No Meat, No Life.

横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。

2016年2月2日 たきや


関西を中心に馴染みの深いビフカツの旨さに異論を挟む者はいないだろう。
これが牛肉の天ぷらになるとどうだろうか?
食べたことのある人は少ないと思うが、正直あまり旨そうな想像が出来ない。
しかしそれは思い込みにすぎない。
天ぷらに合う牛肉、火の入り具合、香りや旨みの膨らみ等、全てを計算し尽くした笠本さんが揚げる牛肉の天ぷらが恐ろしく旨い。

天ぷらでありながら、衣をつける前に塩胡椒が振られるが、これが味のインパクトを与えているのではないだろうか。
そして牛肉にストレスを与えずにふんわりとした火入れを可能にするのが表面に巻かれた紫蘇。
寸分狂わぬ絶妙な揚げ加減。
緻密なアプローチの結晶は、牛肉好きを虜にするシャトーブリアンの天ぷらとなった。


今回は2度目の訪問だが、初回を軽く超える感動がそこにある。
一事が万事。
他の食材に関しても「なんとなく」という仕事が一切ない。
全てが理論に裏打ちされた完成度をみせてくれるのだ。
人生をかけて天ぷらに向き合っている職人・笠本さんが昇華させる最高の食材。
天ぷらという新しい世界で牛肉の可能性が広がっている。