3D小説 岡田アユミ

2013-05-04

Scene27 11:45〜 3/4


 濃密な記憶の中に、私はいた。
 あの半年間がこれまでの人生の大半だったように思った。
 こんな時なのに、ぼんやりとジオラマを眺める。
 ――どうして。
 ふいに、怒りが湧いてきた。
 ――どうしてこれの写真が、トレインマンに届くの?
 嫌だ。あの半年間だけは、あの半年間に関する物だけは、誰にも汚されたくはない。
 私はジオラマをじっくりと観察する。
 建物の1つ1つを、道路の1本1本を、いちいち疑った。
 トレインマン。その名前のせいで、駅と線路は何度も確認した。
 でもおかしなところはどこにもない。細部まで丁寧に作り込まれている、とても精巧なジオラマだと、改めて感心しただけだ。
 ジオラマが入っているガラスケースにも、埃の溜まった足元のスペースにも、やはり疑問点は見つからない。――いや、1つだけ。見つかったものがあった。
 ガラスケースの下、木製の台座に、ささやかに、小さなプレートがついている。
 元々は金色のメッキだったのだろう。けれど、それは所々剥げ、傷痕みたいな茶色い錆が目立つ。
 そのプレートには、制作者の名前があった。

『黒崎正吾』

 そうだ。
 どうして、忘れていたんだろう?
 このジオラマは彼のお父さんが作った。
 あのとき、私がお父さんのことを聞いたから、彼はここに連れてきてくれたのだ。

 誇らしげに、
 ――結構、良くできてるよな。
 そう言った彼を、ようやく思い出した。


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