アデュー!キティホーク!

Blueforce2008-05-28

キティホーク、本日離日のため横須賀を出港、帰らぬ旅に出る。
もちろん、この大事な節目の日にお見送りに行かずに済ますことなどできない。当初から出動、しかもフェリー撮りに的を絞ってのお見送りだ。前日の巨大船情報では通航時刻は1000、対応するフェリーの時刻は2船ダイヤで久里浜・金谷ともに1005発の5便となる。まずはこれを関係各方面に時刻を伝達し、参加を募る。今回は特にラストということもあり、参加状況は良好、結構な人数(といっても10人や20人も集まるわけじゃないですよ・・・)が集まるはずだ。
今回は、最近なかった南航での撮影となる。フェリーは完全な機織りダイヤだから、久里浜からでも金谷からでも条件は同じはずだが、ここは定石通り順光を狙って金谷発でのコンタクトとした。
南航であるから、コースは東――金谷寄りを通ることになる。巨大船情報の時刻から割り出したフェリー航路との交点通過予想時刻は1020、両港便とも出港後15分が経過している。今まで何度もケツ追いの目に遭わされ、よほどのマージンがないと前には出ないことがわかっているので、緩い角度ではあるが同方向への追いとなり、交点も東にずれる(そもそも浦賀水道航路自体がフェリー航路に対して東にオフセットしているので)久里浜発便では絶対に前には出られないだろうなと読んだ。対して、金谷発便では軽い対向の関係になり、最終的にケツ追いになるとしても最初の時点では順光の前がちのアングル、しかも後方は深い東京湾が続いているので陸地がバックに入らないという、理想的なショットになるはずである。
と、皮算用は都合がいいけれど・・・自宅を0700前に出発、まず本日の新メンバー、前CCオーナーのPJ氏の自宅に迎えに行く(!)なぜ、海軍プロパーでない氏が・・・? いやいや、好奇心が旺盛で乗り物が好きならば、この「東京湾フェリーで空母を撮る会」の活動に興味を持たれないはずはあるまい。ということで、ぜひ最後のお見送りを・・・とのご希望で初参加。これでリアシートにゴルフバッグが2つ乗っていれば清く正しい大人の休日?なのだが・・・
ここからはいつもと同じようにw運転を代わっていただき、私は助手席でふんぞり返らせて頂くが、最近すっかりエコランフリークになっている私の血の滲むような努力をすべて水の泡にするようなPJ氏の力走wで、0845フェリーターミナル着。誘導されたいつもの駐車スペースには、どら猫さんの2代目まめぞう君号が先に停まっていた。ここで新メンバーの挨拶もそこそこに、機材をまとめて乗船。
本日お世話になるのは「くりはま丸」。天気もほぼ快晴で、この季節にありがちなガスもあまり目立たず、順光で撮れればかなりきれいな画をものにできるはずだ。なんといっても最後なのだから・・・

キティホークが横須賀を母港にして10年、近年は2カ月に1回位は見ているけれど、もともとネットを始める以前はこんなに写真を撮ったりあちこち追いかける(ま、写真を撮らなければ自動的に追いかける必要もないわけだ)ことはなかったから、この10年間の前半は写真などほとんど残っていない。乗艦したのは2001年の横須賀オープンハウスと、2006年の小樽での公開の2回。特に思い入れのある空母ではなかったが、名前だけははるか昔・・・そうこの趣味に手を染める直前くらいの頃に、ニュースで聞いたのをはっきり覚えている。多分イラン・イラク戦争の辺りだろう、「アメリカは空母キティホークペルシャ湾に派遣し・・・」というのを、深夜のNHKで静止のスチール画とともに見た。けったいな名前の軍艦やのお・・・と子供心に思ったが、それから20数年後に日本常駐艦になるとは夢にも思わなかった。なんか、あっという間に去って行った印象だなあ。とはいっても1991〜98と8年間だったインディよりは長いわけだ・・・いや、もう人生の時間が死ぬほど速くなってるから、正確な評価は難しいね・・・次の艦は長そうだけどね・・・

行きの便は気が楽だ。天気もいいし、オープンデッキで潮風を浴びながら皆でしばしバカ話。南の海上には訓練支援艦、くろべATS4204(第1海上訓練支援隊・呉)が、北航して向かってくるかと思えば気がついたら艦尾を見せて・・・ぐるぐる回っているようだ。その他2隻ほど掃海艦らしき姿も。しかし、フェリーで空母と言えば我が「東京湾フェリーで空母を撮る会」名誉会長のおじさんの姿が見えないのが若干気がかり。一つ後の久里浜発便に乗るつもりなのだろうか?それはちょっと遅いような気がするのだが・・・あと、上空警戒のヘリがまったく飛んでいないのも気になる。久里浜発便で撮るなら横須賀で出港を確認してからでも間に合うのだが、金谷発便でそれをやったら間に合わない。本当に出港したのだろうか。

巨大なRORO船が北航して行くのと行き交う。乗船客の間からも歓声が上がるこの船はバハマ船籍の"HUAL AFRICA"。

定時0950、つい先日(珍しく陸上を)通ったばかりの金谷に到着、ここでこちらから乗船の1人を加えて、本日の「東京湾フェリーで空母を撮る会」は4人+1匹での催行となる。ここからは観音崎の角に視線を注ぎ、いつ飛び出してくるかと・・・「オイ!もう出て来ちゃったぞ!?」
0955、観音崎の裏からキティが姿を現してしまった。う〜ん、ちょっと、いやかなり早いのでは・・・ここで見え始めてしまっては、出港までにすら間に合わないのではないか? いやしかし、南航を金谷発便で撮るのはこれが初めてだから、いま一つペースが適正なのかどうかわからない・・・果たして、当初は「もうダメだ〜!」との悲鳴に近い声が上がったものの、1005に「早く、早く!」との声に押されるように?出港したところ、今度はどうも空母の方が遅いような気がしてきた。

いつも当日記で述べているが、鈍いように見えて実はコンスタントに走ると速い船、しかも相対的に接近しつつある2隻ではその関係はみるみる変わる。不安は的中した。明らかに空母の方が遅いのだ。それとも、そういうように見えてほぼ定時なんだろうか・・・上空には、やっとHS-14のロクマルが姿を現した。海面には巡視艇を両脇に、ゆっくりと・・・そうじれったい程にジリジリと南下してくる。何しとんじゃ!いつもみたいにサッサと来んかい!

しかし、追い越しも禁止され(てゆーか航路内でこんな大型船が追い越しやったら自殺行為w)、前にこんなのがぴったりついてしまう、まさに大名行列で・・・1022、無事に南航船航路と交差orz

本当は、光線状態を考えれば今回はケツ追いにしてくれた方が良かったのだ。左舷の前がちから舐めるように順光で回り込んでいくパターンは、まだ経験したことがない。空母はアイランドのある右舷側から撮った方がスタイルのバランスはいいのだが、ここからは徐々に半逆光になって行く。まあ・・・それでも、初めて前に出られることは出られた。
上空警戒のロクマルが、今日は異常にフェリーの近くを飛んでいる。デッキ上の怪しげな連中を監視しているのかな?w 本日の担当機はHS-14のSH-60F・NF611/Bu.No.164617。本当にこのフェリーに着船しようかという勢いだ。

でも、まずまずのいいアングルに収まったかな。泣いても笑ってもこれが最後の姿だ。キティホーク浦賀水道を通航することは、もうない。

1024、間もなく航路南端、中央第1灯標にさしかかる。ここまで見送りに来たのだろう、YTB-760級曳船マサペクアMassapequa YTB-807がずっと併走している。
曳船と空母といえば、見ての通り大人と子供以上の大きさの差があるが、いかな空母といえども、曳船なしでは入出港はおぼつかない。愛嬌のあるスタイルの米軍タグは、やはり民間船よりもアメリカの軍艦の入出港シーンに似合う存在であり、横須賀で何度も手を携えた仲の2隻は、どちらが主、どちらが従という関係を超えて、今この場で別れを交わす。もちろん、この2隻が再び出会う機会は恐らくないだろう。

米軍横須賀港のタグといえば、キッタニングKittanning YTB-787が一番の働き者で、たいがいの艦船の入出港に同船が押し引きしているのが写っているのだが・・・YTB-760級はこんななりでも満載排水量は356tもあり、ディーゼル1基で12ktの速力を出せる。ここまで最大速力で航路外を併走してきたのだ。

いつもなら「チェッ、タグ邪魔だぜ!」と悪態をつくところだが、まあこれはしょうがないか・・・と苦(微?)笑。1026、航路緑第1号灯浮標を通過、浦賀水道航路を出た。フェリー航路との交点まではさらに5分ほどを要するから、プラス20分の原則からいえば10分ほど遅れていることになる。

相変わらず大迫力の超低空飛行を見せるSH-60F。普段厚木でもここまでの近さではなかなか撮れないので、オマケとはいえこれはこれで嬉しい収穫。今回の離日とそれに伴ってパールハーバーで行われる搭載機のスワップで、調子が悪かったり本国での整備サイクルに達した機体が相当数GWが持ってきた機体と入れ替えられるようだが、この機体は果たして3カ月後に厚木に戻ってくるのだろうか。

アイランドが緑第1号灯浮標の真横を通過。マストには(上級)少将座乗を現すツースターが掲げれている。ハンガーデッキには、恐らくセレモニー用に掲げられたのだろう、前部エレベータ開口部にアメリカ海軍現役艦船のなかで最古参艦に与えられる"don't tread on me"(私を踏むな)のスローガンとガラガラヘビが描かれた"First Navy Jack"、後部エレベータには星条旗が見える。インディ、キティと2代続けて横須賀常駐艦に与えられたこのFirst Navy Jack、やっと横須賀から追放?できるようである。今度はエンタープライズに与えられるのかな?

▲クリックで大きくなります)そして、これが本当に本当の最後の姿! 10年を日本で過ごした3代目、いま旅立ちの刻。さよなら、キティホーク
振り返ってみれば、今回の最後の撮影行、大成功とまではいかないまでも、まずまずの成果であったといえるだろう。反航する久里浜発の5便では、見たところかなり南側にはらんでいたようなので(もちろん全然前を横切って)、順光にはなったもののかなりの距離がありまともな写真にはならなかったと思われる。その後、当日記で何度も掲載しているように遠景で真横の写真は撮れたろうが・・・
我々の乗った金谷発5便も、あと30秒遅ければ、また進行も違っていたと思われる。浅い角度で交差する久里浜行きと南航の2船は恐らく相対速度15ktほどで接近する。30秒ではその距離の変化は230m程度だ。1分違えば500m近く、そこまで近づいてしまえばフェリーは面舵を切って後ろに回ってしまうだろう。30秒と1分の間の30秒に、「勝利の道」があったはずだ。しかし、今ここでそれを言うまい。
久里浜に戻った我々は、余韻を噛みしめながらもそれぞれの道に向けて歩き始めた。そう、いつもなら午後から空母に向けて飛び始めるCVW-5を追って厚木に繰り出すのが定石である。しかし私は本日、夕方にどうしても外せない用事がある。厚木に行ってしまった羅恐らく間に合わないだろう。ということで、海岸線に沿って点在する名物艦艇?を見物しながら東京に帰ることにする。

2008年5月28日のひゅうが君とたちかぜ君


まず、完全な膠着状態?に陥って昨年11月からまったく動きの見られないしましまかぜこと退役ミサイル護衛艦たちかぜ(と、以前呼ばれていた船)。この一角、完全に時が止まったように静まりかえっており、なにやらうすら寒い空気すら漂っているのだが・・・

▲クリックで大きくなります)海岸線を丹念に舐めるように走って行けば、当然次はこのフネに行き当たる。ひと月ぶりとなるひゅうが君だが、トップライトの時間帯にもかかわらず午後から若干雲がおおくなったおかげで、真っ黒につぶれずに姿が収められた。前回フライトデッキを覆っていたテントはすべて取り払われ、アイランドの再塗装も終わったようだが、今回大注目なのは新規に据え付けられた各種アンテナレドーム

まず、メインマスト下段に設置されたのは、スーパーバード? しかし同アンテナと思しきものはすでに第1煙突の後部に見られ、球形の曲率が微妙に違うような気もするので(そして同じ用途のアンテナをこんなに近接して2基置く必要もないように思われるので)違うかもしれない。そして、アイランドの前後に設置された大形のレドーム。さすが艦隊旗艦、あり得ない大きさのレドームだ。これいったい何!?  既知のアメリカ海軍のどの衛星通信アンテナレドームとも似ているようで違うし、もちろん海自の艦では初めての装備だ。どういう規格なのだろう。
また、煙突からの排気だが、見ての通り第2煙突からは陽炎が出ており、すでに恒常的に主機または補機を動かしている様子が窺える。まあ、もう艦内の電源系統も外部からの供給でなく自前の回路で賄わなければならない頃だから、当然のことではあるが・・・