No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2013年11月4日 よろにく


自分でも信じられないことだが2ヶ月以上も"よろにく"のお任せと離れてしまっていたようだ。
そして今回のお任せが久しぶりだということを差し引いても、その感動は唯一無二の頂点ということを再認識させられるものであった。
まずは和食のお店にきているのかと錯覚してしまうような松茸と春菊のシルクロース巻きから。
春菊の苦味が前面に出て他の食材の存在感を薄めがちだが、それでもシルクロースの甘みが感じられる。

カイノミはレアに焼き上げ、前菜としての役割をきっちりとこなしてくれる。
特にこのカイノミの滋味深い味わいは肉好きのテンションを一気に最高潮に運ぶのに十分過ぎる。

最初の前菜もそうだが"よろにく"の恐ろしさは、世間一般で想像できる焼肉屋さんの範疇を超えた引き出しの多さにもある。
特にハラミと柿の組み合わせは、柿の甘みがより一層ハラミの存在感を高め、素晴らしいマリアージュを見せてくれる。


タンですら一筋縄ではいかない。
薄切りのタン元を片面じっくりと焼き上げ塩昆布を乗せると、タンの肉汁と昆布の塩気と旨みが一体となって、絶妙な味わいを完成させる。

とは言え"よろにく"は焼肉屋さん。
当然の事ながらベーシックな焼肉も最高だ。
というか、このベーシックな焼肉という角度で見ても、この"よろにく"を超えるお店を私は知らない。
さっぱりとしていながら風味豊かなカメノコ。

空気を包み込んだような食感のシャトーブリアン

アクセントをつける塩味のミノは、思わず小躍りしたくなるような心地良い食感。

清楚な女性を彷彿させるミスジ

ただサシの入ったサーロインとは、コクと後味で一線を画す最高のシルクロース。

コースの中盤には口直しのお吸い物があるのだが、この日はコプチャンと松茸の土瓶蒸し。
時期も終わりかけながら松茸は豊かな香りを広げてくれ、一口口にすればコプチャンのコクもちゃんと感じられる。


土瓶蒸しも最高なのだが、松茸と言えば"よろにく"の最上級のサーロインが外せない。
サーロインが松茸の香りとエキスを吸い、松茸がサーロインの肉汁を吸う。
この絡み合いが信じ難いほどのレベルを作り出すのだ。


今では他のお店でも見かけるようになった卵の黄身をつけるすき焼き風の焼肉も、元々はこの"よろにく"発祥ではないのだろうか!?
口の中で蕩けていくザブトンの甘みと黄身のまろやかさの出会いは運命と言える。

ここまで脅威のお肉料理が続いたが、〆にもしっかりとお肉が。
それはなんと松茸ご飯のシルクロース茶漬け!
最初は松茸ご飯を楽しみ、2杯目は松茸ご飯の上にシルクロースを乗せ出汁をかける。
残念ながらこれは食べた人にしかわからない。
いい大人が心の中で狂喜乱舞するほどの旨さだ。





一体どうしたらこんなコースを組み上げられるのだろうか。
"よろにく"には、肉好きの尽きることのない欲求を遥かに上回るポテンシャルがある。