2012-01-17
呪いについて
その呪いは街の人間の寿命を會鵬色の月が出るまでと定めた。
正確な呪いの秘術は誰も手の内にもない。それこそが呪いの本質であり、おかげでファラウも食べていけるのだった。
イイイの街では呪いにかからないと子を孕むことはできない。それこそが懐妊の本質であり、おかげでファラウも食べていけるのだった。
イイイの子供たちは生まれついての呪われしものたちであり、だから大人として認められるには苛酷な解呪の冒険にでないといけない。それこそが成人の本質であり、おかげでファラウも食べていけるのだった。
街の誰しもが呪いにかけられている。ファラウの呪いは誕生を司り、死を定義し、散漫な生に秩序を与えた。それがファラウと呪い両方の本質であり、おかげでファラウも食べていけるのだった。
ファラウは他人に呪いにかけられていないものをすべて呪ったが、自分を呪うことだけはしないと心に決めていた。
すると誰がファラウを呪ってくれるのだろう?
答えが出るまでの間、ファラウは死なき身となり、塑性の恥を知らず、死の名誉を賜れず、ただ月食のカレンダーを神経質に指でなぞりながら人々にふさわしい呪いを唱えつづける。
シルスピネルーヤのお茶会
「シルスピネルーヤのお茶会」から招待され、メ=ド=ククトは街の半分を抱いて眠るクラームム音楽堂へ入る。地下牢から招待客が出るのは実に///周期ぶりの快挙で、メドは自分の律在の定位に不安をおぼえる。
ステージの中央には後期ハルルルハ二十日鼠様式の機能美に溢れたハブラシ材テーブルが置かれていて、そこを原点として扇状に質量を持たない観客たちが期待に輝くまなざしでメドとシルスピを注視している。お茶にはもちろん生きたネズミの頭が突っ込まれていて、相応の腐臭をはなっている。シルスピはお茶にも菓子にも手を付けず、双子星の双摩擦函数を操作する術木のドミノをおもしろくもなさそうにいじくっていた。
「昔の君のことを思い出していた」
「会うのは初めてですが」
「じゃあ、たぶん、いつか会っていたかもしれない君を思い出していたんだな」
もしかしたら、騙されているのかもしれない。メドはもうお茶を飲めない。あいかわらず、観客たちはステージ上のある一点を見守り続けている。
