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2011-07-01 クロワッサン〜放射線によって傷ついた遺伝子は子孫に伝えられるのか このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

大方の意見が否定的なのは良いのですが、それでも間違った認識をしている意見がいくつかあったので、簡単に書いておきます。


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雑誌「クロワッサン」の「放射線によって傷ついた遺伝子は子孫に伝わる」という文言が話題に | スラド サイエンス


まず、根本的な「子孫に伝わるのかどうか」について。

これはメンデルの法則を考えれば、あり得ないのがわかります。


下の図で、一番右端のお父さんの一つの染色体に何らかの遺伝子異常を持っていても、それが子供に伝わる確率は1/2です。というのは、人は同じ染色体が二つあり、精子が出来るときに減数分裂で片側しか遺伝しないからです。


家系図.jpg


その次の子供への遺伝も同様の確率なので、1/4となり、その次は1/8となります。

つまり、どんどんその影響は薄まっていくわけです。


男性の染色体には、XY染色体というセットになっていないものがあるので、その染色体上の異常はそのまま伝わりますが、女の子にはY遺伝子がないので100%伝わりません。男の子だと伝わりますが、男と女の生まれる確率はほぼイーブンなので長い目で見れば、やはりどんどん薄まっていきます。


これは頭の良い遺伝子異常や、運動能力が異常に高い遺伝子異常があっても同じ事です。どちらかというと、発生異常を来さない良い方向の遺伝子異常の方がこんな感じで残りやすくなります。しかし、それでも、段々減っていきます。


さらに、もう少し細かく考えていきます。


体細胞精子にも卵子にもならないので、遺伝することは100%ありません。

よって、影響を受けるとしたら、卵巣と精巣にある生殖細胞だけです。


しかし、以前説明したように、放射能によるダメージは、内因性の酸化ストレスによるダメージに比べたら、超微々たるものです。内因性が一日一細胞で50万個に対して、1Svで顕在化するダメージが約3000個です。単純に比例するとして、10mSvだと30個です(実際は比例しないので、もっと少ないです)。


DNA上の30億個ある塩基のうち、遺伝子は5%。そのうち、発現蛋白質配列が変化するのは半分くらい。さらに蛋白質の機能に影響するのは数%ほどでしょう。さらにその変化が個体の異常として現れるのはもっと少なくなります。


というのは、受精後、人が赤ちゃんになるまで、それらの遺伝子はオンになったり、オフになったりしますが、機能的な異常があると、次のステップに進めずに結果流産となるからです。受精する前にも、精子卵子としての機能に異常があれば、受精も不可能になります。


で、その50万個のDNA異常も修復機能で元どおりになるのですが、男性の生殖細胞は分裂し続けているので、分裂時のDNA複製修復を使え、より安全です。

これは以前説明した子供の方が強いということと同じ理由です。男性の場合、50歳でもある程度安心して子作り出来るのもこれが理由です。


放射能障害に関して閾値あり説となし説に分かれる理由 - AMOKNの日記



一方、女性の場合、生殖細胞は成長後分裂しないので不利なのですが、喫煙、飲酒などに比べたら、影響は微々たるものだし、そもそも、女性の場合、一番影響があるのは加齢です。40歳前後の出産はそれなりの覚悟をもってしないといけません。


いずれにしろ、メンデルの法則からも放射能による何らかの遺伝子異常が子孫に伝わるのは天文学的な確率となります。



ここでの一番の問題は、ネットは接続しているけどほとんど使わない、携帯も友達とのやり取りはするけど、情報検索はしないという陸上の孤島に隔離されているも等しい、そのくせ噂話は大好きな主婦層に一方的に間違った情報が届けられることです。

先日の現代ビジネスは一応、ネットの情報だったので、まだネットで否定も出来ますが、こちらは雑誌であるため、情報の訂正が読者に届かない。まさに売らんがための最悪の炎上マーケティングだということです。

【コラム】パニックをあおって、PVを稼ぎまくる方法 - AMOKNの日記

UU 2011/07/02 06:40 内在性の酸化ストレスによるゲノムダメージが一日一細胞当たり50万個とする根拠は?少なくとも培養細胞では、酸化ストレスが大きい20%酸素下でも、そんなにDNA break foci見られないように思うけど。放射線かけるとfoci明らかに増えるよ。生殖細胞の分裂時DNA複製修復(これは分裂時ではなくDNA複製期での相同組み換えのこと?)は複製前(G1期)でも機能するの?喫煙や加齢と比べた放射線の次世代へのリスクは疫学的に検討されているの?とりあえず次世代に絞って考えれば、メンデルの法則で50%、天文学的数字じゃないし、流産の増加も悲しい。少なくとも放射線照射マウスでは次世代へのゲノム不安定性のtransmissionを示唆する論文も出てる。天文学的確率かどうかは不明と思うし、十分な幅を持って危険を予測し、可能な限りの対応をすべきだと思うけど。

ちかえもんちかえもん 2011/07/09 07:13 おそらく意図的に書かれたのかと思いますが、3世代後に1/8の確率でその異常が伝わるということは、子孫が平均で2人子供を作ったとすると、3世代後にも平均1人はその異常を引き継ぐということになります。もちろん、X-MENみたいにすごい能力を発言する可能性も否定できませんし、長期的には生存や生殖に影響する異常であれば淘汰されていくわけですが、自分の子孫がその影響で淘汰されちゃうのはちょっと嫌ですよね。このメンデルの法則に関して、素人さん(I田信夫さんやF沢数希さん)が勘違いして間違いを拡散しているので、訂正されたほうがよいかと思うのですが。。。

解答もうやめる解答もうやめる 2011/07/10 22:26 >その次の子供への遺伝も同様の確率なので、1/4となり、その次は1/8となります。
>つまり、どんどんその影響は薄まっていくわけです。

その図だと子孫もどんどん減っていっているので、薄まってないです。


>男性の染色体には、XY染色体というセットになっていないものがあるので、その染色体上の異常はそのまま伝わりますが、女の子にはY遺伝子がないので100%伝わりません。男の子だと伝わりますが、男と女の生まれる確率はほぼイーブンなので長い目で見れば、やはりどんどん薄まっていきます。

父親由来のX染色体というのはあります(それが女の子)。逆にY染色体はあまり働いていないので変異の影響は致命的でないことが多いです(話が逆だ)。というか、女性は生存に必須であるX染色体を2組持っているからというのが、女性に癌が少ない理由として定説になっています(逆に自己免疫疾患は女性が多い)。

何故にこう、怪しげな話をばら撒くのか、勘弁してくださいよ。

解答もうやめる 解答もうやめる 2011/07/10 23:16 もうちょっとだけ。

>その図だと子孫もどんどん減っていっているので、薄まってないです。

もし、子孫の人数が減らないようにするには、それぞれのカップルに2人の子供が必要。すると、3世代後には1/8で変異を受け継ぐ子孫が8人できる。薄まってません。これは生物学以前にプログラマなら理屈でわかって。

watakenn3watakenn3 2011/08/27 06:57 非常にCELLな解答ですね。
X染色体の不活性化、ドミナントネガティブ変異とか、メンデル以外の事を考え出したら止まらなくなるからなぁ。
ここは50万の変異数で攻めるよりも、SNPsの多さを語り、万が一変異が増えても、万が一遺伝しても、DNAの性質的に、生物の淘汰システム的に…と言えば良かった。

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