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2005-08-10

2つの大輪を咲かせた花の女神〜アグネスフローラ

| 18:06 | 2つの大輪を咲かせた花の女神〜アグネスフローラを含むブックマーク 2つの大輪を咲かせた花の女神〜アグネスフローラのブックマークコメント

8月8日、名牝アグネスフローラが死亡した。2ヶ月前に最後の産駒となったダンスインザダークの牡馬を出産後に蹄葉炎を発症し、治療の甲斐なくこの世を去った。アグネスフローラは、母にオークスアグネスレディーを持つ良血馬で、自身は無敗で桜花賞を制した名馬であり、母としても2頭のクラシック馬を輩出しているという非の打ち所のなさで、日本競馬史上稀に見る名牝といってもいい。今回はこの稀代の名牝の一生を振り返ってみたい。

アグネスフローラの曾祖母*ヘザーランズは名馬Ribotなどを出した名種牡馬Teneraniを父に持つ英国産馬で、その祖母は英オークス馬Light Brocadeという中々の良血馬。現役時代は英国で走り未勝利に終わっている。この*ヘザーランズが1967年に日本に輸入された際にお腹にいたのが、ジャックルマロワ賞の勝ち馬Sallymountを父に持つイコマエイカンだった。イコマエイカンは競走馬としては1勝のみに終わったが、繁殖牝馬として初年度から*リマンドを付け続けられて、次々と活躍馬を送り出す。初仔のグレイトファイターが小倉大賞典など地方も合わせて14勝をあげ、1つしたの全妹クインリマンドは桜花賞でテイタニヤの2着。3番目の全弟タマモリマンドも京阪杯を制した。

そして4番目の*リマンド産駒がアグネスフローラの母となるアグネスレディーである。アグネスレディーは、アグネスフローラを手掛けた長浜博之調教師の父である長浜彦三郎調教師の元で研鑚を積み、オークスを制した他、古馬になって京都記念朝日CCで牡馬相手に重賞を勝つなど大活躍した。イコマエイカンと抜群の相性を示した*リマンドは、現役時は平凡な成績だったが、日本で種牡馬入りするやオークス馬テンモン、ダービー馬オペックホースなどを送り出し大成功した名種牡馬。ちなみに、アグネスフローラの主戦だった名ジョッキー河内洋騎手の最初の大レース勝ちはアグネスレディーのオークスで、その孫のアグネスフライトで悲願のダービー制覇を達成、その弟アグネスタキオン皐月賞が最後のG1勝利となった。アグネスレディーの血統は、まさに河内騎手の歴史でもある。

アグネスレディーは引退後にMill Reefを付けるために英国へ渡っており、翌年生まれたMill Reefの初仔ミルグロリーは大きな期待を背負っていたが、故障のため不出走のまま引退している。良血を買われて種牡馬入りするも、残念ながら繁殖牝馬にも恵まれず、道営の金杯を勝ったダービーベンドを出した程度に終わっている。その後も思うように成績の上がらないアグネスレディーだったが、*ロイヤルスキーとの間に遂に大物が誕生した。それがアグネスフローラである。*ロイヤルスキーは、北米リーディングサイヤーのRaja Baba産駒で、ローレルフューチュリティなどを制した早熟のマイラー。米国で2年供用された後日本に輸入され、地方リーディングサイヤーとなったワカオライデンなどを輩出している。

アグネスフローラが生まれた翌年、母アグネスレディーを管理していた長浜彦三郎調教師がこの世を去った。長浜博之調教師の元にアグネスフローラがやって来たのは、師が父の跡を継いで間もなくのことだった。2歳12月の新馬戦を、母の主戦でもあった河内騎手を背に10馬身差で圧勝し、華麗にデビュー戦を飾ったアグネスフローラは、3歳になると、若菜賞でゴールデンアワーに3馬身差を付けて逃げ切り勝ち。続く不良馬場で行われたエルフィンSでもコニーストンに3/4馬身差で快勝し、桜花賞の前哨戦としてチューリップ賞に出走。ここでも楽に逃げるケリーバックを、好位を追走から楽々捕えて、1馬身半差で楽勝。デビュー4連勝でクラシックの大本命に踊り出た。

アグネスフローラが快進撃を続けていた時期、もう一頭の牝馬がクラシック候補として話題を集めていた。デビュー2連勝中で、こちらも母に桜花賞馬ハギノトップレディを持つ良血馬ダイイチルビーである。しかし、ダイイチルビーは抽選に漏れて桜花賞への出走を逃してしまう。最大のライバルが舞台から消えたことで、アグネスフローラは堂々の1番人気で桜花賞を迎えることとなった。それにしても桜花賞の舞台でアグネスフローラとダイイチルビーという良血馬2頭の対決は是非とも見てみたかったものである。結局、ライバル不在の桜花賞はアグネスフローラの独り舞台となり、いつものように好位をキープすると、先に抜け出したケリーバックをあっさり捕え、1馬身1/4差を付けて完勝。無傷の5連勝で桜花賞制覇を成し遂げた。同時にこれは、母アグネスレディーに続く母娘牝馬クラシック制覇という偉業でもあった。

母娘2代制覇のかかったオークスでもアグネスフローラは当然の1番人気。2番人気にはこちらも母娘クラシック制覇のかかるダイイチルビーが続き、桜花賞では実現しなかった良血対決が府中の大舞台で実現した。しかし、早いペースを好位追走から早めに先頭に立つ厳しい展開となったアグネスフローラは、後方待機策の伏兵エイシンサニーにゴール前差し切られ、母仔2代制覇、無敗の牝馬二冠という大記録は逃してしまった。ダイイチルビーは後方から伸びるも5着に終わっている。敗れたとはいえ世代ナンバー1であることを改めて証明し、秋以降の活躍が期待されたアグネスフローラだったが、この後脚部不安を発症してしまい長期休養を余儀なくされた。その後2年以上にも渡って復帰に向けて調整が続けられていたが、結局関係者の努力も実らず、再びターフに戻ることはできなかった。しかし、現役時代に完全燃焼できなかったアグネスフローラだったが、繁殖牝馬としては歴史的な成功を勝ち取ることとなる。

大種牡馬*サンデーサイレンスとアグネスフローラの間に産まれた4番仔のアグネスフライトは、日本ダービーエアシャカールとの壮絶な叩き合いを制し、母仔3代でのクラシック制覇という大偉業を達成。更にその一つ下の全弟アグネスタキオンも、無敗で皐月賞を制覇した。アグネスタキオンのパフォーマンスは強烈で、クラシック前から三冠当確とも言われたほどだったが、皐月賞を制覇した2週間後に屈腱炎を発症していることが判明し、母同様不完全燃焼のまま引退を余儀なくされてしまった。それでも種牡馬としては期待通り初年度から産駒が次々に勝ち上がっており順調なスタートを切っている。しかし、18歳でこの世を去ったアグネスフローラは、残念なことにアグネスセレーネ1頭しか後継の牝馬を残せていない。この偉大なラインの先行きが少々不安ではある。

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