ウィキペディア・アカデミーおわる

KOFとほぼ同じ日程で地球の裏側ヨハネスブルグ南アフリカ)ではウィキペディア・アカデミーというワークショップが行われていました。ウィキメディア財団iCommons の共催で、ウィキペディアの編集の仕方を教える企画です。iCommons の Heather Ford さんがレポートしてくださっています(英語)。

The Wikipedia Accademies launch in Johannesburg
http://icommons.org/articles/the-wikipedia-academies-launch-in-johannesburg

アパルトヘイトの撤廃後、南アフリカでは国内で使われるアフリカ諸語11語を公用語化しました。いまインドと並んで公用語の多い国になっています。ですが識字率の低さや経済格差のおかげで言語間の完全な平等が実現されているわけではなく、まだまだ格差是正や言語教育普及のために課題が沢山あります。

私はそうした状況を打破する可能性が「誰でも投稿できる百科事典」ウィキペディアにあるのじゃないかと思っています。一定の学術的水準に達した大量の文章をしかも相当数の人間が共同で書く――それは長期的にみればその言語の発展に大きく寄与するだろうと思ってます。そしていわゆる高級言語、学術や科学技術を記述するのに一般には使われる言語では*1その変化は見えにくいけれど、そうでない言語では変化のインパクトは相当に大きなものだろうと想像します。全世界にいまあるといわれる数千の言語のうち、その言語で高等教育やあるいは中等教育を受けられる言語というのは案外に少ない。おそらく50もないのではないでしょうか。つまり大多数の人間は自分の母語ではない言語を習得しなければ現代文明の恩恵をうけられない。ウィキペディアはそんな世界へ楔を打ち込むひとつの試みでもあります。

ウィキペディア・コミュニティからは Jimmy Wales さんの他に、スワヒリ語版の Ndesanjo Macha さんとドイツ語版の Frank Schulenburg さん*2が講師役で参加しました。Ndesanjo は、iCommmons のレポートでも触れられていますが、もともとはタンザニアで古老から伝承の採話をしていたそうです。そして都会の住民に民族文芸とそこに伝えられる民族の記憶や知恵をどうやって伝えるか、そのメディアにずっと苦労していた。いまの彼は、ウィキペディアにその場を見つけています。歴史や物語といった民族の記憶、神話などの精神文化から、病虫害の避け方などの実用的な知識が、ウィキペディアによって部族の垣根を越えて共有される。それは遠大な夢かもしれませんが、タンザニアを拠点にする数人のスワヒリ語ウィキペディアコミュニティが確実に共有している目標でもあります。そしていま同じ夢が国境を越えて、バンツー語やハウサ語の話者コミュニティにも届こうとしている。

藤代裕之さん(id:gatonews)「ガ島通信」の「インターネットで人がつながるということ」というエントリに、私はヌデサンジョの取り組みをまっさきに思い出しました。インターネットで情報を共有するという技術的な変化はいろいろな可能性を開きました。そのなかには歓迎できないものもあるし、はっきり拒絶すべきものもあるし、また挫折に終わるものも多々あるだろうと思います。私自身も個人的体験のレベルでいろいろ不快な思いをしたこともあります(後述)。ですが人は何度でもやり直すことができます―生きている限りは。そして、インターネットなしにはありえなかっただろう出会いもまたある。

多くを望むこと、あるいは多くを望まないことよりも、絶望しないこと、その日の一歩を踏み出すことが、私たちに出来る最善のことなのではないかと思います。

追記:ビデオがあるようです。Jimmy Wales さんと Ndesanjo さんがしゃべってます。

*1:日本語もこれに属します

*2:最初言及し忘れましたが、現地南アのアフリカーンス語コミュニティもアシストしています。

13hz.jp からのお詫び

亡夫について「ウィキペディア日本語版の最高責任者」なる虚偽を流している人たちがいるのですが、そのなかのあるサイトから撤回と謝罪をいただきました。

http://13hz.jp

<お詫び>

本サイトに掲載されていた文章において、故・木津隆史様に対して虚偽の情報をもって中傷いたしました。木津隆史様とそのご遺族、並びにご友人とご関係の皆様に対しまして、この場を借りてお詫び申し上げます。

私は当13Hzにおいて、故・木津隆史様がまるでWikipedia日本語版の最高責任者であるかのような記述をいたしました。しかしWikipedia の運営責任者は米法人ウィキメディア財団(Wikimedia Foundation, Inc)団体*1であり個々の言語のユーザ集団に「最高責任者」なるものはおりません。また、Wikipediaの管理人の皆様がご存命でない方を責任者にしているとの虚偽を持ち出し、管理人*2の皆様をも中傷いたしました。しかしそもそも木津隆史様はWikipediaになんの関わりもありません。

(中略)

改めて、木津隆史様とそのご遺族、並びにご関係の皆様、Wikipedia管理人の皆様にお詫び申し上げます。

http://13hz.jp

勇気を持ってご自身の虚偽を認めてくださったことに感謝いたします。まだまだ虚偽を流している人たちがおりますので、本エントリをご覧の皆様には、お気づきになられましたら虚偽であることをその場にてご指摘、あるいは私までご一報いただければ幸いです。

*1:ママ

*2:ママ