第35回日本眼科手術学会について by B

先週末の名古屋での手術学会に参加いたしましたので報告いたします。

率直な感想と致しましては、演題が年々減少してきて、なんだかワクワク感に欠ける学会でございました。

今回の私のテーマは、「白内障手術関連は、JSCRSでたっぷり情報を収集出来るので、白内障以外の手術の知識をアップデイトしよう!」としておりましたが、さして目を引く演題はございませんでしたねぇ。

私がアップデイトしたかった手術は、一つは翼状片手術です。眼科手術開業をして、早数年が経過いたしますが、翼状片手術件数が結構増えてまいりました。特に比較的若い年代の翼状片は、どこの病院・クリニックでも手術をしたがらないらしく、私が引き受ける形になり、やっているうちに口コミで広がったのか、結構遠方からも手術を受けに来られます。

基本的な私の術式は、研修医時代に習った、「翼状片頭部切除+MMC塗布」です。自分の成績では完全再発はなし、わずかに再発っぽいのが2例ほどあるだけで、悪くない成績だと思っております。とは言え、さすがにあれから10年以上経っておりますので、もっと良い(簡便かつ再発しない)手術法はないかな〜と思っているわけでございます。

しかし、そのような演題は皆無でしたね・・・。(-_-)

緑内障手術はチューブシャント手術のシンポジウムを興味を持って聞いておりましたが、術後眼圧が15〜22mmHgとかで、レクトミーと併用することも多いらしくまだまだ今一つのようですねぇ。まぁ、超難症例に限ってやるので、そうなってしまうのでしょうが・・。少なくとも、Bのようにたまにしか緑内障手術をしないクリニックが手を出すような状況ではなかったです。トラベクトームなどにも興味があり、その長期成績などの発表があれば是非聞きたかったのですが、なかったようです。緑内障学会にまで行かなければそういう情報は得られないのでしょうか。

当院の場合、網膜硝子体手術に関しては、専門の先生にお任せしているので、基本的には興味なし。ただ、現在使用しているCV24000号の寿命がいつ尽きるかはわかりませんので、念のため、B社星野号のコンバインタイプについての情報は仕入れておこうと、ランチョンを聞きました。

悪くはなさそうですが、認可が取れたばっかりで、ランチョンでは豚眼に使用したさいの動画しかなく、なんだか消化不良でした。

噂によると、A社のコンステの評判がイマイチなようですので、B社は気合が入ってるようですね。トプコンと販売に関して業務提携を結んでいたのには驚きました。とっても良いことだと思います。和製N社のF号がコケている現在、A社一人勝ちでは面白くないですし、硝子体手術マシン業界としても、さすがに1社独占では発展が望みににくく、値段的にもA社のいいなりに成りかねません。ここは、なんとかB社に頑張ってもらいたいところです。

実際の臨床の講演がイマイチ盛り上がりに欠けたのに対し、盛り上がっていたのが、器械展示でございました。いや〜、凄い時代になってきましたよ〜。

Bの目が釘付けになったのが、JFCが販売する「サージカルガイダンスシステム」→http://www.surgery-guidance.com/en/home.html

学会に行かれなかった先生は、是非、リンクのHPをご覧ください。SMI社は、レーシックのアイトラッキングシステムのほとんどを作成している会社らしいですが、その技術を使って、白内障術中にアイトラッキングを行い、乱視軸(強主径線)を顕微鏡上で表示するので、トーリックIOLの際、マーキングをする必要がありません。また、トーリックIOLを使用しない場合も、強主径線が表示されれば、正確な強主径線切開を施行することが出来、医原性乱視を乱視矯正の強みに変換することが出来ます。これなら、必死こいて効率の悪さを感じつつ2.2mm切開で手術をしなくとも、むしろ乱視矯正効果を考えるならば切開創は大きくても良いのですから、2.4mm〜3.0mmでやった方が良いということにもなります。

極小切開ブームのほとぼりは冷めかけてますが、次のトピックは「正確な強主径線切開によって乱視をゼロに近づけるオペ」が主流になるんじゃないでしょうか?

また、CCCも正確な正円が表示されます。それだけなら、CCCマーカーを使用しても同じような気がしますが、ところがどっこい、アイトラッキング技術によって瞳孔中心を正確に認識しての正円ですので、患者さんが目をキョロキョロ動かしても、円もついていきます。

これも、次世代の調節機能付きIOLが出れば、非常に重要ポイントらしいので、有用ですね。

まぁ、実際に使用すると使い勝手の悪いところもあるそうですが、近未来の白内障手術においては欠かせないアイテムであると直感いたしました。

欲しいっす。欲しくてたまらないっす。

所が、気になるお値段ですが、定価で960万円(980万円だったかな?)とのこと・・・。もちろん、このシステムを使用したからといって、点数上乗せがあるわけがないので、完全な持ち出しとなりますね・・・。う〜む。真剣に宝くじ買おうかな・・。

取りあえず、デモはさせてもらえるようにお願いしてきました。使用すれば、当然、このブログで報告いたします。

あと、無散瞳非接触で200度までの眼底が撮影できる、おそろしい器械も中央産業から発売されてました。画像も見ている限りでは鮮明で、こんなのが出てくれば、近い将来、倒像鏡で眼底を見ている風景は過去の遺物になってしまうかもしれませんね。かつてのスキアのようになるでしょうね。

ようやく、導入を考え出した電子カルテ部門でも、「これなら使ってもいいかな〜」と思えるものにも出会いました。これに関しては、また別の機会にまとめて報告出来ればと思います。

しかしながら、A先生と学会場でお茶をしている時にも話されておられましたが、点数がさほど変わらず、むしろ低下するのではないかとコチラは怯えているのに、周辺機器はドンドコ進化をし、また機器の値段も恐ろしい値段のモノばかりです・・・。ハイテク機器を買って、より良い診療を行おうと思っても、入ってくる収入が少なければクリニックはやっていけません。

国民が本当に高度な、より侵襲の少ない医療を受けたいと思っているのなら、もっと医療費を増額し、クリニックが潤うようにならないと無理でございます。まぁ、おそらく、ここ最近の流れをみると、高齢者増加分に対応するだけで精一杯ですので、そのようなことは夢物語ですね。無理ならば、混合診療を導入し、高額な機器を購入しているクリニックは、手術代金にその使用料を上乗せして請求できる形にして欲しいですね。

という訳で、「手術学会」と言いながら、器械展示の方が目立っていた学会でございました。

個人的には、せっかく「手術学会」と銘打っているのだから、たとえば、世界の達人といわれている先生のライブサージェリーや、その先生の細やかなこだわりを披露する講演、また、たとえば、これまたワールドクラスで、術後眼内炎予防に命を懸けているクリニックの取り組みの紹介など、普段、診療所に居るだけでは、見ることの出来ないモノを見せてくれれば、行く価値があるのにな〜と思います。正直、普通の演題を聞くだけならば、「あとで学会誌に目を通せばいいや」となりますし、ネット上で結構情報も得られますからねぇ。

ユビキタス社会の到来により、学会のあり方も見直さねばならない時期に来ているような気がいたしました。本日は以上でございます。ご意見あればコメントをお願いいたします!