インビクタス/負けざる者たち(クリント・イーストウッド、2009)

スポーツが政治利用されるストーリー。
民衆に注目されるスポーツは政治的に悪用されることが多い印象が強い。オリンピックなどはその最たるものだろう。1936年のベルリン。1972年のミュンヘンでのテロ。1976年から3大会連続でのボイコット(モントリオール、モスクワ、ロサンゼルス)。ナショナルチームには少なからず国家予算が注ぎ込まれているので、見返りを求められるのは止むを得ない。綺麗事だけでは勝てないのも理解できる。
現実はどうだったのかは知らないが、この映画でのマンデラは強かだ。無邪気に自国チームを応援しつつ、新しい南アフリカの象徴として国内外へのアピールを欠かさない。選手もそんなマンデラに乗せられ勝ち進む。国家元首が一つのラグビーチームに介入することは、強権による独裁と見なされかねない。しかし、多くの困難と不満を抱える国民を自国ラグビーチームによって纏めていく手腕は、泥臭くも巧妙である。
アジア某国サッカー選手の短絡的政治アピールとか、人気取りのために国民栄誉賞を乱発する某国首相とか、方法が稚拙で目的が下劣な政治利用との違いには眩暈がする。改めて人間の器の大きさには差があり、容易にはその器を大きくすることはできないのだなと思った。
それと、マンデラ本人のお墨付きらしいが、主役はモーガン・フリーマンしかありえない。観る前も観た後もその印象は変わらない。

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]

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