大藪春彦(1)

大藪春彦 おおやぶはるひこ
百科事典マイペディアの解説大藪春彦【おおやぶはるひこ】小説家。ソウル出身。日本でのハードボイルド小説作家の先駆的存在。本人も射撃等を趣味とし,ハードボイルド小説を地で行くようなところがあった。早稲田大学在学中に書いた《野獣死すべし》が江戸川乱歩に絶賛され,中退して作家活動に入る。 出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

大藪春彦 おおやぶ-はるひこ1935−1996 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和10年2月22日朝鮮京城生まれ。早大在学中の昭和33年にかいた「野獣死すべし」を江戸川乱歩に激賞され文筆生活にはいる。「蘇える金狼」「汚れた英雄」などのハードボイルド小説を発表。平成8年2月26日死去。61歳。 出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

大藪春彦
おおやぶはるひこ
(1935―1996) 小説家。韓国ソウル生まれ。第二次世界大戦後、半死半生の体で日本へ引き揚げるが、このときの苛酷な体験が、徹底的な国家権力への不信感と反発心を植えつけ、のちの創作活動に大きな影響を与える。早稲田大学教育学部中退。在学中の1958年(昭和33)、文芸同人誌『青炎』に発表した「野獣死すべし」が江戸川乱歩の目にとまり、小説誌『宝石』に転載されデビュー。鋭利な頭脳と強靭な肉体をもつ青年伊達邦彦が実行する現金強奪事件を通して、暗いロマンチシズムをたたえながら、ひとりの人間が実行する反社会的な行為を徹底して冷徹な文体で描いたこの作品は大きな衝撃をもって迎えられた。伊達邦彦を主人公とした作品は『野獣死すべし 復讐編』(1960)、『血の来訪者』(1961)、『野獣は、死なず』(1995)などその後の作家活動の主軸をなすシリーズとなる。
 しかし、当時の大藪に対する評価はそのほとんどが否定的なものであった。曰く、およそ苦悩とは縁のない小説である。曰く、ピストルや銃、自動車の性能の講釈の多いのがどの作品にも顕著で、非情というより自己顕示欲に駆られた単純無軌道の行動でしかない。曰く、日本のハードボイルドが育たない理由は、大藪作品に代表される現実的基盤の薄弱さにある……等々だ。