「障害者たちの戦争」ほか

今年もHDDレコーダーにたくさんの番組を残したまま年を越すことになりそうです。
12月6日に放映されたETV特集「障害者たちの戦争」を見ました。内容を箇条書きでまとめると……
(1)兵役が「国民の義務」であった時代における障害者の社会的地位
(2)戦争が長期化するにつれて行なわれるようになった障害者の軍事的動員。軍需工場だけでなく前線にも(防空監視員、マッサージ師などとして)。
(3)国民優生法に代表される排除政策。配給を十分受けられなかった精神病院で多数の栄養失調死。
(4)「傷痍軍人」の増加を契機に障害者の地位を向上させようとした運動の挫折。
(5)これまでの研究の不十分さ。
といった具合です。


(5)については、木塚康宏(日本ライトハウス理事長)・岸博実(京都府立盲学校教諭)・吉田裕の3氏をゲストとした座談会の中で、(1)点字や手話により戦争体験を語る試みはあったが、社会全体には伝わらなかった、(2)健常者である研究者の問題意識の狭さ(「障害者」という視点で戦争が研究されるようになったのは80年代に入ってから)、(3)地上戦に巻き込まれた沖縄の場合に典型的であるように、自分自身がおかれている状況を把握するにもハンディがある、などが指摘されていました。(4)については吉田さんが「「丸山眞男」をひっぱたきたい」に言及して、「平凡な結論」と断りつつも「戦争を通じて(の)根本的な解決はあり得ない」、と。


もう一つは26日に放送されたばかりの「証言記録 兵士たちの戦争」シリーズ、「飢餓の島 味方同士の戦場〜金沢 歩兵第107連隊〜」。
米軍の飛び石作戦で孤立したミレー島に駐留していた陸海軍あわせ約5千人の日本軍。補給も途絶え、食料をめぐって陸海軍が対立し、文字通り味方同士が戦う(海軍の元守備隊兵士が、陸軍の兵士が盗みにくるのを警戒し銃に実弾を込めて当直に立ったこと、陸軍の兵士とわかっていて撃ったことを証言)戦場になったとのこと。やがて陸軍(歩107連隊大3大隊)でも食料をめぐる対立から兵士が将校を殺害するといった事件も起きた、と。
復員船がやってきたときの心境を話す元兵士の表情がなんとも印象的でした。