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2012-05-20

[]神秘の国、ニッポソ

すでに scopedog さんがツッコミを入れておられますが、ネットの「慰安婦」問題否認論者にとって日本とは輸送船や鉄道やトラックなどの存在を知らず、1938年にはすでに制海権も制空権も失っており、しかしたった2万人(4単位師団なら1個師団以下)で8年間も広い中国大陸で戦い続けた国、ということになるようです。

http://b.hatena.ne.jp/entry/alfalfalfa.com/archives/5500460.html

しかし実際には、中国に配置された日本軍は、最大で100万人を超えていました。しかもこれは東北部=満洲の関東軍を除いて、の数字です。そして「輸送船」というものを持っていた日本軍は、例えばガダルカナルにまで慰安婦を送っていたわけです。

f:id:Apeman:20070503151156j:image

これ↑は『日本の戦歴』(毎日新聞社、1970年)掲載の写真。

f:id:Apeman:20070503151532j:image

こちら↑は『別冊歴史読本 特別増刊 未公開写真に見る日中戦争』(1989年)掲載のものです。

パリセイズ・パーク市に建てられたという碑の写真を見ると、"the more than 200,000 women and girls who were abducted by the armed forces of the Government of Imperial Japan" (emphasis added) なる言葉が刻まれています。「20万」という数字については、研究者による推定の範囲に収まっていますから、記念碑という性格を考えるとまだ容認可能でしょうが、"abducted" という語はみすみす日本の歴史修正主義者に付け込む隙を与えるようなものです。それでも「制空権も制海権も失った状況」とか「中国に進軍した日本軍が2万人」などと比べれば、はるかに現実に即していますけれどね。

2012-05-16

[]「さかのぼり日本史」がひどかった(追記あり)

NHK Eテレで放送されている「さかのぼり日本史」。昨年の夏に「昭和 とめられなかった戦争」をやって、今年の2月には江戸時代を扱っていたので、今頃はさらにさかのぼって室町時代でもやってるのかな(しかしそもそも「室町幕府」は実在したのか!?)と思ってたんですが、昨晩寝る前にテレビをつけたら、いつのまにか時代を下って「昭和 “外交敗戦”の教訓」の第3回をやってました。しかしこれがひどかった。詳しくはまた後ほど。このエントリに追記します。


追記

5月15日に放送された「さかのぼり日本史 昭和 “外交敗戦”の教訓」の第3回は「国際連盟脱退 宣伝外交の敗北」と題し、国際連盟脱退に至った経緯をとりあげている。ゲストは服部龍二・中央大学教授。番組の焦点は田中上奏文をめぐる松岡洋右と顧維鈞の駆け引き。顧が論拠とした田中上奏文を松岡が「そのような文書が天皇に上奏された事実はない」「もし本物だというならその証拠を提出してもらいたい」と反駁。本国に連絡し「本物である証拠は提出できない」と回答された顧は「そのような証拠は日本のしかるべき地位の者にしか入手できない」と取り繕ったうえで、「証拠はともかく、この問題についての最善の証明は今日の満州で起きている現状である」と、現実が田中上奏文を裏付けているという主張へとシフト。だがこの論争が欧米で報道されるたびに、日本の軍事行動が印象づけられることになった、と。その結果、リットン報告書よりも日本に厳しい対日勧告案が可決されることとなる。

服部教授は「松岡は顧維鈞を論破した気になっていた」とコメント。だが第三国にとっては田中上奏文の真贋よりも、顧維鈞が指摘した「現実が上奏文を裏付けている」という点の方が重要だった、と。驚いたのはその次。松岡には田中上奏文の真贋論争に持ち込むのではなく、「受け流すという選択肢もあった」というコメント。真贋論争に持ち込んだことでかえって国際世論に印象づけたから、と。これを受けて番組ホストのアナウンサーが「そうしますと、外交というのは何が真実かということ以上に、宣伝や情報戦というようなことも、大きな力を持つんだ、ということなんですね」と発言。で、服部教授のまとめのコメントが次の通り。

国際政治には、事実関係とは別に、情報戦という次元がある、ということであります。言い換えますと、本物であるかどうかということと、第三国の受け止め方ということは違う、ということです。つまり、田中上奏文のような明らかな偽書、あるいは俗説といったものであっても、ひとたび外国に流通してしまえば、それを否定することは難しいことですよね。だからといって不用意に真偽論争に持ち込めば、かえって宣伝に逆用されてしまうこともある、というわけです。したがいまして、田中上奏文というのは、国際政治における宣伝、さらには情報の重みということを、今に伝えているのではないでしょうか。

「情報戦」という言葉が飛び交うので一瞬「チャンネル桜を見ているのか?」と錯覚しそうになったが、まあ外交に「情報戦」という側面があるのはその通りだからよいでしょう。しかし「受け流すという選択肢」が一体何を意味するのか、またそれを採用していたら一体どのような展望が開かれたのかがさっぱり分かりません。顧維鈞の主張に説得力を与えていたのはなによりも関東軍の振る舞いだったわけですが、どんな「情報戦」を戦えば国際社会がこれを看過してくれたんでしょうか?

2012-05-15

[]松木兼治郎の沖縄戦手記、復刊

今日は沖縄の「復帰」40年目の日にあたります。これを機に、阪神タイガース創設当時の選手である松木謙治郎の手記、『阪神タイガース 松木一等兵の沖縄捕虜記』が復刊されるそうです。

私は数年前に古書店で買って読みました。当初刊行されたのは沖縄の復帰直後、1974年のことです。まだこの数年ほどには元日本軍将兵が旧軍の負の側面を自由に語れる時代ではありませんでしたが、他方で近年のような沖縄戦の歴史を巡るバックラッシュもなかった当時のことです。記事で紹介されている「知り合った沖縄の一家が日本軍の下士官に壕(ごう)から追い出され、砲弾の犠牲になったこと」の他、負傷した民間人が自決したいというので擲弾筒の弾を渡した体験などが率直に書いてあります。自身の体験ではありませんが、「渡嘉敷の自決事件」という一節もあり、「集団自決」した民間人の心理について「たしかに当時は、私たち兵隊ばかりでなく、一般国民も軍から教育されてその心境になっていた」と、軍の責任を認める記述もあります。

2012-05-11

[]早くも予想が的中!

全然嬉しくない的中ですけどね。

「維新の会」が歴史教育をターゲットにするのもそう遠いことではないだろう、と思わされる。

(http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120422/p1)

この予想ですが。

 橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事は、子どもたちが近現代史を学ぶ施設を大阪府市で設置する検討に入った。橋下氏は10日、代表を務める大阪維新の会の大阪市議らに対し、「新しい歴史教科書をつくる会」や元会員らによる教科書づくりに携わった有識者らに意見を聴く考えも示した。


 橋下氏は9日、維新の会と公明の両市議団幹部と非公開で協議。出席者によると、橋下氏は「中国などに比べ、日本の子どもは近現代史がしっかり勉強できていない」と主張。その上で、歴史観や事実認定で意見が分かれる近現代史について「子どもらが両論を学べる施設」をつくる考えを明らかにしたという。


 10日には複数の維新市議団幹部と再度協議し、展示内容などについて、扶桑社版や育鵬社版の歴史教科書編集に関わった有識者から助言を受けることで一致。近く、同市議団幹部が有識者に協力を依頼するという。

こういうことには財布のひもが緩いんですなぁ。

穿った見方をすると、「新しい教科書をつくる会」の元副会長である高橋史郎が提唱する「親学」をベースとした条例案が早々にポシャってしまったので、大急ぎでその埋め合わせをする方法を考えたということかもしれません。大阪の有権者は人権と真実を犠牲にしてなにを手にすることになるのでしょうね。