Baatarismの溜息通信 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-01-10

なぜ中国の経済危機が起こったのか

00:34 | なぜ中国の経済危機が起こったのかを含むブックマーク

昨年以来、中国では株価の暴落が繰り返されています。今年になってからも暴落が発生し、今年から導入したサーキットブレーカーが2度も発動されたため、慌ててサーキットブレーカーを停止するなど、市場の混乱が続いています。その影響は世界中に波及し、先進各国の株式市場も株安になっています。

このような混乱がなぜ起こっているのかを知りたくて、ここ数日、内外の様々な記事を読んでいましたが、十分納得できるものがなかなかありませんでした。その中で唯一納得できたのが、なんと夕刊フジの田村秀男氏の記事でした。

 年明け早々から株式市場はチャイナ・リスクで大荒れである。世界最大水準の中国債務は今後さらに膨らむ情勢なのだから、不安がグローバルに伝播してしまう。

 「中国、今年は改革の正念場に」(米ウォールストリート・ジャーナル1月4日付)であることには違いないが、習近平政権にとってはそれどころではない。

 中国金融のどん詰まりぶりを端的に物語るのは、中国人民銀行による人民元資金発行残高である。昨年後半から急減している。前年比マイナスは実に16年ぶりだ。

 人民銀行は2008年9月のリーマン・ショック後、元の増発に増発を重ね、国有商業銀行を通じて資金を地方政府や国有企業に流してきた。大半は不動産開発など固定資産投資に向けられ、国内総生産(GDP)の2ケタ成長を実現した。その結果、10年にはGDP規模で日本を抜き去ったばかりか、党中央は豊富な資金を背景に軍拡にもいそしんできた。東シナ海、南シナ海などでの海洋進出はマネーが支えてきた。党の意のままにできる元資金こそが「超大国中国」の原動力だ。

 元膨張を支えてきたのはドルである。リーマン後の米連邦準備制度理事会(FRB)によるドルの増発(量的緩和=QE)に合わせて、人民銀行が元を刷る。グラフはQE開始後、元資金のドル換算値がドル資金発行増加額とほぼ一致していることを示す。偶然にしては、でき過ぎの感ありだ。

 人民銀行は自らが定める基準レートで流入するドルをことごとく買い上げては元を発行する。買ったドルはゴールドマン・サックス、シティ・グループなど米金融資本大手に委託して米国債で運用するのだから、北京とウォール街の間には何らかの合意があったとしてもおかしくない。

 ところが、FRBは米景気の回復に合わせて14年初めごろから、世界に流れ出た余剰ドルの回収の模索を始めた。QEを14年10月末で打ち切った。さらに先月下旬には利上げした。バブル化していた中国の不動産市況は14年初めに急落、次いで上海株も15年6月に暴落した。

 中国からの資本逃避に拍車がかかり、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い上げ、暴落を食い止める。それでも売り圧力は高まるばかりだ。元の先安予想がさらに上海株売りなどによる資本流出を助長する。


f:id:Baatarism:20160110231307j:image


【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK 【お金は知っている】習政権にとって“人民元自由化”は自滅の道 日本としては大いに結構 (1/2ページ) - 経済・マネー - ZAKZAK

実はこの記事で一番重要だと思ったのは、人民元とドルの資金発行量増価額を示したグラフでした。リーマンショック以降、中国がドルに合わせて人民元発行を増やしてきたことがよく分かります。つまり中国は人民元をドルにペッグしていたことになります。この人民元の膨張こそが、ここ数年の中国経済発展の理由でしょう。

実は1980年台後半の日本のバブル景気も、日銀による金融緩和の結果でした。ここ数年、中国経済がバブルではないかと言われてきましたが、そのバブルの理由もこの人民元膨張だったのでしょう。

しかし、昨年に入ってFRBは利上げを模索するようになり、昨年末には利上げが行われました。そのためにドルの発行量増加は止まり、中国もそれに合わせて人民元の増加を止めることになりました。昨年、中国で株価が大幅下落してバブルが崩壊したのはそのためでしょう。日本のバブル崩壊も、日銀による金融引き締めが引き金になっています。

さらに中国ではインフレ率が低下し、経済成長率も下落しています。


その対策として、昨年8月、中国は人民元の切り下げを行いました。為替介入で人民元のレートを維持すると、金融緩和しても効果がなくなるので、これは経済学の教科書通りの政策です。

しかし、その結果資本流出が起こり、資本逃避の懸念が増してしまいました。そして今年の株安も人民元安と連動しています。

中国の通貨、人民元の対ドル相場が下げ止まらず、世界の金融市場を揺さぶっている。急激な元安は中国からの資本流出を招き、同国経済を一段と下押ししかねないとの懸念が広がっているからだ。7日の世界市場では株価が大幅に下落し、原油価格はリーマン危機後の安値を下回った。米国の追加利上げが予想されるなか、元安に歯止めがかかる兆しはない。


人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞 人民元安が市場揺らす 中国不安再燃、世界で株急落  :日本経済新聞



このように人民元の下落は景気を刺激するどころか、資本流出を招いて逆効果になっています。これはなぜでしょうか。

FRBがドルの発行量を増やしている間は、中国はドルに合わせて人民元を増やすことで、景気を刺激することができました。しかし、FRBがドルの発行を増やさなくなると、中国が人民元の発行を増やすためには、人民元を切り下げなければなりません。

しかし、中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました。外資はドルの資金量、つまりFRBの金融政策によって増減しますから、中国が金融緩和しても外資に影響を与えることはできません。もともとFRBのQE終了と利上げで外資の引き上げが始まっていたところで、人民元を切り下げたため、さらに外資の流出を加速させてしまったのでしょう。これが今回の中国の経済混乱のメカニズムだと思います。


このような資金流出を恐れて、今後中国は人民元の切り下げには慎重になるでしょう。ただ、そうなると金融緩和もできなくなり、中国は財政政策や構造改革で景気を回復させようとするでしょう。

昨年末、実際にこのような報道がありました。

中国は、景気支援に向け、金融政策に柔軟性を持たせる一方、財政出動を拡大する。2016年の経済政策の優先課題を話し合う中央経済工作会議の決定事項を国営メディアが報じた。

発表された声明は「積極的な財政政策を強化し、穏健な金融政策を一段と柔軟にすることが必要」と表明。

財政赤字の比率を緩やかに引き上げるとともに、企業の負担軽減に向けた減税を行なうとした。

来年の成長率を「妥当な範囲」に維持するとしたが、詳細には言及しなかった。

政府はまた、インフラ向け支出を拡大するほか、低迷する不動産市場を下支えるため、住宅購入に伴う規制を緩和する。

<サプライサイドの改革>

中央経済工作会議では、新たな成長のけん引役の育成を支援するため「サプライサイドの改革」を推進し、過剰生産能力の削減や不動産の在庫の調整に取り組むとした。

関係筋によると、政府はサプライサイドの改革を推進する一方、需要の押し上げに向けた措置を講じる。

「構造改革の断行には、一定の成長率の維持が必要」という。

関係筋はまた、中国、および世界経済は急激な落ち込みから低成長が長期間続く「L字型」回復となる見込みのため、「需要サイドの政策だけでは、景気支援は不可能」と語った。

また金融リスクへの対応をさらに進め、地方政府の債務リスクを効果的に抑制するとしている。

来年の経済政策ではデレバレッジを重視する方針も示した。


中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters 中国、穏健な金融政策に柔軟性が必要=中央経済工作会議 | Reuters

中国の政府当局者は欧米諸国がここ数年ほとんど役立ててこなかった政策を試そうとしている。国内のサプライサイド(供給側)を重視する経済改革だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のリンリン・ウェイ記者(北京在勤)は、中国政府が公表した2016年の同国経済の青写真には減税計画が含まれ、財政支出の拡大を押し進めた従来政策からの方針転換をうかがわせていると指摘する。青写真は企業のコスト負担引き下げも視野に入れている。


中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ 中国、サプライサイドの経済改革を重視 - WSJ


しかし、「穏健な金融政策」というのは、実際にはかつての日銀のような、"too littile, too late"な金融政策になるでしょう。経済成長が低迷し続ければ、いずれ財政政策も続けられなくなり、逆に増税などの財政緊縮に走ることになるでしょう。そしてサプライサイドの「構造改革」は、デフレやディスインフレの不況に対しては効果がありません。

かつて日本はこのような組み合わせの経済政策を行い、「失われた20年」を招いてしまいました。どうやら中国もその轍を踏みそうな状況です。

ただ、日本はアベノミクスで大規模な「異次元緩和」を行っても、外資の流出を心配する必要はありませんでした。日本の投資は、日本国内の資本で賄われていたからです。日本がこのような間違った経済政策をしてしまったのは、単に財務省、日銀、経済学会などの専門家が間違った理論を信じていたことと、財務省が財政危機を煽ることで利益を得る構造を作り出してしまったからでした。

しかし、中国は外資流出という実害があるために、金融緩和に踏み切ることができません。中国の経済専門家は正しい経済理論を使っても、問題を解決することができないのです。従って中国の経済問題は、日本以上に解決が困難でしょう。


今後、中国はかつての日本のようなデフレ不況に陥ると思います。しかも日本と違い、そこから抜け出す道はありません。中国はこのまま衰退し、「21世紀のアルゼンチン」となってしまうのかもしれません。

ただ、中国共産党がそれを座視することはないでしょう。経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います。そのような行動は、東アジアに安全保障上の危機を起こすでしょう。

日本はバブル崩壊から7年後に深刻な経済危機に陥りました。中国も同じペースで経済的に衰退するのであれば、2020年代前半には深刻な経済危機に陥るのでしょう。ちょうどその頃、今の習近平体制は政権交代の時期を迎えます。これまでと今後の中国の軍拡を考えると、中国で政治的な混乱と経済的な混乱が同時に起こるこの時期に、太平洋戦争にも匹敵する東アジアの危機が起こるのではないかと、僕は懸念しています。

投資家投資家 2016/01/11 09:41 中国の潜在成長率がどれくらいあるのかが鍵を握ると思いますね。潜在成長率が低ければ、財政乗数も貨幣乗数も低くなりますが、高ければ巨額の外貨準備を使って対策を取れば回復できると見ています。


「潜在成長率は、均衡実質金利もしくは自然利子率(natural rate of interest)の代理変数として、政策金利の水準評価に用いられる場合もある3。長い目でみた実物投資のリターンは、中長期的に持続可能な成長率と概ね等しくなると考えられる。したがって、理論的には、実際の実質金利が均衡実質金利を上回れ(下回れ)ば、景気に抑制的(刺激的)に働いて、需給ギャップのマイナス(プラス)方向への動きを促すことになる(IS曲線)。」
潜在成長率の各種推計法と留意点
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2009/data/rev09j13.pdf

9999 2016/01/11 09:53 中低所得者の減税をすれば全て解決すると思うのですが。
そもそもGDPに占める投資の割合が高すぎる
それを消費を増やすことで解決すれば良いのです

いるかいるか 2016/01/11 13:27 最後の「経済政策で抜け道がないのならば、間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」という点がどういうことなのかよく分かりません。そうなった場合、具体的にどういう軍事的方法を用いれば経済危機を乗り切ってくると想定しているのでしょうか。
私の拙い頭では、尖閣・南シナ海・インドを攻めたところで…とイメージが広がらず、せいぜい国内の暴動デモの鎮圧くらいと思ってしまいます。でもそれは今までの体制維持の方法と同じと考えこんでしまいます。

hat_24ckghat_24ckg 2016/01/11 15:34 中国の苦境は日本など国外にあり、この脅威を除かねばならない、と言い張り始めて国民のガス抜きをするということですね。
それで苦境から逃れられるかもしれない、と中国国民が騙されれば御の字と。ありそうなのが嫌でたまりませんが、手をこまねいてばかりもいられない…
はたして、日本にどういう対応ができるでしょうか。ここで書かれているような分析を提示して、無理をするなと言ってやるのが存外良いのかもしれませんね。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 17:09 >投資家さん
中国の成長率を論じる場合、まず「ルイスの転換点」(安価な余剰労働力が枯渇して、賃金上昇が引き起こされる時点)を考えなければいけないと思います。
すでに中国はこの点を超えたという見方が多いので、今後は潜在成長率も低くなると思います。

>99さん
減税も財政政策なので、金融政策なしでは経済成長への効果が打ち消されてしまいます。(マンデル・フレミングモデル)
経済成長がなければ結局増税になってしまうので、解決策になるかは疑問です。

>いるかさん、hat_24ckgさん
この点は誤解させる書き方だったと思います。
「間違った道であっても軍事的な解決策を模索すると思います」と書きましたが、その間違いを国民には正しいと信じ込ませてしまうようなことを考えています。具体的な例で言えば、日本による満州事変のような状況でしょうか。あの時は、満州への進出が経済問題の解決策だと信じられていました。
具体的な地域としては、台湾が焦点になるでしょう。経済成長が続いているうちは軍拡を続けて、いずれは台湾を「取り戻す」展望も持てるでしょうが、経済成長がなくなるとその展望もなくなってきます。そのためまだ可能性があるうちに台湾周辺(南西諸島も含まれる)で軍事行動を起こそうとして、アメリカや日本と衝突する状況です。その過程で、中国による韓国取り込みもありえるでしょう。
台湾だけではなく日本の資本を取り込むために、日本を軍事的に屈服させることも考えるかもしれません。これは誇大妄想だと思いますが、歴史的にはそのような誇大妄想で戦争が起こったことも多いですから。日本もかつては東アジアの覇権を握るという誇大妄想を抱いて戦争しましたから。

投資家投資家 2016/01/11 21:49 市場メカニズムが万能ではないにせよ、市場メカニズムを無視すればいずれ破綻する好例ですね。
固定相場によって国際金融のトリレンマに陥り、過度なサーキットブレーカーによって株価急落を招く。いずれも市場メカニズムの重要性が分かってないってことですね。
まぁ政変がない限りは日本より成長すると思いますけど、生産性を上げるための構造改革は不可欠でしょうね。言うまでもなく、改革の本丸は共産主義の放棄なわけですが。笑

mtagmtag 2016/01/11 21:49 中国の場合には、中国という国という理解をしていると判断を誤ります。軍区レベルで別の国が連合して活動しているという理解をすると、軍事的に動く軍区と、あくまで経済的に動く軍区と分けて考える必要があります。いわゆる上海閥と太子党との軋轢もこの流れの中にいます。北朝鮮の水爆とかもこの流れの中で考える必要があります。
上海は近代国家として生きていきたいし、内陸はそれではやってられないし、北京はそのバランスをどうするか考えているし、東北部は北京とくっついていてよいかを探っているし、カオスな状況ですね。
石原莞爾が正しかったかどうかはともかく、一国として統制をするために無理を重ねているのが今の中国でしょう。その結果として、暴走する軍部が現れるのは時間の問題だと思います。

BaatarismBaatarism 2016/01/11 23:51 >投資家さん
多くの人たちが参加して作り上げる経済には、やはり法則性があるのだと思います。現在の経済学がその全てを解き明かしているわけではないですが、その法則は厳然として存在し、それに反する政策は失敗するのでしょうね。
中国の「構造改革」はサプライサイドではなく、まず台湾や韓国の民主化を見習うべきでしょう。ルイスの転換点を超えた経済は、需要が多様化して、開発独裁体制ではそれに応じることができなくなります。人々がアニマルスピリッツを持って試行錯誤して需要のありかを見つけ出すためには、人々の自由な考えや行動を自由を認める政治体制が必要でしょう。

>mtagさん
その軍区を習近平が解体しようとしています。この改革を成し遂げて、中国が一枚岩の軍事体制を構築できるかどうかも、注目すべきですね。

THTH 2016/01/12 21:37 >中国経済は外資を取り入れることでここまで成長してきました

中国が3兆ドルを超える外貨準備を持つ事を考慮しても、外資の資本流出は問題となるのでしょうか。よろしければお考えをお聞かせいただければと存じます。

BaatarismBaatarism 2016/01/12 22:57 >THさん
この場合、客観的に見て資本流出がどれだけ問題かよりも、中国政府が資本流出をどれだけ問題だと考えているかが重要になると思います。政府の経済政策に影響を与えるのは、政府の経済認識ですから。

そして昨年からの中国政府のなりふり構わぬ資本流出防止策を見ていると、資本流出を非常に重大視していると思います。銀聯カードの引き出し限度額規制をやった時は、正直「そこまでやるか?」と思いました。

中国人“爆買い”にブレーキ? 大人気のカードに引き出し制限、幹部の資金流出を牽制か
http://www.sankei.com/world/news/151001/wor1510010029-n1.html

外貨準備も12月だけで1000億ドル減少してますから、3.3兆ドルの外貨準備があってもこのペースが続くと3年も持ちません。

中国外貨準備は12月末3.33兆ドル、減少幅が月間・年間とも過去最大
http://jp.reuters.com/article/china-dec-idJPKBN0UL0VO20160107

このようなことから考えて、中国政府が外資流出を非常に深刻に捉えていて、それが金融政策に影響を与えているのではないかと思います。