葛西でLCAC&MH-60S大活躍@本番

Blueforce2008-08-31

さて、昨日は予想外の収穫にすっかり満足した私であったが、もちろん東京都防災訓練の本番は今日である。
しかし、数日来崩れた天気は本日も朝時点で回復せず、昼頃からは久しぶりに晴れ間が・・・という予報を信じて出動するも、葛西までの道中は小雨もぱらつく始末。なんか、いつかもこんなことがあったな〜・・・本日も、何度途中でやめようとくじけかけたことか。
そうは言っても、年に一度、しかも今年からは有休を取らなくても東京で米軍LCACを見られる貴重な機会だ、同好の方々もすでに現地到着との連絡が届いた。とりあえず雨はやんだところで、2日連続の葛西臨海公園駐車場着。ところが、本日は新木場のランプ横を通っている時に、なんと昨日の米軍消防車が高速から降りてきて、こちらも期せずして2日連続の隊列走行となった。そのまま並んで駐車場のゲートをくぐる。
当日記には、海軍ネタではないけれど、分遣隊長の散歩で何度も登場する葛西のこと、土地勘はあるしたいがいの場所は行ったことがあるのだが、本日狙うのは昨日のポイントとは違い、公園の一番西の端、中川の河口の角にある一段高くなった堤防の部分。臨海公園からは橋で結ばれている独立した沖の無人島、海浜公園は、臨海公園との間の細い水路(昨日の日記で屋形船が通っているところ)に面した部分に背は低いながら木が植わっており、同じ高さの目線だと邪魔になるのだ。昨日は雨が降ってしまったので身動きが取れず、屋根のある水路に面した(低い位置の)部分で撮っていたのだが、本来だったら昨日も堤防に上がりたかったところ。こちらからだと北西から南東方向を見下ろす形になるので、うまく行けばLCACのバックにエセックスが重なる構図や、LCACの迫力ある正面形を捉えることも可能だ。
駐車場から撮影ポイントまでは歩いて5分ほど、昨日の教訓から本日は傘は忘れずに携行する。相変わらず三脚から一式を持っての重装備だが、蒸し暑さにヒ〜ヒ〜言いながら歩いて行くと、昨日のポイントをはじめそこかしこに同業者の姿が。堤防にも2〜3人、そしてどら猫さんの姿が。

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天気は徐々に回復傾向なるも、まだモヤも取れないし、沖のエセックスも霞んでいる。そのエセックスだが、昨日に比べだいぶ西側―東京港寄りに移動しているようだ。
さて、0850過ぎ、訓練は始まった。沖に錨泊するオーシャン東九フェリーの「おーしゃん さうす」をバックにまっしぐらに突っ込んでくるLCAC-63号艇。

総員、対砂塵防御。ゴーグル装着が発令される*1

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0859、ビーチング。一つ前の写真と比べ、360度回転するバウスラスターのノズルが2個とも前方を向き、フルブレーキとなっているのがわかる。まさに艇首が「ガツン!」と陸地に乗り上げた瞬間。

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そんなショックをものともせず、さらにガガガガ・・・と乗り上げてくるLCAC

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上陸後すぐにエンジンを落とし、スカートは見る見るしぼんで行く。5分ほどして艇首ランプのドアが降りれば、本日の訓練の主役、帰宅難民役の都職員の方々が登場。
LCACの構造は、フラットなまな板状の艇体モジュールの両脇に、推進・浮揚ファン駆動エンジンを収めた機関モジュール、艇首右舷側の指令制御モジュール(操縦室)、左舷側の人員装備モジュール(随行員室・15名収容)を設けた、正面から見ると凹形形状をしている。この中央のフラットな部分に戦車や戦闘車両、各種装備を載せるのだが、巨大なファンを備えていることもあって人間を指令制御・人員装備モジュール以外の外の部分に乗せることは禁止されている。
揚陸作戦では当然戦車や砲などの装備の他にも、歩兵を輸送することも必要になるわけだが、その人間を輸送するためのアタッチメントが、帰宅難民が収容されるPTM(Personnel Transport Module)と呼ばれる人員輸送モジュールである。これはデッキ上に載せるだけのプレハブで、素の人間なら180名、完全装備の海兵隊員なら90名を収容できるといわれる。内部は照明は辛うじてあるものの、むき出しの金属壁に囲まれた、コンテナの中に乗っているようなもので、(当たり前だが)およそ快適とはほど遠いものらしい。また、これだけの大きさのものであるから、揚陸艦内での設置・換装は不可能で、母港で揚陸艦に搭載前にセッティングを行ってくることになる。

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0917、収容を終了して再び離岸を待つ。沖には帰るべき母艦、エセックスの姿が。昨日の位置ではとてもこのようにLCACの右側に見えるような写真にはならなかった。

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そのエセックスからは、なんとHSC-25 Det.6のMH-60S(RB57/Bu.No.165775)が飛来! 昨年の訓練にはなかったメニューだ。そうか・・・!MHが来るMHが来るって噂になっていたのは、MHというと先入観でMH-53Eを思い浮かべてしまうけれど、MH-60のことだったのか。しかし、LCACだけでなく葛西で海軍のヘリも見られるとは・・・唖然とする我々の前に、0920着陸。

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こちらも避難民を乗せる役回りのようで、ヘッドギアをつけた日本人が列を作って搭乗して行くが、羨ましい・・・この訓練、我々からすれば金払ってでも乗りたいものだが、軍艦などに毛ほども興味のないカタギの方には休日の朝早くから出勤させられて、横須賀くんだりまで連れて行かれて現地で放り出されてはたまったものではないと文句が出て、昨年までは横須賀に行ったのを、今年は母艦に数時間留まった後に再びLCACで葛西に送り届けられる進行に変わったらしい。それでも、LCACは乗ってしまえば何も見えず暗くてうるさいプレハブの中なのに対し、曲がりなりにもヘリにのれるとあれば一番電車で朝早く自宅を出てきた甲斐があろうというものだろう。ヘリに乗る人はジャンケンか何かで決めたのかも知れないが、LCAC組からは羨ましがれたことだろう。しかし、透明ビニール傘を持った人がいるが、なんとも周囲の情景とミスマッチではある。

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離陸を待つヘリの後ろを、ひと足先に離岸したLCACエセックスに向かう。しかしこの絵・・・なんじゃこりゃ!? すでに防災訓練と言っても誰も信じまい。こんなシーンが東京で見られるとは、数年前には夢にも思わなかった。

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そして0946,こちらも離陸するも、なななな、なんだ!?真っすぐこっちに向かってくるぞ!? ギャラリー向けの演出か!? 慌てて撮ったら、すごい構図になっていた・・・

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HSC-25は、海軍艦載ヘリ飛行隊の大規模な改編に伴って、かつてのヘリ支援飛行隊HC-5を母体として2005年にグアム・アンダーセンAFBで新編された飛行隊で、以前岩国オープンハウスレポでも紹介しているように、岩国に第6分遣隊を派遣している。もちろん、揚陸艦の本来の任務である揚陸作戦の戦闘任務には、MCAS普天間をホームベースとするMAG-36の輸送・戦闘ヘリが充当されるわけで、当機は補給艦からの物資輸送などを担当する脇役ともいえる存在であるが、今回の任務に当たって、わざわざ普天間から本来任務の海兵隊機を持ってくるまでもないと判断されたのだろう(あるいは、さすがに海兵隊機だと刺激が強すぎる?)せっかく見るならCH-53D/Eが見たかったというのは贅沢すぎるかな? ベースが陸軍の輸送機形であるMH-60Sはキャビンの窓も大きい。帰宅難民の方々も素晴らしい展望を楽しめたのでは・・・

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すぐ隣に東京へリポートがある葛西は、普段から民間ヘリのトラフィックも多いが、防災訓練のまっただ中の本日はいつにも増して警察や消防の機体が飛び交う。これは警視庁のEC155B1ドーファン「おおとり1号」(JA11MP)。

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1000を過ぎると天候も劇的に回復し、すっかり青空が広がった。飛び交うヘリもいよいよ珍機が多くなってくる(でも、今日ばかりはMH-60Sが一番の珍機だとは思うが・・・)これはアカギヘリコプター所有のカモフKA-32A11BC(JA6955)。二重反転ローターという独特のメカニズムを持つ、ロシア海軍の艦載対潜ヘリ、KA-27"ヘリックス"の民間モデルである。良くこんなもん買ったなあ・・・ペイロードが5tと大きいのが便利らしいが・・・これがエセックスに降りたら面白かったかもしれない。

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同じく、アカギヘリコプター所有の物資輸送に特化した1人乗りの並列ツインローターヘリ、カマンK-1200"K-MAX"(JA6200)。
この後、なぜかNASノーフォークから岩国にローテーション展開している米海軍の数少ない掃海ヘリ飛行隊、HM-14のMH-53Eが飛来、2機がエセックスに着艦後、上空飛行を始めた。そうか、MHMHって言ってたけど、やっぱりこっちのMHも参加するのね・・・しかしさすがに西側最大の重ヘリコプター、葛西に着陸はせず、見たところどうもネズミ園の方の上空をグルグル回っているようだ。東海岸から極東にローテーションでやって来たヘリパイは、日本に来たからにはやはりどうしてもネズミ園が見たいらしいw しかし、あんなウソで固めた?ファンタジーランドの上空にあれほど生々しい重ヘリコプターが飛び回るのは、オ○○ンタルランドからクレームがつかないのだろうかwwww ま、どっちもアメリカ文化だからなあ(そういう問題か!?)
そして、海自ヘリもSH-60が数機―確認できるだけで5機ほど―飛来し、上空をグルグル回り始めた。いずれも館山航空基地から飛来した機体で(SH-60K 8409・8412を確認)、うち横須賀地方総監座乗のSH-60Jと都知事を乗せたSH-60Kが各1機エセックスに着艦、艦内で都知事による治療設備などの視察が行われた。ヘリはこの他、HSL-51の第7艦隊司令機SH-60Bが飛来、着艦している。このように、軍用ヘリだけで一時は8機ほどにも達し、上空はお祭り騒ぎなのに加え、1030過ぎにはちょうど本日晴海を出港したイギリス海軍のフリゲイト、ケントHMS Kent F78が沖を通過して行くのが見え(本来ビーチングを朝撮ったらこちらの出港を撮りに虹の橋に移動するつもりだったのだが、あまりの葛西のエキサイトぶりにど〜でも良くなったwwww)、まさに葛西一帯はリアルに戦場のような騒ぎに。関東大震災など知るはずもないケントの乗組員は、いったい揚陸艦が一国の首都で何を訓練しているのだろうと目を丸くしたことだろう。

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さて昨年までならビーチングは1回で終わり、横須賀へ急ぐフネを追いかけて急いで駐車場に戻り追撃戦に入るところであるが、前述の通り今回は再び帰宅難民を降ろすためにもう1往復することになる。天候はどんどん回復して来ているので、そういう意味でもテイク2があるのは助かる。2度目は1140過ぎ母艦を出発、相変わらず浮いている(沈んだら大変だろうwwww)「おーしゃん さうす」とアクアラインをバックに向かってくるLCAC

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1151、2回目のビーチング〜

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朝の1回目に対して、すっかりいいライティングになっての2回目。

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ハイお疲れさま〜 全員を降ろしてから、エンジン落としてちょっと一服。

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そして、エセックスに帰るべく再びエンジン始動、バウスラスターを右舷側に向け陸上でパワフルに左回頭して行く途中、一瞬真っ正面を見せたところに、後方のエセックスが重なった奇跡?のショット!自分で言うなって?いやいやこれはなかなか撮れない!今回の訓練で1番のショットかも。うひょ〜!
この写真だと、左舷側人員装備モジュールの上部に小さな観測窓を設けたドームがあり、1人ワッチ?に座っているのがわかる。

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後ろ姿もパワフルだ! 一見、シャープネスをかけすぎたゴミつきのスキャン画像のように見える小さなつぶつぶは、すべてLCACが巻き上げた石混じりの砂埃。これが潮っ気混じりでバンバン飛んでくるからLCAC取材はたまらない。近くで撮っていれば終わった後には服も持ち物も砂と潮でデロデロになる。今回は幸か不幸かそこまでは近づけないので、心配は無用。

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そして、相変わらず浮いている(だから沈んだら大変だと(rywwww)「おーしゃん さうす」をバックにエセックスに帰って行くLCAC。これにて葛西海浜公園での訓練スケジュールはすべて終了、LCACを収容後エセックスは横須賀に向けて帰途についたのであった。
なお、エセックスは他の方のレポによると、この後横須賀には入港せずに一度東京湾を出たが、翌日9月1日に横須賀で開催された8都県防災訓練に搭載のMH-53Eとともに参加し、横須賀新港・猿島周辺で大活躍を見せたらしい。もちろん?残念ながらこちらは当分遣隊は取材はかなわなかった。

*1:葛西での訓練は水路一つ隔てていることもあり、距離は300mほどで砂埃や石つぶての心配は皆無 対して沼津今沢海岸での訓練は100mを切っているので見学・撮影には注意のこと