市川崑・石坂浩二『悪魔の手鞠歌』


やっぱり金田一耕助シリーズは市川崑石坂浩二ものが好き。
最近また『犬神家』を石坂浩二で映画化したそうで、その関係でふるいのをTV放映、という流れですな。

昭和初期とか、終戦直後の、暗い日本と、因習的かつ陰惨な、イナカの、ジケンが、もっとも濃厚に描写されてる点では市川崑のシリーズが一番だ。自分が見慣れた年代だってこともあるだろうけど、やすっぽいホラーより真実味があってずっと怖いのは、なんだろう。

ひどく残酷な殺人がおこったりしているのに、連続殺人の恐怖がまだあるのに、ちゃんとみんなでその都度、喪服着て、親戚一同集まって、お葬式をやるところとか。首ちょんぱしちゃったりしてる、とんでもねえ無惨な死体を前にして、あーでもない、こーでもないと、よってたかって冷静に推理しているあたりとか。こういうのはなんか、ぢわぢわくる恐怖がある。

「あ〜、綺麗な女優さんの歪んだ顔を撮りたいんだろうなー」というかんじの最近のホラーとちがって、「死ぬってのは、こういうことなんだ」という主張があるように思う。

その含んだ憂いがいっつも尋常じゃない岸恵子に、はらちがいの娘がじゃんじゃん殺されちゃう。
この娘たちのお母さん3人が、また異様な群像なんだけれども、3人並んで行儀よく推理を聞いてるあたりとか、コミカルであるほどに、怖い。

そうそう。風来坊のお父さんが「恩田」ってんだけれども、あの『やっぱり猫が好き』の「恩田3姉妹」はこのへんが由来らしい、とどっかで聞いたことがある。

ああ、そういやあ今年は『かもめ食堂』も傑作でした。
邦画もなかなか捨てたものではない!