2011-01-02
【新春恒例企画】2011元旦新聞社説読み比べ
メディア |
※え、今までそんな企画はなかっただろ?、と仰る方、はい、数年来毎年の構想倒れだったものを今年は実施しました*1,*2,*3,*4。
元旦の社説は普段のものより扱いが重く、かなり吟味検討を加えるということを聞いたことがある。今年一年間、マスメディアの動向を見る上で、各紙の元旦社説を検証することは意味があるだろう。本稿では、『国政』『経済』『外交』『読者訴求力』の4点で全国紙の論説を比較・評価する。
【国政】
以下は、政権運営について。朝日は「政権交代の可能性のある(民主・自民)両党が協調する以外には、とるべき道がない」と述べているが、これはいわゆる“大連立”を主張しているのだろうか。また、与野党協議の対価として「たとえば公約を白紙に戻し、予算案も大幅に組み替える」ことを首相に求めているが、“予算組み替え”の中身が、相変わらず不明。例えば公共事業の更なる圧縮を求めるのか。その場合、地方経済の再生にはどう取り組むのか。具体案が見えない。
読売は「菅首相が衆院解散に打って出る可能性はきわめて小さい」ので「次善の策として、懸案処理のための政治休戦と、暫定的な(理念・政策優先の)連立政権の構築を模索すべき」と提案する。「1年、ないしは2年の期限を切った、非常時の『救国連立政権』とし、懸案処理後に、衆院解散・総選挙で国民の審判を問えばいい」という。ここは、もう一歩具体的な政界再編シナリオの提案に踏み込んで欲しいところ。
日経は「嫌われても嫌われても、必要な政策を断行するキャメロン英首相の勇気に倣うべきだ」("八方美人の政治は有害")とし、貿易自由化と農政改革を主張する。毎日は「菅政権はこれらの難題(=『消費税や財政再建』)の扉を開けて本気で取り組む必要がある。できないのであれば違う政権に期待するしかない」と傍観しており、無気力さを感じる。
【経済】
注目できるのは、毎日以外の三紙がTPP参加に触れていることだ。日経「貿易自由化で外の成長力を取り込む。伸びない産業よりも成長産業を後押しする」、読売「農業が開国を妨げ、日本経済の足を引っ張るようでは(主要農産物の自給確保は)本末転倒」、朝日「守るだけでは守れない。農政を転換し、輸出もできる強い農業をめざすべき」と、各紙。
日経は経済紙らしく、企業経営者にも目を向け、「技術力はあるのに、アップル、グーグルなど米企業に新製品や新サービスで先を越されている。また、何社もがひしめき、大型の研究開発や投資で外国勢に後れを取る業界も多い。保守的な経営が働き手の潜在力を殺してはいないか」と問うている。"保守的な経営"とは、攻めない経営ということだろう。
また、日経は「グローバルに活躍できる人材を育てるには、公教育や職業訓練制度の抜本改革も避けられない」と述べているが、「シンガポールのように外国の有為な人材を好条件で招くこと」と述べるのみで、提案性は低い。「世界で通用する人材」とは、どのような人材なのか?「強靱なメンタリティーとコミュニケーション能力を持った人」という経営者目線のお決まり解答しかないのかもしれないが、もう一歩踏み込んで欲しいところ。毎日も「重要なのは…人々の元気と底力を引き出す仕掛け人を生み育てていくことだ。」と述べているが、その具体策は述べていない。
【外交】
読売は、中国漁船衝突事件・メドベージェフ露大統領の北方領土視察は「日米同盟をおろそかにしたから」と批判する。一方、毎日は「日米同盟を揺るぎなくする一方で日中関係を改善すること」を“課題”に挙げている。日中関係の悪化は日本にも責任があるというニュアンスに、靖国“問題”を掘り返す意図を感じる。
朝日は外交面に全く触れていない。対米外交を論じるなら沖縄の普天間問題は避けて通れないし、対中外交を論じるなら、漁船特攻事件を避けて通れない。朝日路線の行き詰まりを反映していると読む。日経は「経済の地位低下が安全保障も脅かす悪夢を、日本人は尖閣諸島問題などでみた」と冒頭で触れたのみ。各紙とも、提案性が乏しい。
【読者訴求力】
日経が最も明快である。一部政治家や経営者の「日本は大国で簡単には負けない。改革、改革と叫ぶのは大げさ」という“向き”を“時代錯誤”と断ずる。一方で、物理と化学の専門論文の発表数や学習到達度調査結果を引き合いに、「(努力しても、そんなに豊かにはなれないという)あきらめもある…若い世代」には「それ(←『成長する努力』)を怠れば国の財政破綻などを通じ今の豊かさはやがて消える。過信もあきらめも捨てて、自らを鍛える志こそが大事ではないか」と、諭している。
「(公約の)財源が空手形だったことは隠しようもない。甘い公約は疑い、苦い現実を直視することが大切であることを、国民も学んだ」という。私は始めから政権交代に期待していなかったが、そんなことも分からないのが現実の民度だったことは、2009年の総選挙結果が示しているだろう。
毎日は、「私たち国民自身が問題をきちんと理解して立ち向かうことが必要である」との述べたのみ。
【総合評価】
■朝日
★★★☆☆
評価理由
「(日本の命運がかかる)一体改革も自由貿易も、もとは自民党政権が試みてきた政策だ」として、マニフェスト白紙撤回を明確に求めたことは評価できる。一方で、それ以外のトピックに具体性がない。
■読売
★★★★☆
評価理由
「消費税率上げは不可避」とし、全国紙の中で唯一増税を明確に主張した。マニフェスト白紙撤回も求めている。
■毎日
★☆☆☆☆
評価理由
歴史を引き合いに出すのは新春恒例の論説構成であり、今年は江戸時代の浮世絵版元、蔦屋重三郎(1750〜1797)にスポットを当てているが、長々とした解説はそれ以降の部分と殆ど関連性がなく、論説としての構成が悪い。近年の紙面崩壊ぶりを反映している観がある。
■日経
★★★☆☆
評価理由
マクロ経済統計値から読者に訴えかける構成は評価したい。一方で、経済紙の特質か、経済以外のトピックが少なすぎる。
■産経
落第
評価理由
去年と同様、本稿投稿時刻をもってしても未だアップされていない。ネットは二流メディアだと依然として軽視していると、考えざるを得ない。社説で他紙との差別化を図っている同紙だけに、大変残念である。
*1:同趣旨の記事がいくつかあります。読み比べてみてはいかがでしょうか。「2011年 元日の各新聞社の社説」(eaglei氏)
*2:同上「元旦早々国民のモチベーションをいきなり下げまくっている朝日・読売・日経社説の愚」(木走正水氏)
*3:同上「ブルジョア新聞の論調は極めて健康―2011年の元旦各紙を読んだら―」(リベラル21 半澤健市氏)
*4:同上「×朝日<△毎日<◎読売だろうね:2011年3紙元旦社説比較」(アラかん氏)


