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2011-11-03

[]アパグループ第4回「真の近現代史観」懸賞論文、受賞作決定

ロムえもんさんのツイートで受賞作決定を知る。

http://www.apa.co.jp/book_ronbun/vol4/index.html

今回から優秀賞(社会人部門、学生部門)もPDFで公開されるようになったのですが、サー中松義郎博士の「日本は負けてない」は第1回の最優秀賞受賞作にも匹敵する、あるいはそれを凌駕するほどの高出力です。まあ元空自のトップのケースとは違ってこの人の場合はネタとして笑ってすますという誘惑にもかられるのですが、その元空自のトップや国会議員、右派論壇人がこれに「優秀賞」を与えるという役割を引き受けている、という事実は笑いごとではすまないでしょう。日本の原爆開発についてはちょうど先日、ジョン・ダワーが書いた論文(『昭和 戦争と平和の日本』所収)を読んだところなのですが、“昭和天皇が原爆開発を止めさせた”という伝説を唱える人びとがいることは初めて知りました。ちょっと調べてみるとネタ元とおぼしき本が地元の図書館にあることがわかったので、時間があったら読んでみてもいいのですが、まあ時間の無駄ですね。

さて、最優秀賞の方は高田純・札幌医科大教授が受賞しているのですが、この人は第3回でも「広島平和公園の碑文は撤去すべし」という“論文”で優秀賞を受賞してたんですね。すでに昨年から注目していた bogus-simotukare さんの先見の明に脱帽です。しかしもうすこし外聞のよい媒体(『正論』とか)に書く機会はいくらでもありそうなのに、よりにもよってこの懸賞に応募して300万円ゲットしてしまう神経は私にはとても理解できませんが、結局は日本のアカデミズムがこういう政治的プロパガンダをきちんと批判しないからこそ、平気で小遣い稼ぎができてしまうということなのでしょう。

machida77machida77 2011/11/03 12:43 昭和天皇が原爆開発をとめたという説は原田実『トンデモ日本史の真相』(文芸社)で解説されています。
(文庫版では『トンデモ日本史の真相 人物伝承編』)
もちろん右翼が広めている信頼できないヨタですが、http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の原子爆弾開発にまで載ってしまっており、かなり広まっています。この説の元は、五島勉『日本・原爆開発の真実』(祥伝社)です。五島勉は『ノストラダムスの大予言』のトンデモ作家という印象が強いせいか、そこから孫引きした本が情報源として紹介されていることも多いようです。

赤猫赤猫 2011/11/03 14:53 高田純も中松も田母神も、幸福の科学と密接な関係があるのが気になります。

御存じかも知れませんが、高田純が主催する「シルクロード科学倶楽部」なるニセ科学サークルの副会長は、在特会界隈の有名人である「おつる」こと中曽千鶴子です。この人物は、立ち枯れ日本の「かけはし塾」第1期生でもあるどうしようもない差別主義者。


>“昭和天皇が原爆開発を止めさせた”

アメリカが原爆を開発するのに国家予算の20%(日本の国家予算の3倍)を使ったことを知っていれば、一発で与太話だとわかる話ですよね。

ApemanApeman 2011/11/03 21:54 machida77 さん

「杉山メモ」にはないエピソードという時点でまともな人間なら信用しないはなしですよね。天皇制護持派にとってむちゃくちゃに都合のよい話が事実であるなら、きちんとした文書に記録が残ってないわけがないですし。

赤猫さん

>在特会界隈の有名人である「おつる」こと中曽千鶴子です。

はいはい、あの人ですね。まあしかし、これほどまでに政治性を露骨に表現している高田教授は、御用学者としてはわかりやすい分ありがたいとも言えますね。信用できるかどうかを苦労して見極める必要がないので。

>アメリカが原爆を開発するのに国家予算の20%(日本の国家予算の3倍)を使ったことを知っていれば、一発で与太話だとわかる話ですよね。

エントリ中で言及したダワーも指摘していたことですが、研究者自身が実現可能性をまるで信じていなかった水準でしかないですからね、日本の原爆研究は。

TeruTeru 2011/11/03 22:47 >研究者自身が実現可能性をまるで信じていなかった水準でしかないですからね、日本の原爆研究は。

一定の米国側開発情報を入手していた一方、投入予算が桁違いに小さかった日本側ですから、
もし本当に「新型爆弾」の投入を防ぎたければ、最善策は早期停戦と言う事になるでしょう。
(そもそも、非人道的と言うなら、その後の本土決戦策の続行が不問なのがおかしい。)

技術面で言えば、日本側はウラン濃縮の試みに留まっており、
核を超兵器(放射能の影響を軽視していた当時では、一発で巨大な爆発力)足らしめる為に必要な、
「臨界」制御方法について、アメリカ側が複数の方法を理論構築から実用化まで行ったことと対照的です。
付言するなら、米独らと異なり、
日本は核兵器の輸送手段(要求される、核の小型化の程度に密接に関わる)については、
(wikiも含め)検討すらされていないようです。

現代の途上国ですら、核保有を企てる際には核物質の濃縮と臨界制御(更にはミサイルなど輸送手段)をセットで進めますから、
いくら黎明期とはいえ、WWIIの日本の核開発に対外的な政治的影響力
(それこそ人類滅亡とか考える余地)があったかは、
(ドイツのそれが実態以上に恐れられていたとはいえ)それ自体疑問の対象でしょう。

ApemanApeman 2011/11/03 23:06 Teru さん

>(そもそも、非人道的と言うなら、その後の本土決戦策の続行が不問なのがおかしい。)

そうですね。サー・義郎が自慢げに紹介している特攻作戦(計画)の数々など、非人道性において原爆とどれだけ違うのか、と。

>日本は核兵器の輸送手段(要求される、核の小型化の程度に密接に関わる)については、
(wikiも含め)検討すらされていないようです。

昭和天皇なら「ハワイへの投下は許さん」という以前に「どうやってハワイまで行くつもりか?」と下問したんじゃないですかね。万が一日本軍が原爆の使用を構想したとすれば、自国民の被害も折り込んで本土決戦で使用、ということになったのは明白ではないかと思います。

>いくら黎明期とはいえ、WWIIの日本の核開発に対外的な政治的影響力
>(それこそ人類滅亡とか考える余地)があったかは、
>(ドイツのそれが実態以上に恐れられていたとはいえ)それ自体疑問の対象でしょう。

ダワーによれば、日本の原爆計画を過大評価することは戦後のアメリカにとっては原爆の使用を正当化する一助にはなるみたいですが、当時における影響力についてはご指摘の通りだと思います。

坂本真一坂本真一 2011/11/04 20:36 日本の原爆開発については「ザ・スクープ」で特集を組んでいました。研究に関わった人たちによれば「たぶんできないだろうと思っていた。」と口をそろえて言っていっていたはずです。ちなみにウラン採掘をしていた場所の一つが福島県石川町です(福島第一原発から南西に約60キロにある)。書籍では最近復刊された「原子力の社会史」(吉岡斉:朝日新聞社)のはじめに詳しく記述されていたはずです。

第4回「真の近現代史観」優秀賞(学生部門)のやつもざっと見てみましたが、題名から予想できる内容です(「NHKスペシャル/シリーズ・JAPANデビュー」にいちゃもんつけてた連中の「主張」とまったく同じ)。私とほとんど歳が同じなので非常に情けないやら馬鹿馬鹿しいやらです。「台湾好き」の定番なのか

>台湾の場合は前述の通り、経験に基づかれた事実をありのままに語り、その叱咤は日本への激励に繋がるものだ。しかし南京大虐殺や、いわゆる従軍慰安婦といった根も葉もない「事実」を「叱咤」する中国・韓国は、決して日本を「激励」するわけではない。

などと「慰安婦」否定論をほざいています。「霧社事件」をネグっているし、台湾立法府が2008年に「台湾立法院の「慰安婦問題の迅速な解決を日本政府に要求する」決議文」を出しているのですがこの人は知らないようです。あと確か駒込武氏が「季刊前夜」第7号に書いた記事にありましたが大規模な労働争議があって、それに布施辰治が労働組合側に与したという事件があったはずです。

坂本真一坂本真一 2011/11/04 20:47 追記:駒込武氏の所論については〔パネルディスカッション報告〕台湾史研究の動向と課題http://www.jats.gr.jp/journal/pdf/gakkaiho011_09.pdfに書かれています。

これによると、布施辰治は1927年に「二林事件」という労働争議に弁護士として台湾に来たということだそうです。

rawan60rawan60 2011/11/04 22:35 坂本真一さん

>日本の原爆開発については「ザ・スクープ」で特集を組んでいました。

そういえば私も見ました。
財政的、技術的展望がまったくないのに、それらしい物理学者をあちこちから集めてきてチームの形だけはつくる。で、実質的には軍が事情の知らない作業者に宝探しのようなウラン採掘をやらせていただけ……といった感じでしたっけ。

TeruTeru 2011/11/04 22:37 >時間があったら読んでみてもいいのですが、まあ時間の無駄ですね。

今回の「負けていない」本文自体、
仮に”仮想”戦記としてネット上で公開されたとしても、
コメント欄が開放されていたら、相当数「突っ込み」を受けそうです。
(例えば、特攻兵器のうち回天・桜花には言及せずに、
人間が爆雷を持つ「伏龍」は「上陸用舟艇を爆沈」できるとする辺り、救いがたい。)

ただ、こちらのコメント欄の指摘を理解する上では、
最低限「負けていない」本文が
>「出来た原爆の第一弾をハワイに落とす作戦を杉山参謀総長は陛下に上奏したが、
>陛下は「原爆という非道なものは使うべきでない。 」
が、史実である「と思われる」と主張している点だけは把握しておく必要があります。

この「と」主張に対する「突っ込み」が、
1.日本側原爆計画は、実用段階には遠かった(予算の隔絶・遠路の輸送手段の検討なし)
2.戦後の天皇護持に効く話が、なぜ出てこなかったか(参謀総長だった「杉山メモ」等)
といった事になるでしょう。

>台湾の場合
極東国際軍事裁判時点での中国政府代表は「中華民国」とされ「戦犯」に関わる主張もしましたし、
現台湾の行政府の由来及び自称は・・・という話は半ば故意にしないのが定番のようです。
その割に、戦後すぐの中華民国が戦時賠償で旧日本軍の軍艦を持っていった話などは、
そのままwikiに書かれていたりします。

この「台湾」観のルーツは、
東西冷戦対応上、戦後日本政府が「中華民国」をしばらく大陸の代表扱いしていた当時の世界観が、
そのまま(”邪悪”な東を、西の身内陣営で、軍事的にも叩こうという)
願望論として継承し続けているのだろうと思っています。

fnorderfnorder 2011/11/07 11:25 ところで、歴史学者や学会が批判しても、この手の行為は止められないと思いますが……

rawan60rawan60 2011/11/07 14:57 >歴史学者や学会が批判しても、この手の行為は止められないと

「批判しても止まらない」ことが「専門家として批判しないこと」の理由なんですか?
それって専門家としての業績が無視され蹂躙されることを容認するってことですよね。ならそもそも存在意義がありません。

ApemanApeman 2011/11/07 17:43 >ところで、歴史学者や学会が批判しても、この手の行為は止められないと思いますが……

だったらあなたも「御用Wiki」について文句言わなきゃいいのに。
「御用Wiki」を糾弾している黒木玄氏が「御用一般人」が云々と吹聴し、
http://real-japan.org/2011/11/02/625/
http://real-japan.org/2011/11/03/629/
なんて与太話を放置しているわけだから、「止められないと思いますが」も何もないですわな。

TeruTeru 2011/11/24 21:39 >「どうやってハワイまで行くつもりか?」

”国産原爆”の輸送手段に関連して、
http://gallerytondemo.blog.shinobi.jp/Entry/122/
出雲井晶『昭和天皇』(日本教文社・1996)では、
「ロケットの燃料製造過程で誤爆事故が突発。天皇陛下の耳に入った。」なる記述があるそうです。

これは、時期からしまして、ロケットはロケットでも戦闘機に使おうとした「秋水」の件を、
後世の聞き手が願望ベース(もはや共通するのはロケット技術の応用である点だけ)で、
「弾道ミサイルの類」と解釈したのではないかと思えます。

ApemanApeman 2011/11/24 21:55 Teru さん

>「ロケットの燃料製造過程で誤爆事故が突発。天皇陛下の耳に入った。」なる記述があるそうです。

その点は私もその後確認いたしました。「弾道ミサイル」なら誘導装置も開発しないといけないわけですが、その点についての言及が一切ないあたり、ガセネタにしても底が浅すぎますね。そんなものを信じる理系研究者って……。

TeruTeru 2011/12/10 08:00 >誘導装置も開発しないといけないわけですが、その点についての言及が一切ない

ちょうど、NHK BSプレミアムの「執念!純国産大型ロケット開発 苦難の歴史を乗り越えて」で、
http://www.nhk.or.jp/space/program/cosmic_1129.html
ロケット用小型超高速ターボポンプと並んで時間を割いて紹介されていた「国産独自技術」が、
精密誘導用の「レーザージャイロ」でした。

もっとも、この番組ではNHKの主題が「国産技術開発者を称える」だったようで、
戦後GHQによる航空技術開発禁止を武装解除映像(それも軍用機を燃やす占領軍)つきで流しながら、
GHQを警戒させた、日本側のロケット「秋水」戦闘機開発には一切触れていませんでした。

戦後のH-IIロケットも軍事転用可能技術と見なされているし、現に情報収集(偵察)衛星打ち上げにも利用されているのですが、
他局の「南極物語」ドラマ同様、主題の外となると関心外になる場合があるようです。

この点、「レーザージャイロ」の実物映像や基礎研究資料で「ぼかし」を多用していた事から、
製作側は軍事転用できる秘匿すべき技術と知りつつ、指摘を省いたのだと分かってしまうのが残念でした。

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