Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

失業率と犯罪の驚くべき相関関係

すでにはてなブックマークが300以上もついている人気ネタですが、ちょっとすごい話なので取り上げてみたいと思います。

 久留米大学経済学部には「論文A」という三年次以上配当の科目があって、論文が認められれば4単位もらえることになっている。
 ゼミ生の清水咲希君が、この論文にエントリーして、景気と犯罪の関係をテーマにしたいと言ったから、失業率と犯罪の相関を調べてみることをすすめた。


(中略)


 大竹先生は犯罪「率」だったけど、ここでは「件数」を使っている。『犯罪白書』に載っている「交通関係業過を除く一般刑法犯の認知件数」である。まず、これを、その年の失業率で単純に回帰させた結果が次のようになっている。


1953-2004(観測数52)


犯罪件数=749523.5+348753.6×その年の失業率
     (15.4368) (19.1076)


 括弧内はt 値である。重決定係数は0.879547、定数項と係数のp値はそれぞれ、1.17×10−20、1.25×10−24である。つまり、犯罪件数の88%はこの式で説明がつき、本当は関係ないのにたまたまこんなふうになった確率がこのp値しかないということ。統計的に有意も有意である。


 これだけでも十分いい実証結果なのだが、清水君は、失業してから犯罪が起こるまでにラグがあることを考えて、犯罪件数を、過去数年の失業率の平均で回帰することを試みている。その中でも最も成績のよかった、過去四年の失業率の平均で回帰した結果は次の通りであった。


1956-2004(観測数49)


犯罪件数=684998+392844×過去4年の失業率の平均
     (14.93) (21.92)


 重決定係数は0.91089、定数項と係数のp値はそれぞれ、1.83×10−19、2.55×10−26であった。とんでもなく有意である。

http://www.mii.kurume-u.ac.jp/~tadasu/essay_80114.html



統計学の用語が多いので分かりにくいかと思いますが、この結果は「犯罪件数の動きの9割は失業率で説明できる。この推測が外れている可能性はほとんどゼロである」ということです。この両者には極めて強い相関関係があります。
もちろん一般的には単純に「相関関係=因果関係」とは言えませんが、このケースの場合「犯罪が増えたから失業率が増えた」とはまず考えられないでしょう。また、失業と犯罪の双方を直接増加させる要因も、社会的な混乱や大規模な破壊(天災や戦争など)くらいしか考えつきません。
そうなると、因果関係は「失業が増えたから犯罪が増えた」と考えて良いと思います。もっとも、具体的な経路としてはこの間に「貧困」や「精神的ショック」などが入るのでしょうが。


この結論としては、犯罪を減らすためには、まず何よりも景気を回復させなければならないということになります。もし「○○犯罪が問題だ」という人がいたら、「だったらさっさと景気を回復させろ」と言っておけば、まず間違いはないことになりますね。*1

*1:もっとも、汚職や背任など、高所得者による犯行が多い犯罪は例外ですが。