歴史は「べき乗則」で動く 第7章

かつて濃縮ウランの実験をしたとき、エンリコ・フェルミは制御棒を使用して臨界状態限界直前まで調整した。
鉄磁石と同様に、すべての事象が自然に臨界状態に至るわけではなく、調整が不可欠になる。
砂山モデルの場合、組織構造に「回復力」があるために臨界状態に至った。

アメリカの森林火災の消失面積について、ブルース・マラマッドらがべき乗則を発見した。
2次元平面の格子点にそれぞれある確率で木を配置し、ランダムに火元を落として隣の木に火が移っていく様子を表したモデルと同じ分布を示した。
余談だが、森林局は大規模な山火事を予防するために初期段階での消火に力を入れた。
その結果、却って老木や落ち葉といった可燃物がたまってしまい大規模な火事が起こりやすくなってしまった。
これをイエローストーン効果というらしい。
上のモデルでいうならば木の配置の確率を上げてしまい、いたるところに火が移ってしまうことになる。

バッタの大量発生、はしかの感染者数も同様のモデル化で同じ分布が得られる。
(今週のMIKUでは微分方程式でバッタを見てみたが、
大発生の規模の変化を考えるとr,kを時間依存させる必要があるように思われた。)

砂山モデルの「回復力」は自然と成立するものではない。
非平衡下にあっても臨界状態とはならないものは数多くある。
例えば、砂山モデルでも雪崩が終わる前に砂を落とす(砂を落とす感覚を早くする)と臨界状態は成立しない。
さらに、砂粒よりも米粒のほうが粘度が高いために実際の雪崩に近くなる。
つまり、外部から加わる作用が非常にゆっくりであり、個々の要素の振る舞いが他の要素との相互作用にのみ支配されてる場合に自己組織的臨界状態に至る。

さらに、後の章になるがもう一つ自己組織的臨界状態に至る過程がある。