『優生学と人間社会』を読んで

優生学と人間社会 (講談社現代新書)

優生学と人間社会 (講談社現代新書)


優生学という言葉をはじめて意識して聞いたのは、数年前のことだと思う。
もちろんこの語自体はもとから知ってはいたが、「戦前のこと」であり、おぞましいことだが過去の話であると思っていて、それが現代に復活しつつあると聞いて(実情は、それどころではないわけだが)、奇異の感を抱いたことを覚えている。
この本を読むと、「優生学」の過去と現在についてのそうした思い込みは、まったく誤っていたことが分かる。戦後の日本社会においても、ずっと「優生保護法」という名の法律が存在してきただけでなく、優生思想は、根本的に否定されることのない考えであり続けてきた。
だが、そればかりではない。

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