2007-11-03
■[小説][感想(ラ)]須賀しのぶ『喪の女王 8』〔流血女神伝〕(イ:船戸明里)

http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-601090-0&mode=1
さようなら女神。
さようなら、残酷で心優しい母よ。
喪の女王 8 流血女神伝 (流血女神伝シリーズ) (コバルト文庫)
- 作者: 須賀しのぶ,船戸明里
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (47件) を見る
神々の黄昏を迎えようとする世界。
その激動の世界の、常に真ん中を駆け抜けた少女がいた。
運命に翻弄されながらも、力強く生きた少女の名は「カリエ」。
その名の意味は、原初の光(カーリエ)。
そして「女神の娘」は全てを見届る。
色々な国、色々な思想、色々な人と、出会い、別れ、そして導かれた少女の物語はここで終幕となる。「女神の娘」として運命に翻弄されながらも、同じく女神に愛された「女神の花嫁」や、その他の多くの人に助けられた少女は、時代の節目を目撃する。
ルトヴィアに攻め込むのは、サガール兵を擁し苛烈な勢いで迫るバルアンが率いるエティカヤ。そしてユリ・スカナも謀略の交代劇により女王が変わり、同じくルトヴィアへと兵を向ける。疫病、外敵からの侵略、そして革命……、崩壊を迎えようとするルトヴィア。その渦中にまた、カリエの姿もあった。
大長編のクライマックス!! 読み応え充分の長編の完結巻、素晴らしかった。
- サルベーン。作中での最大のトリックスターと言える彼――サルベーン――がああいう形で再登場するとは思いませんでした。カリエとは対照的な感じで、ザガリア女神に翻弄されたキャラクターと言えるでしょう。なんにせよメナイク大僧正の境地に辿り着ける予感がありますね。色々ありましたが、彼としては穏やかで安息の時間を得られたように思えます。特に描写はなかったけど(笑)。
- バルアン。砂の覇王編終了後は、ただ血を欲する覇王なイメージが強いですね。でもシャナカーン(フィンル)を救うような描写があったのは唯一の救いでしょうか。でも、アフレイムの治世になった理由にシャナカーンの姿が浮かぶイメージが離れません。ここは想像の余地と言ったところでしょうか。
- ネフィシカ。弱さゆえに孤独で、でも人を求めずにはいられなかった女王。悲運な最後ですが、ザカリア女神に祈った願いはなんとか叶ったようです。グラーシカのことは彼女自身が選択したことですし、ドミトリアスの契約もあるので相殺された可能性もあるような気がします。
- グラーシカ。誇り高く生きた女性。ラクリゼほどではありませんが、彼女も常にカリエの味方だった数少ない人物でしょう。なんかこういう死に方すると、ビュコックさん*1を思い出しちゃいます。思想とかは全然違うんでしょうけどね。
- イダール。後半はサルベーンの替わりに作中のトリックスターを演じた感がありますね。しかし彼も最後には血の呪いから解放され、自分らしく生きることが出来るでしょう。ある意味、女神の運命とは余り関わりのないキャラクターだったようにも感じます。傍にいたアルガさんがよく出来た人でしたね。
- ミューカレウス。女神と契約した割には、意外と出番が薄くなったキャラクターかも。でもキチンと生き延びて、イダールと息があってそうな感じですね。ドミトリアスよりは柔軟な思考ができるタイプなので、領主としてはなかなかいい感じじゃないでしょうか。
- ドミトリアス。ルトヴィア最後の王。壮絶な最後……かと思いきや、ある意味で一番美味しいところを得たキャラクターなのかもしれません。いや、色々とあったんでしょうけどね。命以外のものは全て失ってしまった形になりましたしね。これも女神の契約からきているのかもしれません。
- トルハーン&ギアス。そういう形での勝負の決着ですか。うーん、彼らの運命の分かれ道となったであろうエピソードを『天気晴朗なれど波高し。』の続きで読みたいです。あるかな、続き……。
- ラクリゼ。「女神の花嫁」として翻弄されながらも、運命に立ち向かい、強く、美しく、そしてカリエを母のように優しく包み、そして姉のように強く導いたキャラクター。裏主役と言えるでしょう。その後はよく判りませんが、カリエの傍にいることは確実の様子。意外とトルハーンと相性が良いようなイメージが(笑)。
- エディアルド。ある意味、当然の帰結なんだろうけど、ある意味で吃驚! でも彼が幸せなら言うことはありません。それにしても生活感溢れ過ぎて……(笑)。
- カリエ。結局のところ、ヨギナをスタートとして、人生をかけて作中内地図を一周した物語と言えるかもしれませんね。
「おまえの人生は波瀾万丈すぎて面倒だ」
と言う言葉は、作者自身の言葉だったようにも思えます(笑)。
なんにせよ、終章を読んで得られた感動は、長編ならではの読み切った達成感と相まって素晴らしかったです。
昔、面白い長編がないかなーってな感じで軽く書いたらトンボさん*2に薦められて読み出したのが、この「流血女神伝」シリーズ。その物語の完結を味わうことが出来たので、感謝を最後に。
*2:ご存知 → http://maijar.org/ の管理人さん
一迅社
購入: 4人 クリック: 4回
購入: 4人 クリック: 4回
コメント






