グエイ公園の構造

これらの道路は山を切り開くのではなく、ガウディのいうように、そこから出た石によって築かれた陸橋の上につくられたものであった。それは自然を切り崩すのではなく、自然の一部と化すようなガウディのデザイン理念を示したものであろうし、一方には経済的な合理性というものが追求された結果であろう。つまり主正面階段,市場などの建設時に出た石を捨てることなく、加工もほとんどせずに傾斜面へ積み上げることによって再利用したのである。しかもその斜面を垂直に切り立てることなく、そのまま残しその傾斜をヴォールトで持ち上げ、傾斜柱へと受け継がせて構築しているのである。これこそ傾斜地の土圧を最も合理的に、つまり経済的に受ける方法である。陸橋の基本的構成はこのようであるが、現場のそれぞれの状況に合致した方法で築かれているため様々な様相を見せているのである。しかしそれぞれの陸橋の下部、つまり傾斜列柱の部分はアーケードとなっていて、夏の陽光に煩さわされることなく、夕立に煩わされることなく散歩できるようにという温かなガウディの配慮がされているのである。彼はこう言う。『ものをうまく創るに必要なのは、第一にそれへの愛情、第二に技術です。』
技術的にはグエイ公圍でスペイン初の鉄筋コンクリート構法を使ったガウディである。門番小屋と運営事務所の屋根、また市場の天井スラブなどにそれは使われたが、現在分かっている運営事務所の十字の付いている塔の構成をみると、それは中空になっていて、まず四センチ厚のれんが、そのうえに径10ミリの鉄筋を組んだコンクリート膜が作られ、更に三枚の舗装用のタイル、そして螺旋を描く外形をモルタルで形造り、最後に装飾のためと耐水のための白と青のモザイクが張られている。
ガウディは『鉄筋の構造物は最も合理的なのです。というのもすべての建物は振動と解析困難な運動に委ねられているからです。』とイ言い、その基本的な性格を理解していた。丁度同時代トニー・ガルニエTony Garnier(1869〜1948年)はその産業都市計画(1901〜1904年)で鉄筋コンクリート構造の大胆な使用とその新材料にふさわしい形態的機能性のスタイルを提示して、結果的には我々はかなりの歳月をガルニエの追随に費やすことになるが、ガウディの彫塑性に優れた材としての鉄筋コンクリI卜のここでの認識は、1920年代に中欧で開発し始められる膜構造にほぼ20年も先行しているのである。つまりガウディの形想の彫塑性とは、言ってみれば構造的革新に連なっているのである。例えばサグラダ・ファミリア教会のアプス周壁の折板構造、同付属学校のシェル構造、コロ ニア・グエル教会の転倒したサスペンション構造、あるいは様々なところに使われたメンブレーン構造など、強烈な形態にはこうした構造的革新がつきまとつているのである。


広場のスラブはプレキャスト・コンクリート

近年の修復工事で広場の土が取り除かれ、再び構造が現れた

下から見上げるとこのおわんが見える
2012年3月2日撮影