雨季前


 梅雨に入る直前の6月の爽やかさは特別なものだ。よく晴れた日が続いて、日射しはもう十分強いが、大陸由来の高気圧はからりと乾き、濃密になった緑を抜けてくる風は、5月の金の風よりももっと親密な心地良さ。
 春の花が終り夏の花が咲きだす前の、宿根草の茎や穂だけが勢いよく伸びている緑の庭をバックに、デッキの手すりに並べたゲラニウムの鉢に可憐な花が揺れるのを眺めながら、あふれる光とささやく風に包まれていると、もうすぐ家の外も内も重くしおたれる季節がやってくることを想像するのは難しい。
 たぶん明日はこの美しい6月の最後の日。久しぶりに峰と渓流で遊んでこようか。