白いハンバーグ

 ハンバーグはみじん切りの玉葱と合い挽きミンチ、これに卵にパン粉に少しの牛乳を加え、味付け・香味付けにナツメグと塩こしょうを少々振ってタネをつくり、後はこれを焼くだけという比較的簡単な料理だ。このハンバーグの「量」を決定するのは基本的には「肉」の量である。肉が増えればつなぎとしてのパン粉も増え、全体的な「量」が増える。まさに自明の理である。
 だが、肉は高い。たとえグラム79円の合い挽き肉であっても、やはり高いことに変わりはない。量は増やしたい、だが量は増やしたい、相反するこの二つの理念を止揚する唯一の方法が「パン粉を増やす」ことであった。パン粉は安い、今日も400g入りを150円で買ってきたくらいだ。グラム40円弱。合い挽き肉の半分ではないか!
 私はハンバーグを作る際、普段の倍量の――いや、正直に言えば倍量以上の――パン粉を投入した。あまりにいっぱいすぎてもったいない気が一瞬したが、ほんの一週間ほど前に消費期限が切れた廃棄寸前のパン粉だったのでためらうことなく全量投下する。そうしてタネを作り始めたのだが、作業を初めてまもなく私は異変に気づいた。タネがなんか白いのだ。
 通常、ハンバーグのタネはピンク色だ。当たり前である。メインである肉の赤とつなぎであるパン粉の白が混ざるのだから、量が多い赤の方に色が傾くのは自然なことである。が、私が作っている物は何故か白いのだ。もちろん、赤身もあるのだが普段のタネと比べると圧倒的に白い。それだけでなく、形作るときの手応えが何やら頼りない。ビシッと決まらないというか、妙にふにゃふにゃである。焼き始めるとそのハンバーグの異常さはますます際だった。肉汁が出てこないのである。
 通常、ハンバーグを焼くと肉汁が出てくる。これは肉のうまみが詰まった素晴らしきもので、これを使ってハンバーグソースを作ると恐ろしく上手いものが出来る。だが、今日のハンバーグからはほとんど肉汁が出てこない。……まさか、出てくるはずの肉汁をパン粉が吸い取ってしまっているのか。これは……もしかしたら旨くなるかもしれない、そう思った。


 それからしばらくして出来上がったハンバーグ。普段は4個しか出来ないのに、今日は5個出来ており、どうも一個分パン粉を多くいれたっぽいことを知る。本当に旨いのかドキドキしながら食べたところ……これが意外にも凄く旨いのである。食感も味も普段のハンバーグをさほど変わらない。強いて言えば少し柔らかい気もするが、それでも旨いことに変わりはない。


 こうして私は4個分の材料で5個ハンバーグを作る裏技を知ったのである。なお、このハンバーグはこれより通称“粉飾ハンバーグ”と呼ぶことにしようと思う。うどん屋なんかで良く出される粉飾エビ天の親戚みたいなものだが、それより遙かに良心的でかつ旨い。このことは強調しておきたいと思う。

 ここ数日のミス

 ・食べ終えたイワシ缶を洗っている時に、不注意から缶の蓋で人差し指を切ってしまう。小さな傷だけど、水仕事をしているときにちくちくしみてくる。
 ・書類をやたら書き間違える。一カ所間違えるとすべてパーなので全く先に進まない。
 ・そろそろ研ぐかと包丁を研いだ後、それを洗ってるときに不注意でスポンジに大きな切れ込みをいれてしまう
 ・家を出るときに鍵を忘れたりすること多数
 ・愛用の扇子を誤って踏んでしまい曲げてしまう


 うーむ、やはりお祓いが必要か。

 水田美意子 『殺人ピエロの孤島同窓会』

 

殺人ピエロの孤島同窓会

殺人ピエロの孤島同窓会

あらすじ

 本土から1500km離れたところにある絶海の孤島、東硫黄島。島内唯一の高校である東硫黄高校の卒業生三十五名は同窓会のため、四年ぶりに島を訪れた。公民館で行われる同窓会がどこか盛り上がらないまま進んでいく。そのとき、持ち込まれた液晶テレビに映ったのは磔にされた幹事の金子と彼の前でナイフをもてあそぶ「殺人ピエロ」だった。彼の死を皮切りに次々と巻き起こる殺戮の嵐。「殺人ピエロ」はいじめられっ子にして同窓会、唯一の欠席者・野比太一なのだろうか。本土との連絡手段が断たれた島内で「殺人ピエロ」と同窓生達との戦いの火ぶたが切って落とされた

感想

 帯に「12歳が描いた連続殺人ミステリー」とあり、売りは年齢だけかなと思っていた。一読しての感想は、この本は出版すべきではなかったんじゃないかなというものだった。少なくともこの段階では出すべきではなかったというか、もっと手直しして出せば良かったのにとそんな風に感じた。


 連続殺人ものということで、とにかく人が死にまくる本作であるが、その勢いはかの問題作『バトル・ロワイヤル』に勝るとも劣らぬもので、極端な話、序盤は四ページに一回くらいは人が死んでたような気がする。そのように殺害ペースが速いため、誰がどうなったのかが非常に分かりにくい。三十五人+α*1と膨大な数の登場人物を出しているので、人間関係が複雑すぎるきらいがあるため、その辺りは主人公の回想ででも良いから整理して欲しかった。


 「殺人ピエロ」の殺害方法が多彩かつ奇抜で、この辺りはなかなか楽しめた。特に遊園地での一幕などは映像化すると「殺人ピエロ」の風貌もあって、サスペンス感が高まる良い映像になるかもしれないと思った。時に「ありえねぇよ」という方法も飛び出すが、そういう着想こそは面白いなと思うし、PTAの方々は顔をしかめられると思うが、十二歳の子どもがこれだけ考えられるというのには正直感心した。もちろん、既存作品からのインスパイアもあるのだろうけど、それをそれとして自分のものに出来ているのは良いんじゃないかなと。


 問題は、一つは推理部分。前半飛ばしすぎたり、とにかく大量に被害者が出るため、そもそも推理しようという気力が起きない。これは個々の事件の描写が簡素すぎるというのも関係していると思うが、時系列すら時に混乱しているし、「なんかもうどうでもいいや」と言いたくなるような殺され方をしてるのもいるため、どうにも本格としてみることが出来なかった。ただ、トリック自体は割としっかりしているというか、考えられているものだし、伏線をいれようと努力している形跡も見られるし、十二歳としては及第点と言うべきか。


 もう一つの問題点にして、これが最大の問題点だと思うが、つっこみどころが多すぎる。物語のために無理矢理、登場人物にとんでもない行動を取らせてる部分もあり、その部分では興ざめしてしまった。あと、「胸の大きい女は頭が空っぽ」って君だってそのうち、大きk(以下自主規制)


 全体を通しての感想だが、十二歳として見たら及第点といえると思う。だが、普通のミステリとしてみるならば残念ながら本にするレベルにはない。巻末に選評が載っているが、大森望氏以外の評者はみな、この作品の出版には後ろ向きだった。それらを説得するために大森氏は「十二歳という年齢もこの作者の武器であり、出版不況の今日、使える武器は何でも使うべきだ」といった意味のことを仰っている。そのこと自体は否定しないし、出版社としての観点からしたらそれは正論なのかもしれない。

 だが、一方で作者は十二歳の子どもである。パターナリズムに陥ってしまう危険もあるが、そのことを考えた上で冷静に出版するかどうか、出版するならどういった直しをするか考えて欲しかった。この本自体、僕はあまり評価していないし、そのことは作者に対する評価にもつながる。彼女が二作目・三作目を出版する機会があったとして、そのときにこの作品が枷になって、それが手にとってもらえないという事態が起こってしまうならば、それは非常に不幸なことである。
 本を出版するというのは十二歳の小説を書くのが好きな子達にとってはそれこそ夢のようなことで、その夢が叶った彼女はもしかしたらとても幸せかもしれない。この作品が出版されたことが果たして彼女にとって良いことだったかそうでなかったかは、究極的には彼女自身にしか分からないことではあるが、作者として「水田美意子」としてはあまり良いことではなかったと、そう感じてしまう。


 小森健太朗氏は『ローウェル城の密室』において、十六歳で江戸川乱歩賞最終候補に残っている。そのときは出版されなかったものの、後々実力をつけ作家としてデビューを果たし、現在も多方面で活躍している。水田美意子氏にも彼の後に続き、本格ミステリの傑作を残してもらえたらと思う。彼女はまだ十五歳。これからの成長を期待したい。


 とか、書いた後でこんなことを書くのは憚られますが……実は作中には濡れ場が三カ所、うち一回はうら若き乙女が心に灯った熱をもてあまし自ら……といったもので、それをどんな風に考えながら書いてたのかな〜とか想像してみるのもありかもです。えぇ、もちろん、鬼畜・外道・変態・ペドその他諸々の罵詈雑言を背中にしょっての茨の道となるわけですが。

*1:警察官から都職員、自衛官まで出てくる

 急須破損の顛末

 顛末も何も、洗っていたら異音がする→チェック→とっての辺りにヒビ発見。順調に水が漏れてますといった感じだったのだけど。
 二年以上使っていて、結構気に入ってる急須だったので、蓋が欠けるくらいなら使い続けても良かったのだけど、中身が漏れるのでは話にならない。買い換えることにして、Amazonで色々見てみる。


 今まで使っていたのは茶々急須の450mlのもので、商品画像はこれ(↓)

HARIO (ハリオ) 茶茶 急須 丸 450ml CHJMN-45T

HARIO (ハリオ) 茶茶 急須 丸 450ml CHJMN-45T

 一見して分かるが、アルミの茶こしの部分が広いので茶葉が広がりやすく味が良く出る。また、「急須」然とはしていないので、紅茶や中国茶を入れても違和感がないし、それらもそつなくこなす。注ぎ口の部分の水切れも良く、水が垂れることがほとんど無く、口が広いため洗いやすい。その上、茶こしさえ外せば電子レンジ可で簡易ポットとしても機能してくれる……と文句のつけようのない商品で、正直次もコレで良いかなと思っていた。値段も1000円以下と本当にこの値段で良いの? といった感じだし。


 ところがである。この商品にも一つだけ難点があった中に入っているアルミ製の茶こしだが、実はこれの底がが急須の底に付いていない
。つまり、茶こしの中に茶葉を入れてお茶を淹れるなら、それなりの量のお湯を中に入れないと十分に抽出されないということである。悪いことに、この急須はどちらかといえば平べったい形をしている*1。そのため、「それなりの量」が「一人で飲むにはちょっと多い量」になってしまうのだ。猫舌な私は緑茶を飲むのにもティカップを使っているのだけど、これで緑茶を淹れると一人憎茶状態になってしまって、なかなか冷めないのである。

 このようなことを考慮した上で、次は一回りサイズが小さいものを選ぶことにした。それがこれである(↓)。

HARIO (ハリオ) 茶茶 急須 丸 300ml CHJMN-30T

HARIO (ハリオ) 茶茶 急須 丸 300ml CHJMN-30T


 これなら上述の一人憎茶状態も緩和されるだろうし、よりティポットっぽい形状をしているので、紅茶も美味しく入れることが出来るかもしれない。難点はサイズは小さいけどお値段据え置きだったり、Amazonの方でも発送に一・二週間かかることだろうか。
 壊れた急須でお茶を淹れるわけにも行かないし、これが着くまではコーヒーメーカでお茶を淹れる日々が続きそうだ。

*1:もちろんその分「安定感」はある。落としたり倒したりしたことは一度もない

 つーことで観てきました。

 新海先生の『秒速5センチメートル』をテアトル梅田にて観覧して参りました。一度、シネテリエ天神で観ていたので今日が二度目です。一度目を観たときに心に残るものがあったので、映画館で映画を観ること自体珍しい私ですが、二度目に行っちゃったのでした。多分、生まれて初めてじゃないかな。
 映画自体の感想はネタバレ込みで後日書くと思いますが、とりあえず今日、書きたいのはみんな見に行こうぜってこと。


・お昼休みを図書館で過ごすような女の子が好き
・切ない恋愛ものが好き
・中高生くらいのくすぐったいような恋模様が好き
・表現手法がアニメーションでも可
・公式サイトの画像を見て綺麗だなと思った
・トレーラーを見て興味がわいてきた
・主題歌*1の歌詞を笑えない人(「超映画批評」さん)

 このうち二つ以上当てはまった人は千円ちょっと握りしめて映画館にGOされたし。一時間弱の映画だから値段設定も低めに押さえられているのが良い。ただし、そろそろ上映を終え始めるところも出てきそうなので早めに行った方が良いかも。テアトル梅田では27日までだとか。


 ちょっと描きすぎだなと感じる部分もあるし、万人向けとは言い難いかもしれないが少なくとも僕は紛れもない傑作だと感じた。1000円払って観る価値あるの? って人はyoutubeで第一話だけ流れてたりするから探してみて観てみるのも良いかも*2。ただし、その勢いで主題歌PVの秒速5センチverを観るのだけはやめておいた方が良いと思う。普通にネタバレされてるから。


 因みに上記のアニメのポスターってのもこの作品のポスターのことですね。パンフレットなんて二部買ってしまったよ。保存用と閲覧用に*3。因みにそのパンフ、絵はがき風になってたりするのだけど、ちょっともったいなくて使えないなぁ。鑑賞用ってことなのかも。

*1:山崎まさよし『One more time One more chanse』

*2:Yahoo!会員向けに流されていたものが転載されたらしい。インタビューで監督自身「出来るだけ多くの人に観てもらえたら」と仰ってるし、冗談めかしてだけどyoutubeについても触れられているから、良くないことではあるけど決心の一助として観るのはありかも。但しクオリティは著しく低いので最初から劇場で観た方が、と思います

*3:パンフレットが封筒入りだったので、いささか繊細なデザインをしている封印用のシールを破らずに開封できるか不安だったため