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2008-04-09

東方の三賢人」




── 今、日本のIT業界は岐路に立っていると言われています。そのことについてどうお考えでしょうか?
小飼 そもそも岐路に立っているのかというのが疑問ですね。
(中略)
中島 まず土俵に立っているのか、という説もありますね。
小飼 日本の技術者はレベルが低いというわけではないんです。
(中略)
小飼 じゃあ何が問題かというと、技術者にちゃんと金を払っていないことだと思います。「上場するなら金をくれ」じゃないですが、日本のソフトウェア企業はあまりにも技術者に対して正当な給料を支払っていない。

上場するなら金をくれ──中島×小飼×津田・鼎談(前編) - ascii.jp



日本のIT業界が岐路に立っているのかどうかうなんてことより、そもそも土俵に立っているのかという点が怪しいのであって、問題は日本の技術者はレベルではなく、日本のソフトウェア企業が技術者に対して正当な給料を支払っていないことであるらしい。だから「上場するなら金をくれ」と。しかしそれは必ずしも昇給という形ではなくともよく、「株で払うから、後で会社が大きくなってからキャッシュアウト」するという方法でも可と。


技術者の給料を上げるかオプションを渡しておけば「土俵」に立つことが出来るということは、技術者は給料が安すぎるから「やってらんねえや」とサボっているだけであって、本当は直ぐにでも「土俵」に上がれる実力を持っているということになる。「岐路に立っているのかというのが疑問」ならば、日本のIT業界が大きな曲がり角を迎えてビジネス環境が激変しているわけではないということになり、後は現場にいる人間のインセンティブの問題ということになってしまうからだ。


これ本当なのか。お金さえ技術者につけてやれば、たちまちGoogleやMicrosoftやYahoo!に匹敵するような企業に生まれ変われるのか。「日本のIT業界」が90年代から今日に至るまで一貫して欧米の猿真似サービスしか提供できなかった状況を見れば、とてもそんなことは信じられない。


もしもこれが本当ならば、経営者は給料を倍にでも3倍にでも10倍にでも上げてやれば良い。それで業界のトップ企業に成れるのであれば十分に元の取れる施策であろう。しかし未だに給料が安いということが問題視されるのは、これまでそんなことが実現すると信じた経営者は誰もいなかったことを証明している。それは、必ずしも「技術者の価値が分かっていない」からではないだろう。


「日本のIT業界」には小規模なベンチャーが多く、払いたくてもなかなか高給は出せないというのであれば、VCから資金を調達すれば良い。たとえ投下資金が技術者の「新しいオモチャを買うため」の原資に消えたとしても、それで投資先企業が大きく成長するというのであればVCだって喜んで金を出す筈だ。しかし、日本のVCは金を出してくれないと甘ったれた愚痴をたらすIT経営者をしばしば見かけるということは、実際にはVCはさほど金を出していないわけで、つまり、技術者の給料を上げてやれば万事オッケーなんてことを信じたVCはなかったことを証明している。


技術者の給料が「正当」でないというなら、それを「正当」なレベルまで引き上げることに反対するものではないが、給料さえ上げてやれば会社が発展するというなら経営者は要らない。問題は、こんな曖昧な議論しか出来ないくせに「東方の三賢人」などと持ち上げられて喜んでいるような連中が「日本のIT業界」では大きな顔をしていられる点にこそあるのだろう。

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