2007-08-16
■[本]CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ
CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)
- 作者: 小寺信良,津田大介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2007/08/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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盆休み中に何とか読了。いやぁ、面白かった。っていうか、対談は読みやすくて良いなぁ。
クリエイティブ・コモンズ「表示-非営利-改変禁止」ということで、ドッグイヤーしたところを以下抜粋(冒頭数字はノンブル)。
021「僕は一年半実際に第2日本テレビをやってみて、今のところの収支の比重はやっぱり広告なんだろうな、って気はしています。Zassaは、松本人志というお笑い芸人の中でいうダントツの存在があって成り立った。『ガキの使い』や『すべらない話』のDVDがすごく売れてる、お金を出してでも見たい芸人がやるオリジナルコントが、このぐらいの価格で手に入るという点で。
ただ、やっぱり課金へのハードルは高いな。ネット上でカードをなんだとか、マックに対応していないとかいろんな問題があるでしょうし。あとは、ストリーミングで1週間見放題と言っても、期限が終了したらまたお金を払わなきゃいけないのね、という点も含めてね。これもまだ僕は発展途上というか途中にあると思う。iTSも、今のようになるまでは随分時間がかかっているわけだし。
やっぱり主戦場は広告。でも、ラジオや雑誌やテレビやネットが広告の国内マーケットのパイを食い合うみたいなことじゃなくて、中国っていうマーケットだったり、国際マーケットに広げていくっていうことが、コンテンツを広告に結びつける方法だと思ってますけれどね。」(土屋敏男氏)
なんだよ結局広告なのかよぉ、という軽い絶望感。職業柄、絶望するところじゃないんだけど、まあ逆に「だからこそ」というか。コンテンツの未来にとって、広告がどういった関わり方をしていくかは非常に重大な問題であろう。
024「僕が思うのは、モノを作るシステムって、基本的にパトロンが必要なんですよ。クリエイターが食うに困らないようパトロンが援助して、音楽だったら室内楽みたいなものが発展したりした。文化みたいなモノは、パトロンシステムでしか生まれてこないんじゃないかって思ったりします。」(土屋敏男氏)
地上波テレビが過去パトロンシステムであったという話だが、今はさまざまなジャンルで「パトロン」という言葉が「クライアント」に全置換されている状況だろう。日和見で先細った文化の集大成というのが、今の日本を埋め尽くすコンテンツなのかも知れない。
043「この番組の場合は、リソースも出演者も「そういうことをやろう」っていう人たちを集めているんです。普通に芸能事務所を経由して、タレントに出演をお願いしてから「実は共有サイトに載せたいんですが」と交渉を開始するっていうスタイルだと、こんなにスムーズにはいかなかったんじゃないかな。」(草場大輔氏)
じゃあ芸能事務所ってなんなの。って脊髄反射的に思っちゃう。でも「リソースも出演者も「そういうことをやろう」っていう人たち」で仕事するってのは満足度が違うだろうし、悪条件だからこそ作り出せる一体感ってあるんだろうな。
070「VHSとベータマックスの規格競争においてVHSが勝利した最大の要因はアダルトビデオの存在にあるという説は、ある種の年伝説として世の中に流布しているが、家庭用VCRが普及した80年代初頭のアダルトビデオのカタログ雑誌をチェックすると、VHSもベータマックスもほぼ併売されていたそうだ」(脚注)
僕はビデオデッキ普及全般へのアダルトビデオの貢献度が高い、という風に曲解していた。本文中ではそういうニュアンスとも取れるけど。
123「なるほど。確かにライブへのニーズは高まってますよね。ACPCが公開している統計データを見ると、まさに音楽バブルが弾けた98年頃から公園数と入場者数が右肩上がりで増えているんですよ。
CD市場は98年の約60000億円から今は半額ぐらいまで落ち込んじゃったけど、ライブの入場者数は98年の1430万人から05年には2016万人まで増えたわけで、そういう意味では音楽業界全体の「アウトプット」が変わってきているのかなという気はしますね。」(津田大介氏)
実感で言うと、CDのみで観賞に堪えうるアーティストというのは、非常に少ない。ライブで真価を発揮する、というのは誠に結構だが、「生で観られればCD買わなくても充分」と思ってしまうこともある。リミエキが一度解散した時、真っ先に思ったのが「結局マトモなスタジオ盤が出なかった」だった。インディーズ勢力の寡占化は、全体のクオリティ低下に繋がっているかも知れない。いや、音楽業界全体のポテンシャルがそうなのかも。
141「映像の専門家の立場から言わせていただくとですね、映像がなぜ画質に対してストイックになれるかっていうと、止めて拡大できるからなんですよ。」(小寺信良氏)
このくだり、目からウロコ。
158「レコードが産業として勃興してきた50〜60年代はレコードもそれを再生するステレオセットも非常に高価な商品だった。高級品ということもあって、当時ステレオセットは宝石商や時計店など、単価の高い商品を扱う店で販売されることが多く、地方などで歴史の古いレコード店に「○○堂」という名前が多いのは、当時宝石商や時計屋だった名残によるものである。」(脚注)
なるほど。父が真空管アンプの設計士でありながら、全く知らなかった。いいんだよ音楽なんて音さえ鳴りゃ(嘘ですよ、お父さん)。
167「それは何かというと、「テレビってそもそもそんなに真剣に見るメディアじゃないんだ」ってことなんです。若い人とかに話を聞くと、家に帰ったら何となく音量小さい状態でテレビをつけておいて、まるでラーメン屋においてあるテレビみたいな感じで「おっ」って気になるニュースが目に入ってきたときだけ音量上げてみる人が多い。
それって今のテレビ番組がある種の「情報スクリーンセーバー」みたいなものになってるってことだと思うんですよ。」(津田大介氏)
「情報スクリーンセーバー」という例えはシャープだなと思った。マウス動かしてないと全画面表示する(動かすと小画面表示に切り替わる)TVチューナー……知らないだけで、既にありそうだな。
246「06年にトヨタが北米で新車を売り出した時、テレビのコマーシャルを打たないで、ネットだけでコマーシャルを流したら、かなり大きな売上げを記録しちゃったんですね。」(中村伊知哉氏)
いや、営業用のネタに使えそうだなと思って。
277「結局今は情報が特急列車しかないでしょ。だから各駅停車とか鈍行(笑)をどう作るかですね。そうすると車窓の風景も、駅弁売りの声も復活する。」(松岡正剛氏)
ネットコンテンツのあっけなさが持つ空虚感を解決するためのヒントのようなくだりだった。
298「そうそう、種を残しておく。だから「コピー=悪」じゃなくて、「保険」って考えはできないですかね。文化を守るための保険。文化が死なないためのね。」(津田大介氏)
あとに続く小寺氏の発言をもじってみると、「そのまま残らなくても良いんですか」。いや、いいんだよ、僕は残らなくて。って話。
……その他、色々示唆に富んだ話が沢山あった(江渡浩一郎氏の話は、コンテンツビジネスとは別の意味で面白かったので、「アートとは」で取り上げてみようかなと思う)。松岡正剛氏の章は、あまりのカタカナ言葉の多さに辟易としたけど。
読後感としてあるのは、「ウェブコンテンツの可愛げの無さ」。これが、レガシーなメディアや団体から毛嫌いされる原因なんじゃないかという気がしてきた。
コンテンツの未来は、「可愛いかどうか」だ。違うけど、違わない。
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