英語で書く・長文篇
この前の「Re: 日本語はないほうがいい - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake」をつごつごさんが褒めてくださいました。わぁい。
tsugo-tsugo 英語, 教育, コミュニケーション I totally support her statement. //このエッセイ、TOEFLのWritingの模範解答かとかおもってしまった。
はてなブックマーク - tsugo-tsugoのブックマーク / 2009年2月18日
在米で研究しておられる方にこういう評をいただくのは心強いですね。このフォーマット自体は高校生の頃から知っていたのですが、実際に身についてきたのはやはり自分で英語を書くようになってきてから、二十台の後半からでしょうか。どこに書いていたかというと USENET、当時はまだ humanities.* が sci.* と独立しておらず Big 7 といっていましたが、Netnews の議論の中で自然と修練を重ねていったように思います。最近だとウィキメディア・プロジェクトのメーリングリストの議論ですね。誰かを説得しようとする・議論をする場面では、このフォーマットに沿って書くのが(欧文脈では)受け入れられやすいように思います。
英語で書く・長文篇
どのようなフォーマットかというと、私が意識しているのは次のようなものです。
- (前置き)
- 全文の要旨
- 論拠1
- 論拠2
- (論拠3)
- 結論
- (謝辞)
以下、前回の「Re: 日本語はないほうがいい」を使って説明してみます。
前置きはなくても構いません。今回はなぜわざわざ英語で書いたのかという説明をしています。これは本文に含めるとごたつくのを嫌って前に出しました。はじめての Newsgroup やメーリングリストに書くなら、「私は日本人です」等の簡単な自己紹介があってもよいでしょう。あまり長くしないことをお勧めします。長すぎると本文に入る前にスキップされて、それでおしまいです。
要旨をできるだけ前のほうに書きます。これは全文の結論の先取りでもあります。前置きが終わってすぐ、1文か2文にまとめます。要旨を述べる段落自体はもう少し長くても構いませんが、最初の2文までを読んで意味が掴めることを念頭において書きます。この部分は1段落でおさえます。今回は引用部から"Although complexity of Japanese writing system is our accepted wisdom, respectfully I disagree on his argument at three points"までの部分です。他の方の引用を含む分、少し長くなっています。
次に要旨で述べたことを、2つ以上の論拠で支えます。何も具体的に思いついていなくても、とにかく「2つの理由で反対です(支持します)」とまずは書きましょう。そのうち思いつきます。2つの論拠が作れないようなら、その議論は大抵の場合かなり弱く、他人にみせる段階ではないと思ったほうがよいように経験からは思います。逆に書いていて3つめの論拠がでてきたら、「3つの理由で」と書き換えます。といいつつ、今回はなぜか最初から "three points" と書きました。たぶん3つになるという予感があったと思われる。
それぞれの論拠についても、最初の1文か2文までで、論拠のおおまかな提示をすることは、要旨の場合と同様です。全体に、総ての段落の冒頭1文または2文までを読んだら、おおまかな論旨は取れるように構成するよう心がけます。
わたしはここで登場させる論旨は3つまでという制限を自分に課していますが、もう少し多くてもいいのかもしれません。4つも5つも出す人もいなくはありません。ただ、他の人たちの議論をみていると、人がきちんと読んでくれるのはせいぜい3つか4つという印象があります。4つ以上の論拠を並べる場合は、論拠だけ並べて出しておいて、集中して説明するのはそのうちの一部にしておいたほうがよいでしょう。多く出せばいいというものでもなく、逆に論を絞れない頭の悪い人という印象をもたれることが多いようにも思います。
結論は論拠で述べたことを援用しつつ、再度論旨を繰り返します。ここも1段落で抑えます。今回は"I expect my argument on the above is enough to reject his argument and points out its contradiction", "It seems so illogical that we need no further discussion" とレトリカルで微妙に煽りも入っていて、実はこれはあまりお勧めできない。強い言明だからというだけでなく、「矛盾」の部分を敷衍しているため、やや複雑な構造になっています。できるだけシンプルに書くのが、力強い議論の秘訣かと思います。
謝辞は議論ではあまり必要になることがありませんが、記事を書く上で協力を得た場合などには忘れないのが望ましいかと思います。また自分と近いことをいっていて、読者にも参照してほしい議論を紹介することも出来ます。あまり長くしすぎると論旨がぼけますので、ここもタイトに抑えたいものです。今回はとくに謝辞をつけませんでした。
そして投稿前。必ずスペルチェッカーにかけることをお勧めします。万能ではありませんが、やらないよりはましです。私はブラウザの内蔵スペルチェッカーと Gmail のものを併用しています。可能なら、すこし時間をおいて確認するのもよいでしょう。今回のわたしの場合も、アップロード後に見直しただけで、いくつかの間違いを見つけることになりました……。
英語で読む・長文篇
「高校生の頃から知っていた」というのは、ライティングの技法というより、長文読解の知識として塾でおそわりました。みなさまご存知の通り、日本の大学の入試問題にはたいてい英文読解の問題がでてきます。いわゆる難関大学といわれるところで300ワードほど、文学作品の一節もありますが、まとまった小文が結構多い。後者を読み解く技術として「英文のエッセイ(論説文)はこういう構造をもっているものだ」ということを教わりました。書き方を知るというのは読み方を知るということでもあります。「頭から読む」方法などで英文法の蓄積ができてきた方には、次の課題として、英文の文章全体の構造を意識して読むことをお勧めします。
また、ある程度まとまった量を読み書きする能力のある方には、自分が関心をもつ英文の Netnews やメーリングリストの議論に参加することをお勧めします。読むだけで情報量が増えますし、たまにでも書くことでライティングの力もつきます。いまですと Google Groups http://groups.google.com/grphp?hl=en である程度探すことも出来ますので、そこから初めてはいかがでしょうか*1。
偉そうなことを書いていますが、わたしも Usenet やメーリングリストでアクティブだった期間は正味はさほど多くありません。はじめたのは1315年*2ほど前ですが、ずっと同じようにアクティブだったわけではないので。けれども継続が力になるということはあって、また書いていれば必ず読んでくれる人もいます。国際コンベンションで「あなたの記事、読んでる」といわれるのもそのつど嬉しい驚きです。いま多少英語が使えているとすれば、それは趣味で続けているそうしたコミュニケーションの効用だろうなと思うのです。
お互いにのんびり、やれるところから、頑張りましょう。
Inspired by:
追記:
id:wiseler さんが、ほぼ同じ方法論を紹介しておられます。http://d.hatena.ne.jp/wiseler/20090209/p1。本エントリにない、テクニカルな側面についても扱っておられるので、ご一読をお勧めします。
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