2007-09-22 福田氏の長所と短所

安倍首相の突然の辞任表明で始まった自民党総裁選も明日が投票日。麻生派以外の全ての派閥の支持を受けた福田康夫氏が優勢という流れは変わっておらず、サプライズがなければこのまま自民党総裁、総理大臣になるでしょう。
ただ、この福田康夫という人物は、これまで首相候補とされていたにもかかわらず、あまりその人物像を伝える情報がなく、評価に困るところがありました。
そう思っていたところ、SAKAKIさんの「湖北庵通信(旧 浦安タウンの経済学)」*1より、「途転の力学」*2というブログを紹介してもらいました。このブログは福田康夫論を非常に詳細に論じられているのですが、その結論部分で次のようにまとめられています。
<まとめ:福田政権誕生は本当に「悪夢」なのか>
というわけで、
ようやく本題の答えを出して締めくくりたいと思うのですが、
果たして「福田政権」誕生は本当に「悪夢」なのでしょうか。
それに対する私の答えをご批判覚悟で述べさせて頂きたいと思います。
まず、内政面に関して。
福田さんは「小泉構造改革路線」の継承者であるため、
小泉路線を支持する人にとっては「悪夢」ではないが、
逆に、路線の転換を求める人にとっては「悪夢」である。
次に、外交面に関して。
福田さんは「超現実主義路線」を取るものと思われるので、
感情的には受け入れがたい部分も出てくるかもしれないが、
保守系の方々が考えているような
「亡国」の状況にはならないと思われる。
その点では「悪夢」ではないと考えていいのではないか。
政策面に関しては、このように考えております。
しかし、それよりも最大の難点なのは、
彼にリーダーとして必要な「決断力」がないことと、
これまでろくな「ケンカ」をしたことがないことにあると思われる。
それで本当に政策遂行が出来るのか、
「ケンカ」巧者の小沢さんに立ち向かうことができるのか。
ここに、はなはだ難があると考えられ、
「話し合い」という大義名分の元に、必要以上に
民主党に引きずれられてしまう可能性が高いという点では、
これこそが本当の「悪夢」なのかもしれません。
福田政権誕生は本当に悪夢なのか?B(ポスト安倍と政界再編の可能性を探る:その6) 途転の力学/ウェブリブログ
この結論に至るまでに、3エントリー(見方によっては6エントリー)に及ぶ分析があるので是非読んでいただきたいのですが、僕がこのブログ記事を読んで思ったのは、次のようなことです。
- 福田氏は一文字で言えば「冷」です。それが良い方向に出れば「冷静」、悪い方向に出れば「冷酷」となるのでしょう。雪斎さんやJSFさんが福田氏を評価していることや、アメリカや中国(北朝鮮もそうかも)で彼が評価されているのは、その冷静さや現実主義故でしょう。一方、1回目の小泉・金正日会談で拉致被害者家族を憤慨させたような対応は、彼の冷酷さ故なのでしょう。ただ、全体としてみれば、これは政治家として悪い側面ではないと思います。
- しかしその冷静さの裏側として、福田氏は喧嘩や博打を好まない傾向があります。経験した主なポストも官房長官のみですし、これまで総裁選に出た経験もありません。彼は負ける戦をしようとしない人物なのでしょう。そのため、これまで逆境を経験したことがほとんどありません。これは政治家として非常に心配な側面です。
福田氏は冷静で現実的な人ですから、状況が与党に都合の良い時や、都合が悪くても想定の範囲内ならば、正しい対処ができると思います。しかし、(例えば安倍内閣の年金問題や閣僚不祥事のように)想定していない問題が吹き出したり、野党に追い詰められてしまったときは、逆境の経験がないことがマイナスに働く可能性が大きいと思います。その場合、福田氏が正しい決断をできるのか、それとも安倍首相のように間違った決断をしてしまうのかは、そのときになってみないと分からないのでしょう。
それを防ぐためには幹事長ポストに喧嘩が出来る人を当てるのが良いと思うのですが、自民党屈指の喧嘩師である小泉前首相や麻生(前)幹事長を起用するのは難しいでしょう。そんなサプライズ人事ができたら福田氏を見直します。(笑)それに次ぐ存在としては二階氏か古賀氏といったところでしょうが、この二人にとって今回の幹事長ポストが魅力あるかというと、それも疑問です。いずれにせよ、幹事長に誰を起用するかは注目点ですね。
あと、このブログではこんな分析もしています。
さらにもう一つ興味深かったのが、
朝日の世論調査におけるこの部分。
【参考】次の首相、福田氏53%、麻生氏21% 本社世論調査(朝日)
http://www.asahi.com/politics/update/0916/TKY200709160117.html
次期首相に一番力を入れて取り組んでほしい政策(四つから選択)では
「年金」が32%と最も多く、以下、「経済格差」30%、「財政再建」19%、
「外交や安全保障」16%の順。
「格差」を挙げた人では、福田氏57%対麻生氏17%と
差がやや開くのに対し、
「外交・安保」を選んだ人は46%対40%と接近しているのが特徴だ。
ここからわかることは、国民は
「福田さんの方が『格差問題』に取り組んでくれる」
と考えているということです。
それともう一つこれ。
首相から続いてきた経済成長や競争重視の改革路線については、
「受け継いでほしい」が54%で、「そうは思わない」の36%を上回った。
福田氏を挙げた人は53%対40%、麻生氏を挙げた人は63%対27%。
総じて麻生氏のほうが安倍政権の継承色が強いと
受け止められているようだ。
これも非常に興味深い内容で、
「福田さんの方が小泉・安倍路線から転換してくれる」
ということを期待していることがわかります。
福田政権誕生は本当に悪夢なのか?@(ポスト安倍と政界再編の可能性を探る:その4) 途転の力学/ウェブリブログ
<福田さんは小泉構造改革の継承者である>
次に、国民が恐らく誤解しているであろうことはこれ。
福田さんが麻生さんに比べて、
? 「格差問題」により取り組んでくれ、
? 「小泉・安倍路線」をより転換してくれる
と考えていることです。
3回目の記事で、麻生さんと福田さんに違いについて考えましたが、
あのときの私の推論が当たっているとすると、
事実は全く逆ですね。
【参考】ポスト安倍と政界再編の可能性を探る(その2:福田と麻生の違いは何か?)
http://keyboo.at.webry.info/200709/article_16.html
これは以下の発言を見ても解る。
平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に
引き上げることになるが、今の財政状況でカネをひねり出すのは難しい。
行政経費を節減する工夫をしなければならない。
消費税も含めて手段を考えていくのは当然必要になってくる。
公共事業の3%減と地方経済の問題は、悩ましい問題だが、
地方にもがんばってもらい、その程度の協力はお願いしていく。
彼の真意はまさにここに表れている。
「カネ出さないよ」。
そして、その「ホンネ」は彼の公約にも見て取れる。
【参考】「自立と共生への改革を」 福田氏立会演説会の要旨
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/84870/
「カネは出さんが自立せえよ」と。
つまり、福田さんは
「経済政策を修正する必要があるとは考えていない」
ということがわかります。
【参考】「新福田ドクトリン」策定を
http://naigai.cside6.com/kiji/tokyokouen/fukuda.htm
格差があると言えばある、ないと言えばないということではないか。あえて問題にするとしたら、東京と地方のギャップはものすごい。都市対地方というのは日本の政策としてこれからの大きな課題だ。
また正規雇用者と非正規雇用者の(賃金の)ギャップが固定化しては大変だ、と言われている。だが人口は減る、労働生産力も減る、団塊の世代が一斉に退職する。そういう時代になった時、日本の企業は人を確保しなければいけないというマインドになるのではないか。
これは一体何を意味するのか。
それは、
「福田さんこそが小泉改革の継承者である」
ことを意味することに他なりません。
だからこそ、小泉さんは福田さん支持を早々と表明したのでしょう。
もともと派閥が同じだったからという理由だけではないと思います。
【参考】小泉前首相も福田氏支持、応援「先頭に立つ」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070914it02.htm
もし、小泉構造改革路線を否定する人物として
福田さんを望んでいるというのであれば、
国民は大いなる誤解をしていると思われます。
福田政権誕生は本当に悪夢なのか?A(ポスト安倍と政界再編の可能性を探る:その5) 途転の力学/ウェブリブログ
というわけで、国民は福田氏に構造改革の是正を望んでいるのに、福田氏自身は構造改革の継続をするつもりであるということになります。僕から見ればむしろ麻生氏の方が地方対策などの格差是正策に積極的という印象があるのですが、麻生氏は逆に構造改革派だとみられているようですね。
ということは、やがて誤解が解けたとき、格差是正を期待した最初の支持者は離れて行くのでしょう。その代わりに構造改革支持の層を味方につけられるかですが、この層は小泉支持の色合いが強いので、小泉氏とは人間性が正反対の福田氏を支持してくれるかは未知数でしょうね。また、国民だけでなく古賀氏、谷垣氏、山崎氏、加藤氏なども福田氏を誤解していることになりますので、支持率が落ちれば党内もゴタゴタしてくるのでしょう。逆境の経験がない福田氏はこれにどう対応するのでしょうか?
こうやって考えると、福田氏は首相には簡単になれそうですが、なった後は内政面で問題を抱えるのでしょう。このような福田内閣の姿が、安倍内閣の姿にダブって見えてしまうのは僕だけでしょうか?w

僕としては福田であろうと麻生であろうとリフレ政策をしてくれればどちらでも良いのですが、残念ながらどっちも期待薄です。orz
外交は福田、麻生とも得意分野でしょうね。二人とも現実主義者ですから、大きく外すことはないと思います。この点での問題は小沢氏でしょうねえ。
まぁ、自分はデフレを脱却し、少なくとも普通の不況にできる政権ならどちらでも構いませんが(勿論、好景気に誘導できれば最善です。)、どちらが総理になっても景気回復できなければ自民党は終わりでしょうね。
コメントありがとうございます。また拙記事のご紹介もありがとうございました。「冷」というのは非常にうまい表現ですね。「冷静」と「冷酷」。麻生さんは半径2メートル以内に近づくと、非常にいい人らしいのですが、福田さんはその逆なのかもしれません。私は、その「冷」に加えて、ケンカをした経験がなく逆風に弱かろうということで、「脆」という側面も付け加えてみたいと思います(ぜんぜんうまくない。私は漢字のセンスがないですね(笑))。今後ともよろしくお願い致します。
麻生氏は地方対策重視でバラマキ気味ですが、ばらまくにしても経済成長による元手が必要で、そのためにはデフレを脱却して再び戻らないようにする、というところまで気づくかでしょうね。あと、麻生氏は反竹中感情が強いので、その絡みでリフレ政策を評価していない可能性もありそうですね。
まあ、自民党が終わっても民主党がリフレ政策をやってくれれば良いのですが、民主党はさらに期待薄ですからねえ。orz
>sunafukin99さん
「安定」志向と「改革」路線期待との矛盾はありそうですね。それが総論賛成各論反対という形で出てるのかもしれません。
>新快速 播州赤穂行きさん
今回はいろいろ参考にさせていただきました。ありがとうございます。
麻生氏には逆に「熱」という漢字を当ててみたいですね。あの人は人情家だし負け戦でも平気で打って出ますよね。それが人を惹きつけるのでしょうが、逆にその熱さが生み出す結果に嫉妬する人も多いのでしょう。
福田氏が脆いかどうかはやらせてみないと分からないと思いますが、その可能性を念頭に置いておく必要はあるでしょう。まあ、逆境はそのうち来ると思いますから、そのときに真価を問われるのでしょうが。
熱冷対決は冷の勝ちでしたが、まるで決まっていたかのようで、違和感ある人も多いと思います。
今、この状況で総理の椅子に座るのってどう考えても厳しい話ばかりなのに、福田さんは、平然としています。すでに逆境なのに民主と何かあるのかなぁとと疑ってしまいます。
いままで冷や飯だった、山崎さんや谷垣さんが元気になるって、何でしょね(笑)ポリシーより個人的な好き嫌い(笑)
それを書いちゃおしまいですね。
この先、攻め込まれる福田さんですが、困難にどう立ち向かうでしょうか??
民主とは何もないでしょう。この段階で小沢氏がそんなことするとは思えないです。平然としてるのは福田氏のキャラクターでしょう。
山崎氏や谷垣氏、古賀氏はそのうち福田氏の構造改革路線に苛立ちを強めるのでしょうね。なまじ好感を抱いているために、裏切られたときのショックも大きいかと。w
喧嘩についてですが、小泉前首相との喧嘩は、特定の問題(例えば靖国)にフィールドを限定し、手段も言論で相手を説得するというものだったと思います。そういう問題や手段が限定された喧嘩であれば、福田氏には十分な経験があるでしょう。
ただ、これから福田氏が直面する状況は、どんな問題が突然出てくるか分からないし、相手も手段を選ばず攻撃してくるというものだと思います。もちろん福田氏も馬鹿正直に売られた喧嘩を買う必要はなく、国民の支持さえ得られるのであれば、野党案丸呑みだろうがスキャンダルだろうが問題のすり替えだろうが謀略だろうが、何でもやって構わないのですが、そういう汚い喧嘩を福田氏ができるのだろうかというのが僕の懸念なんですよ。そういう喧嘩は小沢氏の得意分野ですからね。
歌は世につれ世は歌につれ・・みたいな。さんの「福田2世」がいいですね。
幹事長は伊吹文明文部科学相、政調会長は谷垣禎一元財務相。二階さんは総務会長でしたね。僕は細田さんという情報を得ていましたので・・んー予想外でした。
ブラックに見方ですが、消費税増税自爆内閣に見えてしまいます。
ちょっと気になるのは・・・世間ではあまり話題になりませんが、山拓さんの運命ですね。本人は意欲満々と聞いていますけどw〜(たぶん何もないでしょう???)。
山拓さんは何もなかったようですね。派閥領袖で無役なのは山崎氏と麻生氏だけですね。w
与謝野氏が残らなかったけど中川(秀)氏も入らなかったので、消費税についてはまだ分かりませんね。
この布陣で喧嘩ができるかどうか、生暖かい目で見ましょう。w
内政面で麻生氏が反竹中であることは麻生オフィシャルサイト3月号「資産デフレ不況」(http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2007_3.html)を呼んで見られてはいかがでしょうか!
的確にデフレの原因をついていると私は考えます。
そこから考えるに、地方対策重視でバラマキ気味ではなく、小泉路線からの大幅な構造改革の変更を行うと推測できます。
もちろん、民主党の抵抗がありますから一筋縄ではいきませんが、麻生氏ならセンスよく行われたのでないかと推測します。
一方、党内のバランスや外交の協調性を重視する福田氏は部分修正的内政というか、モグラ叩き的修正内政を実施し、国民の不安と官僚の不満が爆発しない程度のバランスで政局を乗り切っていくのではないかと推測します。
私としては、50年、100年先を考える麻生氏を期待しますが、福田氏になってしまいました。
半年後か、1年後に落胆のため息をつくことになりそうな予感がいたします。
はじめまして。
その文章は以前読んだことがあります。麻生氏の考え方は、リチャード・クー氏の説である「バランスシート不況」に近いと思います。
ただ、麻生氏は地方重視を唱えていますが、地方経済を救う方法としては、僕も財政政策による地方への富の移転しか思い浮かばないんですよ。だから、結局バラマキ気味になってしまうのではないかと考えるわけです。
あと、「小泉路線からの大幅な構造改革の変更」とは言っても、それが何なのか麻生氏の著書を読んでもはっきりとは分かりませんでした。思い切った財政政策(つまりバラマキ)でもなく、リフレ政策のような思い切った金融政策でもないとしたら、いったい何なのでしょうね?
>nanashiさん
考えてみれば、安倍政権で一応の中韓との関係改善は行われているので、福田政権になったからと言って、対中韓外交で大きな政策変更はないと考えています。変更があるのは北朝鮮政策でしょうが、これは多少日本が柔軟になったところで、北朝鮮側が条件をつり上げるだけなので、結局日本が譲歩しても暗礁に乗り上げたままなのではないかと思います。だから、対「特亜」では情勢に大きな変化はないと思いますよ。