井上晋の『賛否両論のための基礎知識』第13回
ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第13回
カナダのポップミュージシャンで俳優でもあるジャスティン・ビーバーが、司法取引によって罪を回避していたことニュースになりました。
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なんだか腑に落ちない気がするのですが、これが司法取引の一例です。
日本でも、司法取引の導入に向けた動きがあります。
法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会が6月30日開かれ、法務省が最終とりまとめ案を提示し、その中に「司法取引制度」が触れられています。
今回は、「使えるディベートセミナー12期」でも取り扱った、
このテーマについて考えてみましょう。
テーマは、
「日本は、司法取引制度を導入すべし」です。
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「裁判において、被告人と検察官が取引をし、被告人が罪状を認めるか、あるいは共犯者を法廷で告発する、あるいは捜査に協力することで、求刑の軽減、またはいくつかの罪状の取り下げを行うこと。」
とあります。
つまり、「やりました」と認めたり「僕もやりましたが、ボスはあいつです」と証言することで、罪が軽くなるという制度です。
この制度は、多くのメリットとデメリットがあります。
まずメリットですが、
・無駄な公判がなくなる⇒裁判官、検察などはより重要な事件に特化できる
・オレオレ詐欺や銃器・麻薬の密輸などの組織犯罪で黒幕に迫れる
などがあります。
つまり効率的に裁判や捜査が行えるということになります。
デメリットは、
・(罪を逃れる、軽くするための)偽証による冤罪
・高度な取引となるため、優秀な弁護士を雇える人(お金のある人が有利)
などがあります。
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ディベートでは、このメリットとデメリットがどの程度、
我々の生活に影響があるのかを比較していきます。
いわゆる「そのプランによるインパクト」を比較していくのですが、
一方で「そもそもこの制度は何を大切にしているのか」という
哲学も煎じ詰めていきます。
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後者の哲学を掘り下げてみましょう。
導入賛成側にある考え方は、「効率化」が中心にあるように思います。
じっくり審理を重ねるよりも、早めに妥協点を見つけよう
大きな犯罪を効率的に根絶していくには、小さな罪には目をつぶろう
という考え方のようです。
一方の否定側は、
「真理の追究」という哲学が背後にありそうです。
真実を見つけ審判を下すのが司法の役割である
そもそも真実を見つけるということは時間がかかるものであるが、
そのことが司法に正当性を与えている
という考えです。
この二つは、相反する考え方になります。
この考え方のどちらに賛同するかは、実は、選ぶ側の人間の価値観に大きく依存します。
司法制度取引に限らず、意見が二分するテーマには、メリットデメリットだけでなく、背景にある哲学(価値観)の違いが必ずあります。
そこに目を向けた判断ができるとより正しい(自分の考えにあった)判断ができるようになります。
私個人としては、「そこは、効率を重視してはダメでしょう。巨悪があるのなら、そんな姑息な手を使わずに、正面から突き崩すべきでしょう」という、少しあまちゃんな価値観があります。
もう少し端的にいうと、「「真実」や「罪、罰」というものは、《取引》するものではないでしょう。」という感覚です。
みなさんはどのように考えますか。
ではごきげんよう。