発のための土木工事等の事前の届出、事前協議などの規定がされています。遺跡や遺物が発掘されてその特性が判明すれば、史跡や、有形文化財としての指定がなされ保存されますが、多くは記録保存のための発掘をした後、現物の遺跡は破壊されてしまいます。学術目的の発掘の場合も、開発行為のための緊急調査による発掘調査の場合も、考古学的な発掘調査が行われ、その成果が発掘調査報告書として刊行されます。
近年は、報告書を電子媒体(CD-ROM)などで作成したり、過去の調査資料類をデジタルアーカイブ化して、Web上で公開する取り組みもなされています。今後は報告書のあり方も変わっていくことと思われます。資料館では、埋蔵文化財の発掘調査報告書が増加した昭和50年代より、これらの報告書を一般図書と区別して整理しており、その数は現在約4万冊に及びます。

※ この時の記録は、東京国立博物館で『埋蔵物録』として保管されています。

<展示資料>
1 『宮崎県児湯郡西都原古墳調査報告』宮崎県[編]
[宮崎] 宮崎県, 大正4年(1915)            S96-0004
2 『奈良県史跡名勝天然紀念物調査報告 第12冊』奈良県[編]
奈良 奈良県, 昭和9年(1934)            S65-0009
3 『三内丸山遺跡 6 (青森県埋蔵文化財調査報告書 第205集)』青森県教育庁文化課編
青森 青森県教育委員会, 平成8年(1996)        S21—0335
 
<展示期間>
2010年2月1日〜3月31日