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2007-08-31

[]「シベリア抑留なんて知らない」と言い張る否定論者(追記あり)

8月30日に「南京の真実 情報交換掲示板」のスレッド128に投稿したものの、現時点(9月1日午前7時36分)でまだ公開されていない私のコメントです(その後、10時58分に確認したところ公開されていました)。

>シベリア?何ですかそれは?

>ホロコースト?そんなものがあったのですか?


南京事件否定論者の中にホロコースト否定論者がちょくちょくみられることは承知していましたから驚きませんが、シベリア抑留もご存じないと言い張られるのですね? 東京大空襲、本能寺の変についてもご存じないのですか? 返答を避けたということは「知らない」と判断させていただいてよいですか? だとすれば、それほどまでに非常識な方を納得させるために私的な時間を使う気にはなれません。

この掲示板を御覧の「南京大虐殺はなかった」派のみなさま。「さるおかた」さんはシベリア抑留も「知らない」と言い張っておられます。あなた方はこういう人物についてどう思うのですか? きちんと態度を表明すべきではないのですか? シベリア抑留なんて知らん、と言い張る人物が南京事件についてなにを語ろうが無意味だとは思いませんか?


>日本国内の肯定派で、南京で20万人虐殺があったと主張している研究者はいるのですか?


なんというか、南京事件に関して極めて初歩的なことすらご存じないのになんとも高飛車な語り方をされるんですね。あなたはこれまで南京事件に関してどんな文献を読んで来られたのでしょうか? この質問は、あなたが南京事件について一通りの関心をもつ人間なら当然知っていることに無知であることを意味していると思うのですが、そう考えてよいですか?


> プロパガンダ映画とは

>この「南京の真実」の映画制作のきっかけになった映画ですが


あなたは『南京の真実』の製作のきっかけについてすらろくにご存じないのですね。「製作趣旨」には次のようにあります。


>米国サンダンス映画祭にて、南京「大虐殺」映画が公開されました。  さらに、中国、カナダ、米国等で計7本の南京「大虐殺」映画製作が予定され、全世界で公開されると言われています。


「計7本」あるそうですよ。どれなんですか?


>しかし20万人だと教えてくれたのはApemanさん自身ですよ

>どういうきっかけでこのプロパガンダ映画が制作されたのかは知りませんが

>20万人ではないということですか?また30万人に戻りますか?

これじゃ二転三転といわれても仕方ないですね


この一連のやりとり、そのうち私のブログで紹介してみなさんに笑ってもらうことにしますよ。アメリカ人がつくった映画を「中国の主張が二転三転した」という主張の根拠にする奇怪至極な人物がいる、ということで。


>あなたの言っていることに一貫性を持っていただけませんか?


いやだから、私の主張がなにからなにへ、そしてまたなにへと変化したというのですか? あなた、なに一つ具体的に指摘できてないじゃないですか。支離滅裂なあなたの投稿を許容して公開しているこの掲示板の管理人さんの寛容の精神には頭が下がります。普通なら「第五列」とみなして削除するところでしょう。


 >まず虐殺人数をハッキリさせていただけませんか?

>こちらとしても証拠を求めるのに

>虐殺人数が何人で求めて良いのかわかりませんから


普通の人間はまずできる限りの証拠を集めてから、出来事の全体像を再構成しようとするものなのですよ。つくづく「結論先にありき」なかたですね。


すでに述べたように、「後出しじゃんけん」を封じるためにはまずあなたに「どの程度の証拠があれば事実と認めるのか」をきちんと語ってもらわねばなりません。あなたは「ホロコースト、シベリア抑留、東京大空襲、本能寺の変」のいずれもご存じないと言い張っておられるわけですが、ではどのような歴史的出来事ならご存知で、その証拠を提示することができるのでしょうか? あなたが提示した証拠の水準にみあった水準でこちらも証拠を提示します、とさんざん申しあげたはずです。


南京大虐殺も何度か日本の裁判所でとりあげられています。例えば家永教科書裁判ですが、南京大虐殺が存在したことは「定説」とされ、検定は違憲とされています。生存者が損害賠償を請求した戦後補償裁判でも地裁は南京虐殺があったことを認めたうえで請求を斥けています(上級審は事実認定には踏み込まず)。この戦後補償裁判の原告にして南京虐殺の生存者である李秀英氏の証言を「実体験でない」と著作で評した松村俊夫氏(と展転社)は、民事訴訟で敗訴していますね。あなたの基準に従えば、「南京虐殺はあった」というのが日本の裁判所の判断だと言えそうです。

ご承知のように、ネット否定論者は南京事件についてのみ非常識に高い証明水準を要求します。こちらがなにを提示しようが「そんなものは証拠にならない」「オレは信じない」と言い張ればすむのだから、否定論者というのは気楽な商売です。それではあまりに業腹なので、「さるおかた」さんに「あなたが“シベリア抑留はあった”ことを証明してくだされば、こちらはそれにみあった水準で南京事件の証拠を出します」と言ったら,シベリア抑留なんて知らん! と言い出したというわけです。


追記:え〜念のためですが、「さるおかた」氏が本当にホロコーストもシベリア抑留も「知らない」はずはありません。シベリア抑留なんてロシア叩きの材料として定番であるわけで。しかし「南京大虐殺はなかった」と言い張り続けるために「シベリア抑留なんて知らん」と言い張る羽目になってしまった、ということです。

否定論者が南京事件について(あるいは従軍慰安婦問題について)のみ非常識な証明の水準を要求していることについては前々から注目していたのでこの種の質問は何度かしてきたのですが、ここまでこちらの期待通りのふるまいをしてくれるひとというのはなかなかいませんね。

[]二重基準

「さるおかた」さんのスレッド128での最初の投稿に、次のような一節があります。

なぜあなたは「無かった」という証言があるにもかかわらず

自分で確かめもしていない「有った」という証言を信じるのですか?

これも奇怪至極なはなしで、「さるおかた」さんだって「南京大虐殺がなかった」ということを「自分の目や耳で確かめていない」わけです。にもかかわらず「無かった」という証言を信じて「有った」という証言は信じない、というわけです。

そもそも一般論として、被害者(と自称している)側と加害者(と目されている)側のどちらにより強く嘘をつく動機があるかといえば、もちろん後者に決まっています*1。特に性犯罪の場合、性犯罪の被害者となることがスティグマとなる社会では、「性犯罪の被害を受けた」と嘘をつくメリットは極めて乏しいわけです。刑事犯罪の場合なら、「冤罪」の可能性を常に念頭におきそれを防ぐための手続きがきちんと守られているかを監視する必要性は当然として、被害者の主張はひとまず素直(無批判に、ということではない)に聞き、容疑者の否認はひとまず眉に唾つけて聞く、というのが普通の対応というものでしょう(被疑者および被告の弁護人、裁判官を除く)。

この種の人々は、同じ戦争犯罪でも、日本人が被害者の場合には(そして特に旧ソ連や中国が加害者の場合には)全くちがう態度をとります。久々に池田信夫氏のブログを覗いてみたのですが、このエントリのコメント欄には“親族から聞かされた”というだけの理由で赤軍による戦争犯罪があったと信じちゃっている人が登場します。そりゃまあ,親や祖父母から「○○軍にひどい目にあった」「○○軍の兵士が女性を暴行するのを見た」と聞かされれば、ふつう信用しますよ。国際社会だって「おまえの親(祖父母)は嘘をついている」なんて決めつけはしませんよ。しかしそれを言ったら中国や朝鮮半島の人々だって同じでしょう。「元慰安婦の証言を鵜呑みにするな」と主張している人々が、赤軍の戦争犯罪に関する証言は簡単に信用しちゃうわけです。

*1:なお、「虐殺なんてみなかった」という証言が嘘だとは必ずしも私は思いません。否定派が自説の根拠にあげる証言が実のところ、「殺害するのはみたが、戦闘中だからしかたない」といったものであるケースがありますが、これは別に「嘘」じゃないわけです。また、一人の人間が目撃できる事象というのは限られていますから、確かにその証人が目撃した範囲では虐殺はなかったのだ、ということだって十分あり得るからです。「無かった」という証言を積みあげて「南京大虐殺はなかった」と主張するためには、時間的・空間的な全体をカヴァーするだけの証言を集める必要がある、ということになります。