No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2014年2月25日 IDEA 銀座


前回訪問から1ヶ月。
炉窯で焼かれたヒレやタンの旨さに驚かされた中で、唯一サーロインの脂の重さだけがちょっと気になったところ。
"IDEA"では神戸の"あら皮"を意識しており、神戸牛・但馬牛をメインに炉窯でステーキを焼いているのだが、但馬牛は子牛の段階で雌牛が松阪や近江の有力な生産者方に多く買われていくため、神戸牛は雌に比べて去勢の割合が非常に高い。
これは同時に神戸牛の雌を仕入れることの難しさにも繋がる。
単純に量が少ないだけでなく、量が少ないことは高品質の確保が困難ということだ。
こういった理由が重なり、前回"IDEA"で食べた神戸牛は品質を確保しやすい去勢で、その去勢の特徴である脂の重さを感じやすい個体であった。
食後には一宮さんと色々とお話させていただいたという経緯があり、今回は一宮さんから雌の神戸牛を仕入れたという連絡をもらったのだ。
見せていただいたサーロインは、肉色は味の濃厚さを想像させるほど濃く、旨そうな雰囲気を醸し出している。

そしてサーロインは丁寧に串を打たれ、いよいよ炉窯に投入される。
時には断面を備長炭にくっついてしまう位近くに置き、時には炉窯内の端っこで肉を休ませ内部に眠っている旨みを起こす。

焼き手の真剣な眼差しの先にある肉はじわじわと極上のステーキへと変貌していき、テーブルに運ばれてきた時には生唾を飲み込む塊になっていた。
切り分けると断面はルビーのような輝き。
コクのある旨みと滑らかな舌触りを体現した見事なサーロイン。
脂の重さも感じず、1人で400gを食べてしまうほど。


一宮さんの高い志、生産者へのリスペクトが"IDEA"のステーキを進化させる。
これからどこまで突き進むのか、肉好きは刮目せねばならない。