2010-06-21
水夏 〜SUIKA〜 第3章「手首にある墓場」
7月20日
今日は茜と海へ行く前に病院でカウンセリングを受ける。用意周到な茜が事前に電話して診察の日をずらしてもらっていたのだ。
茜に……妹を欲しているようなんです。……その、ひとりの女性として
と、若林先生に激白する良和。そして、茜とエッチしてしまった夢のことも。しかし、カウンセラーは導師ではないので、どうすべきなのかは自分で考えなければならない。良和は、透子に対してインポになったことも話そうかと思ったが、それはやめた。若林先生は、かつて透子に恋していたことがあったのだ。
家に帰ると早速出かけることに。良和は少し休みたかったが、茜に強引に連れ出された。駅まで走る2人。ようやく駅に到着したところで良和の財布が落ちてしまい、中身が散らばってしまった。
お兄ちゃん、早く!
見知らぬ青年がお金を拾うのを手伝ってくれた。第1章の冒頭にあったシーンですな。この青年は彰。
病室へ。予想以上に回復も早く、小説を読むことも許された。一息入れて外の景色を眺めると、眼下には青い海が広がっていた。
ーー泳ぎたい!
アカネは強烈にそう思った。早速先生にそのことを伝える。すぐにでも泳ぎたかったようだが、さすがにそれは却下された。徐々に記憶も取り戻しつつあるようで、アカネは、これまで思い出したことをまとめてみる。
仲の良かった男の人と女の人がいて、アカネはその男性を好きだったが、多分振られてしまったらしい。趣味は水泳と小説。そして
男を魅了して止まない、この可愛さ
とおどけてみせる。先生にそれほど可愛いのにどうして男に振られたんだと突っ込まれ、きっと何か事情があったんだと切り返す。
なんつうの?ロミオとジュリエットみたいな、許されざる愛とか
2人は笑ってますが、そのギャグ、多分シャレになってないんですけどねw
1時間ほど電車に揺られて海に到着。早速茜の言っていた穴場に行ってみることに。途中に岩場があって、そこで浜辺が終わっているとみんな勘違いしていて人がいないらしい。
茜は水着に着がえると、感想を良和に求めた。可愛いんじゃないかと無難な返事をする良和だったが、茜は納得していない。例えばどんな?と聞くと
例えば……透子お姉ちゃんよりセクシーだ……とか
と言ってきたので
透子とお前を、比べたりなんかしないんだよ、俺は……
と返す良和だったが、茜の「それ、本当?」と言う言葉に、「ああ……本当だよ」と言いながらも、思わず視線を外してしまうのだった。
穴場には本当に人がいなかった。2人は思う存分遊んでいた。沖まで2人で競争し、一息付いていたら大波が襲ってきた。海面に出てみると、茜の姿がどこにもない。当たりを必死に見回すと、茜のリボンが海面に浮かんでいるのが見えた。急いで泳いでいくと、茜が気を失って漂流している。急いで茜を抱えて浜辺まで戻った。
全く返事をしない茜。心臓は動いていたが息をしていなかった。元水泳部だった良和には心得があり、すぐに人工呼吸を始める。茜は意識を取り戻した。心配だから近くの診療所で診てもらったが、どこも悪いところはなかったようです。って、海辺の診療所に老先生ってあの診療所か?
病室へ。また少し記憶を取り戻したアカネ。あの2人の男女と一緒に海に行ったことがあるらしい。そして、自分はやはり嫉妬していたことを。先生は、今日同じ名前の女の子が診察に来たことを思い出して話す。ということは、時間軸的には同じ話ということで確定ですね。アカネと茜の関係がまた分からなくなった。
そういえば、前日のSF小説の下りで、アカネが手にした小説はタイムトラベラーの話で、自分はタイムトラベラーで、過去の嫌な記憶を消しに来たんだ、とかアカネはおちゃらけていたが、本当にそういうことなのか?
たぶん、自分は自殺したんだよ
アカネは思い出したわけではないが、そう感じていて、記憶が戻ることに恐怖を覚え始めていた。先生はニコっと笑って
お前さん、この時代にタイムスリップしたのだろう?
と励ましてくれた。そして、自分を死に追いやった絶望などには負けないと決意するのでした。でも、このゲームのこれまでのパターンからすると、そんな分かりやすい展開でもないと思うが。
宿の夕食を摘みながら、透子と長いこと付き合っていて、嫌になることはないのかと聞いてくる茜。一度もないと答えると、「そう」と言ってホッとした表情を見せた。しかしその刹那
お兄ちゃんもね、他の人とつき合ったりした方がいいかもしれないよ
と、いきなり顔を強張らせて怖い言葉を口にした。その直後にいつもの調子に戻って、何事も経験だとおどけていたが、その言葉の真意を測りかねる良和だった。
夕食を済ませて布団を並べる。同じ部屋で一緒に寝るのは初めてのことだった。茜がお風呂に入りに行っている間に良和は先に寝た。
何か違和感を感じて目を開ける良和。背中に物体の感触があり、シャンプーの香が漂っていた。茜が自分の布団の中で背中にしがみついていたのだ。せっかくだから一緒の布団で寝たいと言う茜。自分の布団で寝ろと促すが、茜も引かない。背中に成長した茜を感じ、良和の体を這う茜の手は恋人の愛撫のようだった。
ねえ……一緒に寝ようよ
とうなじに囁きかけられ、快楽を感じてしまう良和。
分かったから、離れろ
と言って、ようやく茜は密着状態から解放してくれたが、恋人相手には無反応だったキカン棒をも解放してしまった。昼間の人工呼吸が自分のファーストキスだったと言う茜に、あんなものはキスじゃ無いと否定するが
でも……唇に、お兄ちゃんの唇の感触を覚えてるもん
と言われ、何も言わず自分も唇に手を当てて、その感触を思い出す。
ーー他人じゃない
透子の声が耳にこだました・・・
7月21日
茜に起こされて目が覚める。旅館をチェックアウトしてまた海へ。気分が悪いからと言って、良和は今日はパラソルの下で昼寝していた。
病室へ。アカネは天井を見つめながら、頭のどこかから響いてくる声に、一心に耳を傾けていた。
ーーあの人は、どんな食べ物好きかしら?
ーー趣味は?
ーー誕生日にプレゼントしようと思うの。何がいいかな?
そんな言葉に、いちいち答えてあげている自分。酷く悲しかった。ふと手首に目がいった。既に包帯は取れている。痛みも取れていた。しかし、手首を眺めていると涙が滲んでくる。手首の怪我が何か重要な意味を持ってるらしいと感じる。気が付くと先生が立っていた。
自分が治って居なくなったら淋しいか?孫でもできた気分じゃなかったか?と問うアカネに
まあ……そうかもしれんの
と笑って答える老先生。アカネは今読んでいた小説を途中で読むのをやめることにした。
また、借りにくるからさ。そのときまで取っておくの
ええ子や・・・
夜中に目が覚める良和。家に帰ってきていたこともよく分かっていない様子。時計の針は午前4時を示している。トイレで用を足して部屋に帰ろうとすると、廊下に人影があった。見覚えのある顔だったが
……馬鹿な
こんな時間、こんな場所に、彼女が居るわけがない。良和はこれは幻覚だと自分に言い聞かせて、また眠ってしまったが、間違いなく透子だろうね。
(つづく)
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