ワタミがはまった罠

和民で働いていた女性が就労2ヶ月で自殺し、労災が認められました。


ネットでは、月に100-140時間の超過勤務なんて軽いという意見もありますが、労働時間の限界は、その仕事が好きか嫌いか、労働に対する対価や将来の展望はどうか、何より個人のストレス耐性によって変わってきます。どんな人でも、うつ病にならない程度の労働条件にするべきという考え方が理想ですが、うつ病になりやすい人もいるわけで、このグローバル化が著しい社会で綺麗事だけ言っているわけにはいかないという問題もあるでしょう。それを補うものとして、離職しやすい環境、次の仕事が見つかりやすい社会環境が必要なのでしょう。


しかし、そういうわけにいかないのが今の日本です。次の仕事はすぐには見つかりません。とはいえ、自分に合わない仕事で先の展望が見えないのなら、何故、早めにやめなかったのかという意見が次に出てくるでしょう。


今回の事件で、一番の問題はその点にあります。


命に関わるくらいならやめれば良かったのにといっても、仕事がきつくなってくると辞めるという思考ができなくなるとか、人間関係から辞められなくなるとかの意見もありましたが、本当にそれだけでしょうか?


辞められない理由が家族の生活を支えるためとかなら、行政のセーフティーネットの話になり、やめさせないように監禁したり、暴力をふるっていたならまさに犯罪そのものになります。


みんなが疑っているのは、辞めたくても辞められないような価値観を埋め込まれていたのではないかということです。それは村社会的なものではありません。都会で働いていれば、いくらでもすぐ隣に別の村社会があるからです。住む場所も変えずに隣の村社会に移住することは不可能ではありません。


では、何故、彼女は辞めなかったのか?辞められなかったのか?


洗脳する方法として、眠れなくさせて、徹底した自己否定をさせた後に、救いの手をさしのべるというものがあります。オウム真理教がやっていた方法です。


和民がそうしていたかはわかりませんし、あれだけの規模の会社になると、そんなことは無理なんじゃないのかと考えるのが自然です。


しかし、睡眠時間を削れるだけ削らせて、その人の今までの価値観を全否定した後、自分は価値ある仕事をしているんだと刷り込ませて、辞められなくさせるという方法論が本当に有効であるとしたら、これは恐ろしいことです。


しかも、この方法は、社長の、会社の理念が正しいものであればあるほど、はまってしまいます。和民の社長はこんなこと意図していなかったでしょう。しかし、結果がついてくる裏にはこういう事情があったのかもしれません。


なにせ正しいことを考えて、実行すればするほど、会社の利益も効率もアップするのですから、それにどんな弊害があるかなんて気付きようもありません。


でも、実際、どうであったかは外部からではよくわかりません。
和民のHPをみても、社内環境や社内教育がどうであったかはさっぱりわかりません。しかし、あれだけ従業員がいるはずなのに、肯定するにしろ、否定するにしろ、内部告発がほとんどないことも少し薄気味悪いです。普通はドロップアウトした人が内情をリークしたりするものなのに。リークするほどのことがないのかもしれないし、それだけ辞めていないのかもしれないし、どちらかわかりません。(昨日辺りからぼちぼち出ているようです。)


和民がするべきなのは、どういう社内環境であったかの説明でしょうし、これからどこをどう変えていくか、変えているかの説明でしょう。