幻の「勾留理由開示公判意見陳述要旨」


麻生でてこい!!リアリティツアー救援会ブログ
http://asoudetekoiq.blog8.fc2.com/blog-entry-56.htmlより。


勾留理由開示公判意見陳述要旨

2008年11月6日
東京地方裁判所 裁判官 内田 哲也 殿

罪名 集会、集団行進及び集団示威行動に関する条例違反 被疑者  渋谷署1号
罪名 公務執行妨害               被疑者  渋谷署2号
(碑文谷1番)
罪名 公務執行妨害              被疑者  渋谷署3号
(原宿7番)

 上記の者らに対する各被疑事件について、勾留理由開示公判における意見陳述の要旨は下記の通りである。

                       弁護人   指 宿  昭 一
                       同     河 村  健 夫
                       同     酒 井  健 雄
同     高 橋  右 京
同     長谷川  直 彦
同     萩 尾  健 太                    

意 見 の 趣 旨
  職権をもって本件勾留を取り消す
との決定を求める。  
申 立 の 理 由
  被疑者は無実であり、本件逮捕は違法であって、被疑者には罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由も逃亡すると疑うに足りる相当な理由も全く存在しないので、勾留の要件を満たさない。

第1 はじめに〜歩いただけで逮捕?〜
 「ここは戦前の日本か?」
 「治安維持法は、まだあったのか?」
 被疑者らが、逮捕された現場を見ていた者は、誰もがそう思った。
 被疑者は、他の仲間らとともに歩道を歩いていただけである。
 本件逮捕、勾留に多くの市民が疑問を抱き、抗議の声を上げている。

 本件逮捕、勾留に抗議する文化人らも声明を発表している(呼びかけ人:雨宮処凜、湯浅誠
 賛同人は、10月30日現在、以下に掲げる文化人らが名を連ねており今後も増えていく見込みである(最新情報は http://www.sanctuarybooks.jp/sugoi/blog/ で参照可能。)。
  浅尾大輔さん 作家
  太田昌国さん 編集者、民族問題研究家
  小熊英二さん 慶應義塾大学総合政策学部教授
  鎌田慧さん
  櫻田和也さん Indymedia Japan
  佐高信さん
  佐藤優さん 起訴休職外務事務官
  白石嘉治さん
  土屋トカチさん ドキュメンタリー映画監督
  鶴見済さん ライター
  中西新太郎さん 横浜市立大学教員
  野村 昌二さん ノンフィクションライター
  森永卓郎さん
  原武史さん 明治学院大学国際学部教授
  福島みずほさん 社民党党首
  本田由紀さん 東京大学大学院教育学研究科比較教育社会学コース准教授
  山口二郎さん
  脇田滋さん 龍谷大学法学部教授、労働法
  (50音順)
 このように、本件逮捕に対しては、幅広い市民、文化人らが抗議の声を上げており、被疑者らの速やかな解放を求めている。
 ごくごく普通の市民の感覚が、本件逮捕、勾留はおかしいと言っているのである。
 以下に述べるとおり、本件逮捕は違法であり、勾留の要件も満たさず、本件勾留請求は却下されるべきであった。
 裁判所は、速やかに本件勾留を取り消すべきである。
 

第2 公安条例違反は成立しない
 被疑者渋谷署1番は、公安条例違反で逮捕され、そのことによる混乱の中で、渋谷署2番、3番が公務執行妨害で逮捕された。したがって、渋谷署1番に対する逮捕の正当性が、公務執行妨害における公務の要保護性に直結する。
 しかし、以下に述べるように、渋谷署1番には公安条例違反は成立しないから、同人について相当な嫌疑はなく勾留の要件を欠くし、渋谷署2番、3番についても公務の要保護性が認められず、やはり相当な嫌疑がないと言えるのである。
 以下に詳論する。

 1 渋谷署1番は無実であり相当な嫌疑はない
(1)渋谷署1番の被疑事実
渋谷署1番の被疑事実は、『被疑者は、黒ヘル構成員であるが、平成20年10月26日、「反戦と抵抗の祭り」<フェスタ08>が呼びかけた「リアリティツアー62億ってどんなだよ。麻生首相のお宅拝見」と称する行動に参加し、同日午後3時03分ころから、東京都渋谷区道玄坂2丁目1番1号ハチ公前広場で、黒ヘルグループ構成員等約60名とともに、同ツアーへの参加呼びかけ等の事前行動を集会の形態で行った後に、同日、午後3時40分ころから、同3時50分ころまでの間、同所から東京都渋谷区宇田川町28番2号絵夢ビルまでにいたる通称文化村の通行人で混雑する歩道上において、東京都公安委員会の許可を受けないで、約60名が隊列4,5列縦隊となって、「やめろ」と記載の横断幕や風船、プラカード等を掲出しながら行った集団示威行進の隊列先頭部に位置し、「横断幕、横断幕を皆さん持ってください。お願いします。」「こっち左です。こっちこっち」などと集団示威行進の参加者に指示し、更に「プラカードを下しなさい」との警察官の警告に対して、「私が目印にならなければならない」と申し立てて、プラカードを両手に持ち、頭上で掲出するなどの行為で、同無許可の集団示威行進を指揮煽動し、もって、一般交通に著しい影響を及ぼすような無許可の集団示威行進を指揮したものである。』とのことである。

(2)渋谷署1番の行為は構成要件に該当しない
ア しかし、渋谷署1番は黒ヘルグループ構成員(この言葉自体理解できないが)などではない。

イ また、渋谷署1番らは集団示威行進(デモ行進)などしていない。
すなわち、東京地方裁判所昭和36年8月22日判決/昭和32年(特わ)第372号によると、「集団示威行進」とは、「多数人が彼等に共通な目的達成のため共同して不特定多数の者に影響を及ぼしうる状況下で威力若しくは気勢を示しつつその意見を表明する行動、即ち前期東京都公安条例第一条にいわゆる集団示威運動のうち、徒歩又は車輌等により行列行進の形態を以て行われるものを呼称する」とし、要件として「(イ)第一に、多数人が彼等に共通な目的達成のため共同して行う集団的行為であること、(ロ)第二に、行動の本質は多数人全員の一致した意見の対外的表明であって、その表明は不特定多数の者に影響を及ぼしうる状況下で威力又は気勢を伴う行列行進の形態で行われること」を上げている。
しかし、本件の「リアリティツアー 」は、社会の「貧困」「格差」を解決すべき麻生首相が、参加者らとどれだけかけ離れた暮らしをしているのかをこの目で見て実感する、誰もが歩くことができる公道を、渋谷駅頭から麻生邸の前まで歩きながら、その土地だけで62億ともいわれる豪邸をくっきり目に焼き付けて帰る、という趣旨であり、特定の意見の対外的表明を目的としたものではなかった。
また、参加者らは、渋谷駅から神山町の麻生邸に向けて、拡声器も使わず、シュプレヒコールもせずに隣の参加者と肉声で談笑しながら歩道をゆっくりと移動しており、隊列を組んでいなかった。横断幕は「やめろ」ではなく「よこせ」であって、歩行を開始した段階で畳んでいた。渋谷署1番が「横断幕を皆さん持って下さい。」と言ったというのは、畳んだ横断幕のことである。また、渋谷駅前を出発して以降は風船も頭上付近まで引き下げており、風船の下につる下げていた垂れ幕も折りたたまれ見えない状態であった。また、風船自体にも文字等は何ら記載されていなかった。従って、「不特定多数の者に影響を及ぼしうる状況下で威力又は気勢を伴う行列行進の形態で行われ」たものではない。
実際、午後3時、渋谷駅ハチ公前に集まった参加者らの前にあらわれた渋谷警察署警備課課長は、麻生邸の規制区域に近づいたら「5、6名ずつ行くぶんには、それはかまわない」旨を参加者らに連絡しており、「歩道で幾分には良いですよ」と発言しており、集団示威行動でないと認識してこれを許可していたことは明らかである。この経緯も、画像がインターネットで公開されている。
http://jp.youtube.com/watch?v=VukCiIa0BDc 反訳は別紙の通り。
したがって、被疑者らの行った「リアリティツアー」は、集団示威行進にはあたらないし、渋谷署1番が集団示威行進を指揮扇動した事実も存在しない。

ウ 警察官の発言は「警告」に値しない
 東京都公安条例第3条は、「集会、集団行進又は集団示威運動の実施が公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならない」としている。
 そして、同条例4条は「警視総監は・・・第3条の規定に違反して行われた集会、集団行進又は集団示威運動の参加者に対して、公共の秩序を保持するため、警告を発してその行為を制止しその他その違反行為を是正するにつき必要な限度において所要の措置を取ることが出来る」と規定している。
 そして、その次に第5条で罰則が規程されている。
 これらの条文の配列からすれば、第3条の規定に違反して行われた「無届デモ」であっても、それが公共の秩序の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合にのみ警察官はまず警告・制止という行政措置を取ることとされているのであり、罰則につながる刑事手続はそのあとの最後の手段として条例上も位置づけられているのである。
しかも、東京都公安条例4条は「警視総監は・・・第3条の規定に違反して行われた集会、集団行進又は集団示威運動の参加者に対して、公共の秩序を保持するため、警告を発してその行為を制止しその他その違反行為を是正するにつき必要な限度において所要の措置を取ることが出来る」と規定している。したがって、同条の「警告」は、「その行為を制止」するような「所要の措置」としてなされるべきものである。
ところが、上記の被疑事実記載に近い「プラカードだめだ」との警察の発言は、被疑者らが出発してしばらくたった時点ではあったものの、その後、渋谷署1番が「これは、目印。人が迷うかもしれないから」「目印どうするの」と述べたところ、警察は反論せず、渋谷署1番がプラカードをもって歩くに任せていたのである。
したがって、警察官の「発言」は、渋谷署1番を制止させるための措置と言えるようなものではない形だけのものであったから、警告には値しない。

エ 渋谷署1番には故意がない
  前述の通り、渋谷警察署警備課長は、被疑者らが「歩道で行くぶんにはいい」と述べており、渋谷署1番は歩行の許可を得たものと認識していた。
プラカードについても、渋谷署1番が「目印どうするの」と述べたあとは警察官は反論せず、渋谷署1番らが歩行するに任せていたから、渋谷署1番は警察官が納得したものと考えていた。
そもそも、公安条例1条違反は、許可を得ていない集団示威行進であることが構成要件事実であるが、渋谷署1番は上記の経過や実際の行動が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる」ものでなかったため、許可が必要な集団示威行進をなしたとの認識がないから、おり、公安条例違反の故意はない。
 ところが、渋谷署1番の逮捕の経緯は、ビデオ撮影されて既にインターネット(ユーチューブ)で公開されているが、
http://jp.youtube.com/watch?v=3Uw701vV15U
この画像を見る限り、渋谷署1番はいきなり通りすがりの者風の私服の男に脇を抱え込まれ、引っ張って行かれたのである。

 オ まとめ
したがって、渋谷署1番には「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法207条、60条)が認められない。

  2 本件逮捕は違法である
 (1)だまし討ちの逮捕
 上記のとおり、参加者らは渋谷警察署警備課課長より歩行の許可を得て、道玄坂下に参加者らがさしかかろうとしていた瞬間、警視庁公安部及び渋谷警察署警備課警察官らは、突如参加者の中へ突入し、前方を歩いていた渋谷署1番を路上に組み伏せ、大勢の警察官で取り囲んで連れ去った。いったん許可を与えた上でのこの逮捕は、だまし討ちと言うほかなく、捜査の廉潔性を著しく欠くものである。

(2)可罰的違法性がない
被疑者の逮捕においては「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」すなわち嫌疑が存在する必要性があるが(刑訴法199条)、特に、令状審査を経ない現行犯逮捕においては、その嫌疑の明白性が要求される(刑訴法212条)。東京地裁八王子支部平18.3.10判決(判タ1218 320頁)は、「現行犯人逮捕が令状なく許されるのは、逮捕者において、犯人による特定の犯罪であることが明白であ」るからだとしている。
しかし、以下に述べるとおり、本件渋谷署1番の行為に可罰的違法性は認められないから、明白な嫌疑は存在しない。
  すなわち、東京都公安条例と同じく集団示威行進の指揮を罰する大阪市公安条例違反事件に関する大阪地方裁判所昭和44年11月29日判決/昭和44年(わ)第4001号によれば、「たとえ公安委員会の事前の許可を得ることなく行われた集団示威運動を指揮したとしても、当該集団示威運動が、その目的、規模、態様、行われた日時、場所および周辺の状況等に照らし、地方公共の安全を害し、一般公衆の生命、身体、自由、財産に対し直接且明白な危険を及ぼすと認められるものでないかぎりは、その可罰的違法性は否定され」る。なお、同判決においては、規模約4、50名、時間にして約6分、距離にして約145メートルないし約170メートル、4、5列の隊列のままスクラムを組んで車道上を蛇行しながら行進したという認定事実を総合的に考慮し、可罰的違法性は認められないと判断している。
  本件「リアリティツアー」についてみると、その目的は麻生首相宅を見るというものに過ぎず、その規模も約50名、時間にして渋谷駅前を出発してから被疑者が逮捕されるまでのわずか5分程度に過ぎない。また渋谷署1番を含む参加者は、文化村通りの歩道上を、特に隊列を組むこともなく人の流れに沿って歩いていたのであり、参加者以外の歩行者や自動車の交通は全く妨げておらず、被疑事実の言うような「一般交通に著しい影響を及ぼすような」態様では決してなかった(渋谷署1番を含む参加者の歩行の様子はインターネット上の画像http://jp.youtube.com/watch?v=Rc0Z0Yvde8E&feature=relatedのとおり)。
  以上のような事情を総合して判断すれば、上記判決の事案と比較しても、本件「リアリティツアー」が地方公共の安全を害し、一般公衆の生命、身体、自由、財産に対し直接且明白な危険を及ぼすとは到底認められない。したがって、渋谷署1番の行為には、可罰的違法性は認められない。

(3)公安条例の趣旨に反する政治的逮捕
 前述のとおり参加者らの行為は単なる歩行であって東京都公安条例1条で許可が必要とされた集団行進や集団示威行動ではなかった。
 さらに、東京都公安条例第6条では、「この条例の各規定は、第1条に定めた集会、集団行進及び集団示威行動以外に集会を行う権利を禁止し、若しくは制限し、又は、集会、政治運動を監督し若しくはプラカード、出版物その他文書図画を検閲する権限を公安委員会、警察職員・・に与えるものと解釈してはならない」と規定している。
 よって、本条例は、憲法上、自己実現とともに自己統治の価値を有するがゆえに優越的地位が認められる表現・集会の自由を保障するため、あくまで?公共の秩序を保持する必要性から集団行進及び集団示威行動を規制するのみであって、?表現内容に着目して政治運動を規制してはならないのである。
 ところが、前述のように、参加者らの歩行によっては何ら?公共の秩序を乱していなかったにもかかわらず、突然、行動を制止させるような十分な警告をすることなく渋谷署1番を逮捕した。それは、?警察官らが、麻生首相宅訪問という政治目的を嫌悪し、政府の意向のままに参加者らの歩行を妨害しようとして逮捕をなした政治弾圧としか考えられない。
 したがって、2重の意味で公安条例の趣旨に違反し表現の自由を侵害する違憲・違法逮捕である。

第3 公務執行妨害は成立せず相当な嫌疑はない
1 渋谷署2番、3番に対する公務執行妨害は公務の要保護性を欠く
 渋谷署1番に対する逮捕は、参加者には何の理由の逮捕かすら分からず、突然の不当逮捕に驚くばかりであった。
 被疑者は、渋谷署1番に対する不当な身柄拘束を目の当たりにしてそこに近づいたところ、大勢の警察官らに行く手を阻まれ、公務執行妨害として路上に組み伏せ、大勢の警察官で取り囲んで連れ去られたのである。
 被疑者の行為のみをとっても何ら公務の執行を妨害するような有形力の行使ではないうえ、被疑者の行く手を阻んだ警察官らの行為は、上記の違憲・違法な逮捕を全うするため、それに対する被疑者の抗議を制圧するためになされたものであって正当な公務の執行とは言えず要保護性を欠く。
 したがって、被疑者の行動のほうが正当であるから、その行為は何ら公務執行妨害とは認められず、被疑者に対する逮捕は公務執行妨害の要件欠き違法である。

2 渋谷署2番は暴行しておらず相当な嫌疑はない
(1)被疑事実
渋谷署2番の被疑事実は、『被疑者は、平成20年10月26日、「反戦と抵抗の祭り」<フェスタ08>が呼びかけた「リアリティツアー62億ってどんなんだよ。麻生首相のお宅拝見」の行動に参加したものであるが、東京都渋谷区道玄坂2丁目1番1号ハチ公前広場から東京都渋谷区宇田川町28番2号絵夢ビルに至るまでの無許可の集団示威行進の指揮煽動者が東京都渋谷区宇田川町28番2号絵夢ビル前歩道上において、集会集団行進及び集団示威運動に関する条例違反の現行犯人として逮捕された際に、同指揮煽動者を奪還しようとして、同日午後3時51分ころ、警視庁渋谷警察署司法警察員巡査部長嶋野伸一の胸部に右肩で2回体当たりする暴行を加え、もって同巡査部長の職務を妨害したものである。』とされている。
 
(2)被疑者は暴行など加えていない
しかし、渋谷署2番は実際にはかかる行為はなしていない。
その経緯は、ビデオ撮影されて既にインターネット(ユーチューブ)で公開されている。
http://jp.youtube.com/watch?v=3Uw701vV15U
この画像にもあるように、渋谷署2番は、警察官に体当たりなどしていない。渋谷署1番の方に歩み寄ろうとしたが、警察官らの人垣に塞がれ、右往左往し、警察官らから離れ、頭の禿げた私服の警察官と向き合い、他の警察官に「捕まえろ」と言われて後ろに下がった後に、頭の禿げた私服の警察官から「公妨だぞ」と言われて引き倒されたのである。渋谷署2番は、自分の胸付近に手を持ってきて暴行を振るわないとの意思表示をしていた。渋谷署2番はガンジーの著作を読んでいる非暴力主義者であった。従って、渋谷署2番が絶対に暴行をなすはずがない。
そうである以上、犯罪の客観証拠はないし、むしろ、無実の客観的証拠があると言える。
仮に、渋谷署3番の体が警察官に接触したとしても、渋谷署3番に暴行の故意がないことは明らかである。
また、渋谷署2番が黙秘している以上、渋谷署2番から自白を得て証拠とすることも不可能である。
したがって、渋谷署2番には「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法207条、60条)が認められない

3 渋谷署3番は暴行しておらず相当な嫌疑はない
(1)被疑事実
   渋谷署3番の被疑事実は、前半は渋谷署2番と同じであり『同日午後3時51分ころ、東京都渋谷区宇田川町27番4号Tビル前路上において、「何で逮捕されるんだ、仲間を返せ」等と怒鳴りながら、警視庁渋谷警察署司法警察員警部宇井秀三の胸部に体当たりする暴行を加え、もって同警部の職務を妨害したものである。』とされている。

(2)渋谷署3番は暴行など加えていない
   被疑事実においては、渋谷署3番は警察官の胸部に体当たりする暴行を加えたとされている。
しかし、渋谷署3番は実際にはかかる行為は一切していない。
そもそも、上述したように渋谷署の警備課長は、本件「リアリティツアー」参加者に対して、麻生邸付近に限って5名ずつ通行規制を行うから協力してもらう旨の連絡をしているのであるから、渋谷署3番を含めた「リアリティツアー」参加者は、麻生邸付近までは何の問題もなく通行できると認識していたのである。
ところが、「リアリティツアー」の先頭にいた参加者に対し、突然私服の警視庁公安課所属と思料される警察官が体当たりをし、現場は騒然となった。
私服警察官が襲いかかる様子は、下記ユーチューブの画像からも明らかである。
http://jp.youtube.com/watch?v=3Uw701vV15U
渋谷署3番は、かかる事実を目の前にして、何が起こったのか、なぜ参加者が身体制圧されなければならないのか、など一切が不明であったから、まずは身体制圧された現場に近寄って事実を確認しようとしたところ、複数の警察官らが立ちはだかって渋谷署3番の身体を押し、突き倒し、確認行為を妨害しようとしたのである。
すなわち、本件は渋谷署3番の正当な確認行為を暴力をもって警察官らが妨害したというのが真相であり、渋谷署3番による暴行事実は一切ない。
上述したユーチューブの画像を確認してみても、渋谷署3番は警察官らにもみくちゃにされ、襟首を捕まれているだけである。暴行の客観証拠はないし、むしろ、暴行をしていないことの客観的証拠がある。
仮に、渋谷署3番の体が警察官に接触したとしても、渋谷署3番に暴行の故意がないことは明らかである。

4 警察官に対する公務執行妨害罪の特徴
本件のような、警察官に対する公務執行妨害罪は、他の犯罪と異なる特色を有する。
近代国家における刑事司法制度は、報復の連鎖を防止し、真実の発見と適正な刑事制裁を実現するため(刑事訴訟法1条)、被害者の報復を禁止し、国家に刑罰権の行使を一元化させ、犯罪捜査を警察・検察といった専門機関に委ねたものである。
ところが、本件のような警察官に対する公務執行妨害罪の場合、実質的には「被害者」に当たる警察が、犯罪捜査をおこない、報復をなすに等しい。
本来、こうした場合には「被害者」たる警察とは別の機関が捜査に当たるような立法がなされることが好ましいが、そのような法制度が採られていないわが国の場合、通常の犯罪捜査の場合と異なる点に十分に留意し、犯罪の嫌疑の存否の判断にあたっては十分に厳格に考慮することが必要となるのである。

5 一方当事者たる警察作成の資料は信用できない。
   そもそも、送検にあたって警察官が検察官に提出した疎明資料の中には、被疑者が警察官に対して暴行脅迫を行ったと思料されるような客観的な疎明資料はないはずである。警察官が提出した疎明資料の中には、警察官が作成した現行犯逮捕手続書、捜査報告書、逮捕行為に携わった警察官の供述調書の類が存在すると思われるが、もしそれらの疎明資料の中で、被疑者が警察官に対し暴行を行った旨述べられているのであれば、そのような記載は虚偽と言わなければならない。
   本件のような公務執行妨害事案において、逮捕現場に立ち会った警察官が虚偽の供述をすることはままあることなのである。例えば、東京高裁平成14年(う)第1197号(2004年1月21日宣告、確定)の事案は、羽田空港内で警察官に対して暴行を行ったとされる公務執行妨害被告事件であるが、以下のように判示し、警察官の証言の信用性を否定し、被告人を無罪に導いた。
   「4人の警察官の証言内容は、奇しくも、山口がメモ紙片を紙コップに入れようとした被告人を制止しようとして暴行を受けたという状況だけが一致していて、その余の詰所内の状況についてはまるで整合性がないどころか、むしろ証言内容が相互に矛盾しているといってもよく、山口以外の3人の警察官については、一体誰が本件暴行時に詰所内にいて、どこに位置していたのかが全く判然としないのであり、そのような3人の警察官の目撃証言に、たやすく信用性を認めることはできないというべきである。」
   「4人の警察官の証言には、容易には払拭できない疑問が種々認められる」
 公務執行妨害事案の証拠構造は、捜査当局側の資料と被告人の言い分のどちらに信用性が置かれるか、ということになりがちであるが、上記裁判例から明らかなとおり、現場に臨んだ警察官は一方当事者であって、自らの職務執行の適法性を取り繕うために平然と虚偽供述を行うのである。このようなことが実際に横行されていることを十二分に留意して、警察官提出の疎明資料を吟味すべきである。

第4 弁護人となろうとする者の接見の妨害
  本件では、弁護人萩尾が渋谷警察署門前に到着して接見を申し入れたのは午後5時5分過ぎであり、その後弁護人河村、弁護人高橋が加わるも、実際に被疑者らとの接見が開始されたのは約2時間過ぎた午後7時5分頃であった。
 初回の接見であるにもかかわらず、即時、近接した時点で接見をさせなかった渋谷警察署の措置は、弁護人と被疑者らの接見を妨害するものであり接見交通権を保障した刑訴法39条に違反する違法な行為である。

1 接見妨害の違法性を断じた裁判例
 初回の接見交通権について、憲法は「何人も、・・直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない」と規定して保護している。それは、身体拘束されたばかりの被疑者が防御権の内容を知らされ、その行使を準備するうえで特に重要なものであるから(刑事訴訟法39条3項)、即時または近接した時点、具体的には犯罪事実の要旨の告知や指紋採取、写真撮影を終えた後、取調べの前に行わせなければ被疑者の防御権の侵害となる。そのことについて、最高裁判所第3小法廷平成12年6月13日判決/平成7年(オ)第105号が以下のように述べている。
 「とりわけ、弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとっては、弁護人の選任を目的とし、かつ、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である。したがって、右のような接見の申出を受けた捜査機関としては、前記の接見指定の要件が具備された場合でも、その指定に当たっては、弁護人となろうとする者と協議して、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、犯罪事実の要旨の告知等被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後において、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであり、このような場合に、被疑者の取調べを理由として右時点での接見を拒否するような指定をし、被疑者と弁護人となろうとする者との初回の接見の機会を遅らせることは、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものといわなければならない。」

2 2時間後の接見は「即時または近接した時点」ではない
 「即時または近接した時点」との点について、取調べ中であっても「即時」の接見を認めるべきかについて、最近の判例がある。2004年12月6日、左近充寛久弁護士が松戸東警察署で午後2時35分に接見を申し入れ、1時間接見を妨害されて午後3時30分過ぎに接見が認められた件について、2006年2月28日、東京高等裁判所は、松戸東警察署の対応を違法として千葉県に対して11万円の損害賠償を命じた。この件は、留置担当官がずるずると引き伸ばして接見の時刻の指定がなされなかった事例ではあるが、取調べ中であっても直ちに接見させることが必要としたのである。
 すなわち、一度も弁護士との接見がないまま取調べが行われ、捜査機関が調書などの証拠を作成した後では、接見が実現してもすでに被疑者の防御権は侵害された後で、もはや取り返しがつかないのであるから、初回の接見については、取調べ中であっても、否、取調べ中こそ、その取調べを中断して、接見を認めなければならないのである。
 ところが、本件では、前述のように、実際に被疑者との接見が開始されたのは約2時間過ぎた午後7時5分頃であった。その間、警察は接見を妨害し、時間稼ぎに終始していた。被疑者に対しては、身体検査、弁解録取はもちろんのこと、身上の取り調べ、事件内容の取調べまで行われた。
 これは、接見妨害を利用した取調べであり、その違憲・違法性は重大であって逮捕手続全体が違法となるのである。

    3 まとめ
以上の幾つもの違法行為により、被疑者らの逮捕手続き自体が違法となる。勾留は違法な逮捕を前提とすることが出来ないから、勾留請求も違法として認められない。

第5 被疑者らには勾留の理由がない
本件被疑者らについて、裁判官内田哲也は、刑事訴訟法60条1号(住所不定)、2号(罪証隠滅の疑い)、3号(逃亡の疑い)のすべてを認めた。しかし、その判断はいずれも明らかに誤っている。

1 住居不定ではない
渋谷署1番は定職を有して働き、定まった住所を有していることが押収された物(健康保険被保険者証)からも明らかである。渋谷署1番は両親と同居しており、両親は今回の不当な弾圧に激しい怒りを燃やしている。
渋谷2号も定まった住所を有していることが、押収された物(運転免許証等)からも明らかである。
渋谷署3番も定まった住所と定職を有していることが、押収された物(国民健康保険被保険者証等)からも明らかである。
 
2 罪証隠滅はしない
被疑者らは無実であるから、当然隠滅すべき罪証も存在しない。
被疑者らが今回のツアーの参加者に働きかけようにも、被疑者らは虚偽の供述をしているわけではないから、口裏合わせなどの危険も皆無である。
他方で、本件に際しては、上記のインターネット画像やマスコミ撮影のビデオなど、多くの客観的証拠があり、被疑者らがさらに何か「罪証」を隠滅しようもない。
また、被疑者らが「証人」たる大勢の警察官・機動隊員を威迫するなどということは到底考えられない。
そもそも、法の予定する罪証は、犯罪の成否および重要な態様に関する証拠である。情状など量刑資料の範囲は流動的で不明確なので、「罪証」からは除外されると考えるべきである。

3 逃亡はしない
  渋谷署1番には、前述のように両親とともに生活している住居があり、押収された名刺に記載されている通り定職も有している。渋谷署1番が、これらの定職や家庭生活を放棄して逃亡するとは到底考えられない。
 渋谷署2番は、うつ病及び発達傷害で精神科に通い投薬が欠かせない生活であり、今回逮捕されたことによる生活の変化にも強い精神的ストレスを感じている状態である。まして逃亡することなどできるはずもない。
 渋谷署3番は、家庭もあり、それを放棄して逃亡することはあり得ない。
前述のように被疑者らは無実であるから、むしろ自己の不起訴を勝ち取りたいはずである。
 にもかかわらず、被疑者らがわざわざ逃亡するというのは著しく常識に反する。

4 黙秘権行使考慮の違憲
被疑者らは取調に対し黙秘権を行使し調書の作成を拒否しているが、そのことを理由に「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」や「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある」とするのは、憲法38条1項で保障された渋谷署1番の黙秘権の侵害であり、およそ違法として認められない。

第6 勾留の必要性は認められない 
1 勾留の必要性
本件においては、前述のように全く勾留の理由が認められないことからすれば、仮に検察官が勾留を請求するとすれば、身体拘束を利用して虚偽の自白を得て転向を強要するための勾留と考えるほかない。
取調目的の勾留が認められないのはいうもでもないが(刑訴法60条参照)、黙秘権を行使し続けている被疑者らに対し、取調室へ強制的に連行し取調室に留まり捜査官からの執拗な質問、威嚇的言動に耐えることを強いることは、黙秘権を保障した憲法38条2項違反する行為であって、その点からも本件勾留の必要性(刑事訴訟法87条)は認められない。

2 渋谷署1番について
実際に、10月28日の検察官による渋谷署1番に対する取調べにおいては、黙秘権侵害が行われた。午前の取調べの3分の2以上が、以下のような侮蔑的・脅迫的文言で費やされた。
「完黙は時代遅れだ。法政大学の中核派と同じで、子どもっぽい。自分たちが楽しむためにやっているだけだ。おまえたちのやっていることを見ると、第三世界の命を張る行動とは違う。おまえみたいなやつを見ていると、本当に何を考えているか分からない。」
また、同日、渋谷署1番が警察署に帰ってからの警察官による取調べでは、「いい加減喋れよ、なあ、●●君、駅頭でお前が喋っていたことをずっと聞いていたぞ」「お前、仲間と友達とは違うぞ、仲間はいつまでお前の面倒を見てくれるか分からないぞ」などというものであった。
さらに、同月29日の警察官による取調べでは、警察官は、渋谷署1番が黙秘し続けていることにつき「情けないねえ。」などと複数回言い、同月30日の取調べでは、「おまえ、ここで(警察官が)しゃべったことを弁護士にいうのか。釈放されたら人前でいうのか。」などと、口止めとも取れる発言をしている。
このように、現実に行われている取調べは、渋谷署1番の黙秘権を露骨に侵害するに留まらず、渋谷署1番の人格権をも侵害する違法な取調べと言わざるを得ない。
このような取調べをすることを目的とした本件勾留は理由もなければ必要もなく到底許されないと言わなければならない。

3 渋谷署2番について 
(1)精神的拷問
警視庁渋谷警察署警備課公安係長伊藤警察官と、佐野警察官は、本年10月26日に公務執行妨害を捏造されて逮捕された被疑者渋谷警察署2番の取調べを担当している。
その取調べの内容は、長期の身柄拘束を利用して虚偽の自白を得て転向を強要するためのものに他ならず、黙秘権を保障した憲法38条2項に違反するうえ、被疑者に殊更に屈辱を強い、その人格を傷つけることを目的としたものであった。
それは、アスペルガー症候群高機能自閉症)を有しうつ病を病んでいる被疑者にとって到底耐え難い拷問である。
警察官らは、被疑者がそうした障害を有していることを知りつつ(被疑者は10月26日の逮捕当日に警察によって広尾病院へ連れて行かれて薬を処方された)、拷問行為をなしているのであり、極めて悪質である。しかも、そのための道具として、被疑者から押収したノートに書かれていた文言について述べ、被疑者のプライバシーを殊更に暴露することが行われているのである。

(2)取調べの内容
ア 10月27日
10月27日の被疑者に対する取調べにおいては、転向強要が行われた。午前1時間30分、午後3時間もの長時間の取調べが行われたうえ、被疑者の捜査官伊藤警部補は、取調べの中で以下のような侮蔑的・脅迫的文言を述べたのである。
「お前は俺と同じ根はまっすぐな人間だ。お前をまじめな人間にするためにやっているだけだ。おれはいろんな人を更生させた。中核派だった者も更生させていまでは田舎で農業をしている。支援者らはお前を利用しているだけだ。弁護士は有名になろうとしているだけだ。」
なお、このように弁護士を誹謗してその信用を失わせようとすることは実質的な接見妨害として近時国家賠償請求が認められた違法行為である。
さらに、佐野警察官は以下のように述べて被疑者を挑発した。「目をつぶっているのは卑怯だ。取調室であくびをしているのは活動家として負けている」
このように、現実に行われている取調べは、被疑者の黙秘権を侵害するに留まらず、被疑者の人格権をも侵害する違法な取調べであることは明らかである。
  当職は、この不当な取調べに対して強く抗議した。にもかかわらず、以下のような不当な取調べがその後も繰り返されたのである。 

イ 10月29日
10月29日夜の取り調べでは、警察官らは「反論しろ、反論があるなら言え、総括しろ、またこういうことで捕まって、同じことを繰り返すよ、ずっと黙ったままで変わらないと、勾留期間10日が20日になって、30日になっちゃうよ」と述べて露骨に黙秘権を侵害した。

ウ 10月30日
さらに10月30日の取り調べでも「今しゃべらないとどんどん状況悪くなるぞ、今、黙秘を続けていると元に戻れなくなる、活動家として生きるしかなくなる、日常的に公安が張り付いて、大変なことになる」などと述べて被疑者を脅迫した。
さらに、押収された被疑者のノートの生活保護の受給手続や精神疾患に関する記載に基づき、「国の世話になっているのだろう」、「おまえは病気じゃあない」、「生活保護を申請していて兄妹にやらせていいのか」などと、被疑者を詐病呼ばわりし、生活保護制度を否定する発言をなした。

エ 10月31日
  10月31日には、午前1時間、午後2時間半、夜1時間もの取調べがなされた。
 その際には、押収された被疑者のノートに記載されたプライベートな事項、被疑者がカヤックの仕事を後輩に奪われたことなどのうつ病になった経緯に関わる部分について述べるなど、被疑者の内心をえぐって塩を刷り込むような行為を続けた。これは、被疑者の精神にて極めて重篤な障害を与えかねない行為である。

オ 11月1日
 11月1日には、被疑者に対して怒鳴って「男らしくない」と侮蔑的な発言をした。さらに、「昔なら殴ったり首を絞めてもよかったんだが、今は時代が変わったからな」などと被疑者に対する脅迫をなした。加えて「お前は鉄砲玉だ。出てきてハクがついたら、今度は真っ白なやつを手下にするんだろう」などと被疑者をヤクザ扱いした。
 これらが明白な人権侵害であることは論を待たない。

(3)取調べによる被疑者の苦痛
被疑者は、前述のように精神科に通院し、現在も服薬中であるが、10月29日夜の接見の際には、「警察官の取り調べによる精神的ストレスがひどい。声を聞くだけで頭が重くなってくる」と訴えていた。
10月31日の夜の接見の際にも、「うつ病が治りかけている時にこんなことをされるとよくない」と述べていた。
11月1日夜の接見の際には、被疑者が取調べ中、警察官らに対して、「俺は精神科に通っているけど、病の原因となっている出来事の書いてある日記やメモの内容を勝手に読んでその内容について質問をし、当人の心の傷となっている出来事を思い出させるなんて黙秘権を持ち出す以前の人間としての信用の問題だ。人権侵害だ」と抗議した。
にもかかわらず、11月2日においても、被疑者に対して、「反論があったら言ってみろ」などと黙秘権を侵害する取調べが継続している。
取り調べによる被疑者の精神的苦痛は甚大である。
被疑者は、現在、警察のこの不当な取調べに対する怒りから気分が高揚しているが、高揚期が終わり気分が沈滞した局面に入れば、被疑者が極めて重篤な欝に陥ることが懸念される。
かりに、警察官らが上記のような違法な取り調べを継続し、被疑者が精神に障害をきたし、ひいては自殺するようなことがあったら、警察、検察、裁判所はどう責任をとるつもりなのか。近時、そうした事例で国家賠償請求が認められた事例もあるが、金銭では取り返しのつかない問題である。

第3 結語 
 以上のとおり、本件においては、被疑者らを勾留する理由も必要も認められない。
 裁判所が、速やかに勾留を取消し、被疑者を解放するよう強く求める次第である。

  
以上