Hatena::ブログ(Diary)

Chivalryの謎日記

2015-05-27 生存報告、しましょうか

 

 

······奥さん、最終更新日が一年半前ですってよ。

しかも、八ヶ月ぶりの更新を謝ったうえ、三月に予告までしてるのにこの様ですって!

驚きよねー。

······はい、というわけでお久しぶりです。ぶしどーくんです。

一年半ぶりの更新にも関わらず、本編の更新ではありません。ただの生存報告です。

この一年半、いろんなことがありまして、大学受験に失敗したり、ぶしどーくんとはまた別の名前(ペンネームが実は中学生の時から数えて五個くらいあります)でとある賞に応募して、最終選考直前で落ちて涙を流したり、誰に見せるわけでもなく三十路のオッサンとJKハートフルストーリーを書いたり······etc。

とりあえず、色々なことをやった結果、このブログの方が疎かになっていたのは言い訳のしようがありません。

しかし、この作品の事を忘れてはいません。

とりあえずあと一年······まだまだ忙しい日々は続きそうなので、ここに続きが上がることはありません。

ただ、待っててもいいぞ、という寛容な方は、どうせまた間に合わないんだろ、位の気持ちで待っていていただければと思います。

とりあえず、生存報告でした。

ではでは!ノシ

追記 矢代先生、応援してます! 自分が言うのも何ですが、書けないときは放置でもいいと思います。ガンバってください。

Byぶしどーくん

2014-01-06

私は帰ってきた! Byぶしどーくん

皆さん超お久しぶりです。そしてあけましておめでとうございます。ぶしどーくんです。

前回の更新から早八ヶ月……。メガテン4をクリアし終わった後、ジョジョASBが発売され、モンハン4が発売され、ゴッドイーター2が発売され、GTA垢発売され、そして極めつけに、ライトニングリターンズFF13が発売され……。

さらには大学受験が重なった事もあって、更新が年明けになってしまいました事を、深くお詫び申し上げます。

まぁそのお詫びと言っては何ですが、前回のあとがきでも書いたとおり、今回は文章量マシマシでお送りいたします!

ちなみに選択肢はわけが分からなくなった結果、くじで選択しました……。

なら聞くなよ、という皆様の声が聞こえてきそうですけれども、どうかこれからも選択肢制を続ける事をお許しください。

というわけで、どうぞ〜!

 

 

   

   ***

 

 

 

   第七話 〜別離〜 シーン4

 

 ――『抱いてよ』

そのルナの言葉に含まれた意味を理解できないほど、レイドは子供ではなかった。

 そして同時に、場の雰囲気に流されるままの子供でも、ましてや空気を読んで言葉通りに動くような大人でも無い。だからこそレイドには、この場でどういう行動をとるべきなのか、瞬時に判断が出来なかった。

(これは一体、どういうことなんだ?)

 今のルナは、明らかに正常では無い。何かに対して酷く怯え、判断能力が低下している。

 では、ルナを引き離し、落ち着くように説得すればいいのだろうか。

(いや、それも違う)

 ルナが正常な判断を出来なくなっている原因の一端には、怯えと同時に、幾分かの自棄が含まれているように、レイドには感じられたのだ。そして今、そんな状態である彼女を放置した場合、何か取り返しのつかない事態を引き起こしてしまいそうな、そんな予感がレイドの中にはあった。

 ではむしろ、望みのままに抱いてやるというのはどうなのか。もしくは、『抱く』というのを『抱きしめる』の意であるという風に濁し、煙に巻いてしまうと言うのは……?

(そのどちらも、きっとダメだろうな)

 ルナの言葉に乗せられた体で、彼女を抱いてやる事は簡単だろう。同時に、くだらない冗談を飛ばして、煙に撒くことだって難しくは無い。

 前者の行動をとったならばルナは確実にレイドに身を任せるだろうし、後者の手をとったならば……察しのいいルナは何かを押し殺したような笑顔を浮かべながら、『冗談、冗談』なんて嘯いて去っていくことだろう。

 だが、それは――。

(どっちも、正しいことでは無い気がする……)

 レイドの中に迷いが生じる。これから何をすべきなのか、ルナに何をしてやるべきなのか。

「…………っ!」

 それを敏感に感じ取ったらしいルナの身体が、小さくピクリと震えた。

「あ、あはは……やっぱ、そうだよね。いきなりこんな事を言われても、困っちゃうよね」

 ルナはそう言って、ゆっくりと腕に力をこめる。次第に伸びていく腕の速度は酷く緩慢で、まるで無理矢理レイドから離れようとしているようだった。

「あ、あの、さ……」

 ルナは続ける。まるで今生の別れでも言うかのような、寂しげで、小さな声だった。

「もしボクに何かあったら、レイドはどうするのかな?」

 爛椒に何かあったら瓩修Α▲襯覆聾世辰拭I畸淵譽ぅ匹紡个靴道箸Α◆愡筺戮箸いΠ貎余里垢蕕癲∈のルナからは抜け落ちているのだ。

「…………」

 それを理解した瞬間、レイドの体は動いていた。なぜかは分からなかったが、今ここでルナを離してはならないと、行かせてはならないと、強く心が動いたのである。

「レ、イド……?」

「…………」

 突然、無言で抱きしめられたためか、驚きに目を見開くルナに対して、レイドは何も言えなかった。

 ――どうにかしてルナを繋ぎ止めなくては。

 そう思った瞬間には、レイドの体は次なる行動へと移っていた。

「…………」

「え? え、えぇ? ちょっと!」

 ルナを解放した後、レイドはその手をとって、無言でルナを部屋へと招き入れる。そのまま後ろ手で扉をロックし、混乱するルナをベッドに座らせたところで、レイドの中にようやく理性と呼べるものが帰ってきた。

「……一体何をやっているんだ」

 レイドは小声でそう呟くと、自身の頭を小突いた。

「れ、レイド……? 大丈夫?」

「あ、あぁ、大丈夫、だよ……」

 顔を真っ赤にして、不安げな声音だと言うのに、この期に及んでまだレイドの心配をするルナを見て、レイドは自分自身に情けなさを恥じた。

(この様はいったいなんだ?)

 これではまるで、興奮して今にもルナを襲おうとしている強姦魔と同じではないか。

(ご丁寧にドアまでロックして……一体どういうつもりだったのか)

 理性と共にレイドの中へと帰って来た呆れの感情が、先ほどまでの行動を激しく詰る。

「……ごめん、ルナ。さっきまでの僕は、なんというか、その……、冷静じゃなかった」

 レイドは謝罪しながら、ルナに気付かれないよう扉のロックを解除する。

「君も身の危険を感じただろうし、帰りたいなら今すぐ帰っても――」

「……よかった。いつものレイドだ」

「――いいけど……って、ルナ、今何て言った?」

「え? だから、いつものレイドだ、って」

「…………」

 てっきり罵倒しながら去っていくであろうと予想していたレイドは、ルナの言葉に対して、呆気に取られた表情を見せた。

「僕は、君に酷い事をするかもしれなかったんだよ?」

「確かにちょっと怖かったけど、その……レイドのこと、信じてたから」

「は、ははは、ははははは……っ!」

 本当に、笑いしか出てこなかった。完全に、レイドの理解の範疇を超えてしまっていたのだ。もちろん、いい意味で、ではあるが。

「……ダメだね。ルナ、君にはホント、敵わないよ」

 レイドはかぶりを振ると、キッチンへと歩みを進めた。

コーヒーでいいかな? ……君の言ったことについて、もし悩みか何かがあるんなら、聞いておきたいしさ」

「……うん、そうね。なんだかそういう雰囲気じゃなくなっちゃったし。それなら、話を聞いてもらった方がいい……のかもしれない」

 ルナの言い方に釈然としない何かを感じ取りながら、レイドは思考する。

(抱いてほしい、か)

 一体全体、どういう事情があってそんな言葉を口走ってしまったのか、レイドにはさっぱり分からない。だが、何かしらののっぴきならない事情があるという事だけは分かる。

(なら、助けてあげたい、よね……)

 少年兵として生き、人体改造を受けて人間の感情をなくしてしまったレイドに、再び『心』というものを与えてくれたのはルナなのだ。そしてそのルナが、自棄になってしまうような……何かとてつもない問題を抱えている。だとしたら、力にならないだなんていう選択肢があるのだろうか。

(いや……ないな)

 そう。様々な事情を慮外のことと追いやっても、ルナは大切な仲間なのだ。ならば、レイドがとるべき行動は決まっている。

 だがしかし、不安要素がないわけでもないのだ。

(もしも……万が一、ルナの望みを叶えるほか方法が無いとしたら……)

 そう。ルナの話を聞いて、その結果として、本当にルナを抱いてあげることでしか彼女の力になれないという結果が訪れた時――。

(僕はそのとき、本当に彼女の力になってやれるのだろうか……)

 淹れ終わったコーヒーの、黒い水面を見つめながら、レイドは自問する。

 そこに映る白銀の美丈夫の顔は、揺れる波紋によって、確認する事はできなかった。

 

「あの、話すなんていっておいて、ちょっと申し訳ないんだけど……」

 ミルクで白く濁ったコーヒーを抱えながら、ルナは口火を切った。

「正直な話、詳しい事はレイドにも教えてあげられない。どうやったって、朧気なものにしかならなくなってしまうから」

「……それは、何かしらの口止めが入っているという意味かい?」

「それは……言えない、かな」

 その言葉こそが、何よりの答えだった。

 今現在ルナに起こっている問題には、確実に第三者の介入が――しかも、傭兵であるルナに口止めをするだけの実力を持った者の手が入っているという事になる。

 更に言うならば、今この時も、ルナはその第三者瓩龍式劼忙され続けているのかもしれなかった。

「…………」

「…………」

 先ほどまでの、弛緩した雰囲気などは当に霧散していた。今ここにあるのは、重苦しい沈黙だけだ。

(今はまだ、切り込むべき時じゃない)

 レイドは胸中で、逸る自分自身にそう言い聞かせた。

 この状態で本筋に切り込むのは、得策では無い。まずは少しずつ、氷を溶かすように周りから攻めていく必要がある。

「それなら……それならせめて、一体誰によってルナが追い込まれてしまったのか、それを教えてくれないかな?」

「それも出来ない。私は……あの人たちの名前も、あまつさえ顔すらも知らないから」

 ――名前を知らない。それが意味する事は一つだ。

(外部の人間……それもかなり高位の力を持った存在、か)

 名前を知らないという事は即ち、今この海上要塞にいる人間ではなく、また、ルナが顔をよく覚えていないという事は、それほどまでに気配を消すのが上手かったか、もしくは――。

(――ルナが直視できないほどに、圧倒的な力をもった存在か、だ)

 実力のある者ほど、彼我の実力差がはっきり分かるものなのだ。その点で言えば、いくらルナがこの『ナイツロード』という団体の中では弱小の部類だとはいえども、動物が自らの天敵を見るまでもなく判別できるように、己が敵う相手なのか否かは、一瞬で判別できる。

 そしてその結果、ルナにとっては顔を直視することすら出来ない相手だったと、そういう事なのだろう。

 そして、それらの情報を加味し、ルナの言葉――『自分を抱いて欲しい』という、その真意と照らし合わせた時に浮かび上がる答え。

 そんなものは、考えるまでもなかった。

(ハオウ、か……)

 大方、地上進行の手をこちらが――意図的にではなく、レッドリガの掌の上で踊らされての結果ではあるが――幾度となく防いでいることで、自身の地位に危機感を覚えたのだろう。

少なくとも、レイドの知る――もちろん、実物を見たわけではなく、レイドを改造した男の話していたことである以上、確証は無いのだが――ハオウは、そういった人物だったはずだ。

(……なるほど。そこで、こちらの戦力減退と同時に、自身が使える手駒を増やすために、ルナに目をつけた、か。確かに彼女の力は、全面的な対決になった際には、凄まじい威力を発揮するだろうし……)

 レイドは、床に目を落として縮こまっているルナを見つめる。

 ルナの持つ力は、小規模な戦闘や、中〜近距離においては、さほど役に立つものでは無い。

 だが、もし地上侵攻を企む魔族たちとの全面的な抗争になった場合においては、その限りでは無い。

 何せ、敵は某国軍幹部という地位にまで潜り込んでいるのだ。そんな巨大な相手と闘う場合、果たして有視界戦闘のような、軍団と軍団のぶつかり合いになるだろうか?

 その応えは猗櫚瓩澄もちろん、局地的なぶつかり合いは起こるだろうが、基本は一世代前の戦争と同じ。UAV(無人機)の飛び交う戦場だ。

 そこにおいて、ルナの果たせる役割は計り知れない。

 『魔法』で防護壁を張るのはもちろん、『魔砲』で超遠距離攻撃を行う事が出来るのだ。それも、一方的に。

 『魔法使い』になるのか、それとも『魔砲使い』になるのかというのは、個人の資質によるところが大きい。更に言えば、魔法という技術そのものを扱える総数が少ないのだから、戦闘における用途、目的に合わせた人数をそろえるというのは非常に難しい。特に、魔族には『魔法』を得意とする者が少ないため、その問題は人間以上に深刻なはずだ。

 だからこそ、ルナは魔族にとって非常に重要なキーパーソン足りえるのだ。

 人間が魔力を――それも、魔族から直接純粋なものを受け取った場合には、その魔力量を大きく上昇させる。

 普通人間の魔法使いにとっては、どれほどの魔力を使おうとも、余程の事がない限り威力は均一化されてしまう。それは『杖』というシステムがあるからだ。

 だが、ルナは違う。ルナの持つ『杖』は、東洋の陰陽道を組み合わせた特注のものだ。

 そしてそれを使用して魔法を使った場合には、その効果は均一では無い。

 『魔法』による防護や治癒は使い手の魔力によってその効果を変え、『魔砲』による攻撃はその威力を飛躍的に向上させる。

 まさしくルナの力は、魔族の力を振るうのにおあつらえ向きの力なのだ。

 だがしかし、人間が魔族の力を受け入れるにあたって、一つだけあってはならない事がある。

 それが――純潔。

 その純潔というのは、何も処女であるという必要は無い。並外れた神への信仰心や、まるでカンバスのようにまっさらな純粋さでも構わない。

 だがしかし、ルナは残念なことに、信仰心も、ましてやそこまで純粋な心を持っているわけでは無い。俗世に染まっているからこそ、ルナはレイドに恋をしているのだから。

 そして、そこから導き出される答えは、もう言うまでも無いだろう。

 即ちハオウは、今日、何らかの手段を持ってルナと接触し、そして、その純潔を奪うと宣言したのだ。

 ――魔力との親和性は、その人間がいかに絶望を抱いているかによって変わってくる。

 つまり、ルナの純潔を散らすにあたって、ハオウはルナが最も絶望するであろう舞台を準備するために、今日は手を引いたのだ。

 そしてもちろん、それを魔法使いであるルナが理解していないはずが無い。

 だからこそ、だからこそルナは、もはや時間がないと、レイドの下へとやってきたのだから。

(なんて、ことだ……)

 レイドは、自身の心の中に、どす黒い何かが広がっていくのを感じた。それがルナの置かれている境遇に対しての怒りなのか、それともハオウへの怒りなのか、それ以外のことに対する怒りなのかは分からない。

(もしかすると、これは……)

 レイドの中に一つの考えが浮かぶ。だがそれをレイドは自ら振り払った。

(いや、そうじゃない。僕の心の内にあるそれは、そんな単純な何かではないはずだ)

 言葉に出来ない、複雑な何かが、レイドの心の内で蠢く。

 だが、それでも、レイドには一つだけ言える事があった。

「ルナ……君は、君は必ず、僕が救って見せる。必ずだ」

 俯くルナの肩に手を置いて、レイドは続ける。

「君の事情は痛いほどよく理解した。君の言葉の真意も分かった。だから……だから僕も逃げずに言うよ」

「…………」

 俯かせていた顔を上げたルナの瞳は、まるで先ほどのコーヒーのように、ゆらゆらと揺れていた。だがしかし、そこに映るレイド自身の顔には、もはや迷いなど見られない。

「――僕に、君をください」

 その言葉と同時に、レイドはルナの唇へと、己の唇を重ねたのだった。

 

 

 

   ***

 

 というわけで、今回はここまでです。

前書きの通り、受験が重なっているため次回更新は三月ごろになると思いますが、どうかごゆるりとお待ちください。

ではでは〜ノシ Byぶしどーくん

2013-06-24

コンゴトモヨロシク…… Byぶしどーくん

皆さんおはこんにちこんばんは。ぶしどーくんです。

唐突ですが、皆さんに謝りたい事があります。

それは……三ヶ月もの間、更新をお休みしていることですっ!

 

なぜこうなってしまったかと言うと、今回の記事タイトルからもお分かりの通り……『真・女神転生検戮縫疋魯泙蠅靴討靴泙辰燭里任后

 

悪魔合体やら、魔人退治やら、合体事故やらと色々やりこみをしていたら、いつの間にか六月も後半……。あわや七月に突入しようとしているではありませんかッ!

しかしながら、この中途半端な状態でメガテンを放置するのも非常に後味が悪い……。

 

というわけで、皆さんには非常に申し訳ないのですが、メガテンを一度きちんとやり終えるまで、しばし待っていただけないでしょうか?

その代わりと言ってはなんですが、復活時には三話連続更新をしますので、どうかお許しをば。

 

あ、あと、選択肢に関してなのですが、『1』が二票、『2』が二票ということで、同数投票になってしまっているため、こちら(ぶしどーくん)側で上手いこと何とかしようと思います。

……まぁ、出来るだけ公正な決定をしようと思っていますので、ご心配なさらず。

 

……以上、近況報告でした。

 

ではではノシ Byぶしどーくん

2013-03-09

受験生の皆さん、お疲れ様でした!

皆さんおはこんにちこんばんは。ぶしどーくんです。

皆さん、この一ヶ月くらいはいかがお過ごしでしたか? ぶしどーくんは、シュバとポケモンカードで対戦してみたり、MGRRをやったり、友人たちとカラオケに行ったりと大忙しでした。

学年末考査? ……まぁ何とかなりますって!

そんなわけで、自堕落な生活を送っているぶしどーくんですが、こんなくだらないリアル事情とは打って変わって、本編はシリアス成分大目で進んでいきます!

というわけで本編、どうぞ〜。

 

 

 

   ***

   

   第七話 〜別離〜 シーン3

 

 

 俺の耳元で耳障りなアラート音が鳴る。妙に甲高いそれは、ほんの数秒の距離までミサイル――かどうかは定かじゃないが、とりあえず何らかの危険物だ――が迫ってきている事を示しているらしい。……アラート音一つ一つの意味なんかを初めに聞いちゃいるんだが、種類が多すぎて俺の頭じゃ理解できなかった。

 ……まぁ要するに、この音が鳴らなくなるまで逃げ回ればいいってことだ。

 俺は考える事を半ば放棄しつつ、脳内に俺の相棒――いかにも雑魚っぽそうな、爐里辰擇蕕椶Ε泪轡鶚瓩回避行動をとる姿をイメージする。

 思考とは即ち電気の流れだ。それを俺の能力で最大限まで増幅させたものを、頭を覆うように取り付けている機械(ルナとレイドが共同で作ったもので、何だかよく分からない機能がたくさんついている)が読み取って、爐里辰擇薛瓩離筌弔その動きをそのままトレースする。

 陸に空にと散々動き回った爐里辰擇薛瓩蓮⊃秒後、しっかりとアラート音の元凶――当初の読み通り、やはりミサイルだった――を回避してみせた。

「楽勝、楽勝」

『もっとヒト型らしい動きをみせてほしいんだけどね。何のために両手両足があって、自由に使える武装があるのか、よく考えて。アクロバティック飛行なんて、戦闘機にも出来るんだからさ』

「……へいへい」

 おのれレイド。ちょっと調子に乗ったらすぐコレだ。大体こちとら治りかけの腰抱えて付き合ってやってんだから、ちょっとぐらい好きなようにやらせろっての。

 ああだこうだと愚痴を胸中で吐いていると、再び鳴り響くアラート音と、同じくらい大きな音で鼓膜を突き抜けるレイドの怒鳴り声。

『エレク! 回避!』

「…………あ」

 次の瞬間、俺の機体は三方向からの集中砲火を浴びて、粉微塵に爆砕したのだった。

 




「うあ〜、難しいな〜!」

 俺は汗で額に張り付いた髪を払いながら、シミュレーションマシンの外へと飛び出した。後を追うように、レイドも隣のマシンから顔を覗かせる。

「エレクは状況判断能力は高いんだけど、どうにも対応力の低さが目立つね」

 俺のシミュレート結果が打ち出されているのであろう用紙を眺めながら、レイドが呟く。

「そりゃあお前、つい四半日前に始めたばかりのシミュレーションで完璧に対応できてたりなんかしたら、俺は自他共に認める馬鹿なんかやってねえっての」

「……ま、それもそうか。君がバカである事はどうでもいいとしても、確かに六時間前後の訓練で、満足がいくほど上手く操縦できるようになるはずがない。今のは僕の失言だったね」

「なんか納得いかねぇ発言があった気もするが、まぁいい。あながち間違いじゃねぇからな」

「…………エレクよ、そこはもう少し怒るべきところじゃないのか? 俺は最近、お前を見ていると不憫な気持ちになってくるぞ……」

「言ってる事は大概失礼だが、それでもウチのチームの良心はお前だけだよ、ホント」

 俺の事を心配そうな目で見てくるグーロからタオルを受け取った俺は、改めて背後に佇む二つの巨体を見上げる。

 まるで武者の如き厳格さを備えた、RDー7。その期待に搭載された兵器はどれも最新型かつ超高火力で、しっかりと使いこなす事が出来れば、この機体だけで小規模な軍隊一つと同じだけの働きが出来るだろう。

 ……ちなみに、俺はこいつに乗るなどと息巻いていたが、実際に一度シミュレーターを起動してみた結果、絶対に乗りこなすのは不可能だという結論に至った。操縦方法が、あまりにも複雑すぎるのだ。

 コレをまるで――いくら自分が開発に携わっているとはいえ――自分の手足であるかのように使いこなすレイドには、畏敬の念を抱かざるを得ない。

 そして、そんな化物スペックのモンスターマシンの隣に立っている、まるでマネキンのような機体――。

 これこそが、俺が乗ることとなった。ERC―T・2。

 詳しい説明は(俺が理解できなかったため)省くが、簡単に説明をすると、『魔法と科学の結集によって生み出された、思考トレース機能持ちのマシン』ということらしい。……レイドに言われた事をそのまま文字にしてみたが、やはり意味が分からない。

 まぁ要するに、俺の考えたとおりの動きをする、という事らしい。

 そんな俺の分身的な動きをするという事もあってか、俺はこの爐里辰擇薛瓩髻⊆分の『相棒』と呼べるくらいまでには、この六時間の間で気持ちが変化していた。

「それにしても、『魔法』ってのはスゲェ技術なんだな。頭で考えたとおりに機械が動くように出来るなんて、まるで夢のようなことまで出来ちまうんだからさ」

「別に『魔法』が万能だってわけじゃないんだけどね。あくまでコレは、ルナの天才的な魔道具作成のセンスがあってこそのものだよ。彼女以外の誰が研究に携わったとしても、コイツは完成しなかっただろうね」

「なるほど、『魔法』もすごいけど、それ以上にルナのヤツが凄いってことか」

 と、そこまで言ったところで、俺は一つの違和感を感じて周囲を見回す。

「そういや今日、ルナのやつを見てないんだけど……」

「確かにそうだね。初起動のときは、絶対に顔を出すって言ってたんだけど……グーロは何か知らない?」

「……いや。俺も見てないな」

 俺たち三人の間に沈黙が流れた。その空気を断ち切るように、レイドが口を開く。

「まぁ、何か外せない用事でもあったか、もしくは疲れて寝てるとかじゃないのかな? あんな任務があった直後だし、今日の事を忘れていてもおかしいことじゃないさ」

「……ま、アイツちょっと抜けてるところあるし、そうかもしんねぇな」

「そう……だな」

 それにルナのヤツ、案外職人気質なところもあるし、意外と部屋で魔法具作りに凝ってたりしてな。……というか、一度考え出したらそうとしか思えなくなってきた。

「まぁいいや。俺は今日もう上がるわ。お疲れ〜」

「……またな」

「しっかりと身体を休めるといいよ」

 俺の言葉に、適当な返事を返してくる二人。俺はその言葉を背に受けながら、惰眠を貪るべく部屋へと向かったのだった。





 レイドは一人、団長室へとその足を進めていた。エレクと別れた後、グーロに念のため『ナイツロード』外周を回ってもらうように頼んでおいたレイドは、自身の目的を果たすべく、団長であるレッドリガに直接メッセージを送ったのだ。

 ――『二人きりで話がしたい』と。

 その要望は妙にあっさりと受諾され、件のメッセージを送ってから三十分もしないうちに、レイドはレッドリガとの面会を果たすことと相成ったのである。

 団長室へと一歩近付くたびに、身体の底から震えがせり上がってくる。前回団長室を訪れた際には、生死の境をさまようほどの傷を受けた。その時の恐怖が、今なお身体の奥底に焼きついているのだ。

 その震えを、レイドは無理矢理押さえ込んだ。

(そうだ。今日は闘うために来たんじゃない)

 レイドは自身に言い聞かせる。

 そう。今回レイドが団長室を尋ねる目的は、あくまで猩辰鬚垢覘瓩燭瓩覆里澄0貪拂砲瓩弔韻蕕譴燭△了とは違い、既にレッドリガの真意を理解しているレイドには、戦う気などさらさら無かった。

(まぁでも、やっぱり納得はできないんだけど)

 理解することと、納得することは違う。レッドリガの真意の中にある、理不尽な部分を理解することは容易い。そして、それが目指しているところを理解する事も、また容易いことだ。

 しかし、理解したからといって、それを素直に受け入れる事が出来るかといえば、答えは否だ。理性的な部分と、感情的な部分の違いと言い換えてもいい。

「結局の所、気に入らないんだろうな」

 レイドは、自身の気持ちをそう結論付けた。

 レッドリガは、仲間思いの人間だ。今回の一件だって、レッドリガの考えが正しいし、きっと真相を知ったとしても、当事者である彼――エレクは、笑って済ませるのだろう。

 自身の身に一体何が起こっていたのかを聞いても、その持ち前の明るさと、そして感情的に生きる、エレクのいい意味での馬鹿さが、それを全て受け入れてしまうのだろう。

 それが、レイドには気に入らないのだ。

 当事者が許している事を、外野がとやかく言うのは間違っている。それくらいは誰にだって分かることだ。

しかしそれでも、レイドは許せないのだ。

 誰かのためといいつつ、自身の考えだけで物事を動かす、レッドリガのその態度が。

 最終的にいい結果を残すのだから、それでいいじゃないかという、ある意味自己中心的な、その思想が。

レッドリガが考えているのであろうその全てが、たまらなく許せないのだ。

 だからこそ、レイドは歩みを止める事無く、団長室へと進んでいく。その瞳には、文句を言うべく煌々と燃える炎を灯して。

 そうして、レイドが団長室へと辿り着いたころには、すっかり恐怖は消え失せ、レイドの身体の中にはレッドリガへの純粋な怒りのみが渦巻いていた。

「さぁ、行こうか」

 レイドは一度深呼吸をすると、勢いよく団長室の扉を開け放つ。

「おや、随分と早い到着ですね」

「……あなたには言いたい事がたくさんありますから」

「そうですか。それは恐ろしいでね」

 冗談めかしてそう言うレッドリガに相対すべく、レイドは一歩踏み出した。

 そして、その身体が団長室へと入りきると同時に、自動でドアが閉まっていく。

 それを見たレイドは、はっ、と鼻で笑った。

「別に退路を断つ必要なんてありませんよ。今回はあなたと話をするために来ただけですから。お望みなら、舌戦くらいはやってあげても構いませんが」

「……ふふ、それはそれで楽しそうですね」

「……へぇ? 言いましたね?」

 レイドはレッドリガを挑発するかのように、眉を吊り上げて言った。

「じゃあお尋ねしますが、僕たちのチームに散々虚偽の記載をした依頼を回してきたのはなぜですか? これは立派な背信行為、初期契約違反になると思いますが?」

 実を言えば、こんな質問はどうでもいいことだった。依頼の内容がうそに溢れていた理由は、既に九割九分九厘分かっているし、初期契約に違反しているからと言って、今更この『ナイツロード』を去る気も無い。第一、殺人――正確に言えば、レイドたちが主として請け負っている依頼の内容が、だが――を生業にしている自分たちが、『背信行為があったからやめます』といったところで、じゃあこれからどうするのだという話だ。経歴のロンダリングをするのにも、ある程度のコネが必要になる。そしてそのコネを利用するためには、『ナイツロード』という業界さいい大手から嫌われていてはダメなのだ。

(まぁそもそも、僕はココをやめるために話をしにきたわけじゃないしね)

 そう。今の質問は挨拶のようなものだ。ボクシングで言うならば、相手との距離を測るために打つジャブのようなもの。大した意味を持った言葉では無い。

 案の定、レッドリガの返しも、レイドの想定していた通りのものだった。

「あなたには既に、察しがついているんじゃ無いですか?」

「話が早くて助かります」

 レイドは一呼吸置くと、この部屋に来た理由、即ち猩辰傾腓き瓩瞭睛討鮓にする。

「あなたが虚偽の記載を混ぜてまわしてきた依頼……。僕たちが寝込んでいて、エレクが現地で協力者を得て推敲していた依頼についても加味してみると、いくつかの共通点が見つかりました」

 言いながらレイドは、右手の転送装置から映写機を取り出し、レッドリガの背後の壁へと投影を始める。いくつかの図表が浮かび、その中から三つほどが前面へと押し出された。

「この三つの依頼……知らないとは、言いませんよね?」

 そう。今投影されたこの三つの図表は、それぞれ研究所潜入任務、日本での戦争回避任務、そして先日の『コード・メイジャー』事件について書かれたものだった。

 それを見たレッドリガは、特にあせる事も無く、鷹揚な態度でうなづいてみせる。

「えぇ。そして虚偽の記載をした事も確かです。これに関しては、前回あなたとお話をした際に、既に分かっていたことだと思いますが?」

「そうですね。これらの……いえ、正確には、前半の二つの任務ですが……ともかく、今の会話の文脈からすると、我々に回される任務はその内容の新旧を問わず、あなたの手引きであった事は、前回の会合でも確認済みです。その上で、僕の予想を聞いて欲しい」

「いいでしょう」

 レッドリガが応えたのを確認してから、レイドは新たな図表を前に押し出す。

「これら三つの任務に共通していること……それは、全てに魔族が関わっているという事です。研究所の潜入任務においても、依頼の内容上では魔族とは一切関係ありませんでしたが、詳しく調べていくと、研究所で研究されていた実験体、及び試作品は、すべて魔族の組織へと流されていました」

 レイドは流れるように、次の図表を表示する。

「そして、遊園地での戦争回避任務……エレクが相手をしたという部隊の特徴を追っていったところ、某国のとある特殊部隊が引っかかりました。そしてその特殊部隊を指揮している人物は、とある魔族組織の幹部でありながら、某国の軍部に深く入り込んでいる事が分かりました」

 いよいよ最後の図表が、映写機によって前面に押し出される。同時に、スパートをかけたようにレイドの語調も高まっていく。

「そして最後の『コード・メイジャー』事件。この一件では、もはや言い逃れが出来ないほどに深く魔族が関わっていた! そしてその全てが、裏で繋がっているんですよ!」

 レイドは団長室の机を、全力をこめた拳で殴りつけた。一瞬で机が崩れ、木片へと変わる。

「……団長。ハッキリ言って、僕はあなたのやり方が気に入らない。確かに、あなたがエレクにさせたかった事も分かる。そして、それをしなればいけなかった事も……そう、エレクを覚醒へと導かなければいけなかったことも分かる! でも、こんな、こんな方法は許されていい事じゃないんですよ!」

 凄まじい剣幕で、レイドはレッドリガへと迫る。それでも鉄面皮を崩そうとしないレッドリガの胸倉を、レイドは力強く握り締めた。

「業界でも有名な暗殺者に命を狙わせ、郵送部隊の人間に、エレクをわざと現地に残したまま撤退するように命令し、何度も死の淵に立たせて! 同種の人間と殺し合いをさせるためだけに、都合のいい依頼をでっち上げて! 全て、エレクを覚醒させるためだけに……いや、それどころか、あんな危険な存在に……、エレクという存在を意識させるためだけに、あなたは全てを仕込んだんだ!」

 そう。ナチュラルと対峙していた時に、レイドは『全てあなたの掌の上だったという事ですか』と、そう呟いた事があった。エレクがあの場、あの時に覚醒すること……それこそが、レッドリガの望みだったのだ。何度も死の淵に片足を突っ込み、覚醒の準備を整えてきたエレクが、この地上に存在する全ての生物の中でも最も凶悪な存在に、目をつけられる必要があったのだから。

「あなたは、エレクに――ハオウを殺させようと、そう目論んでいるんですね?」

「……既にそこまで知っているのですか」

「あなたも知っている通り、僕は向こうの研究所で生み出された存在です。その時に、組織の概略図くらいは知っていましたよ。そして、今回の一件、魔族と全面的に争うと分かった時点で、地上の支配者である彼と争うことにもなるのかもしれないと、薄々感じてはいましたから」

「そう、ですか……」

 今まで鉄面皮を保っていたレッドリガの表情が、一瞬だけ困ったように歪む。それを隠すように、レッドリガは口を開いた。

「……確かに私は、彼にハオウを殺させるつもりでいます。それが彼にとって、一番幸せなことですから」

「例えそれが、エレクに非業の死を運ぶ確率が高くても……ですか?」

「ええ。その通りです。私のやっている事が以下に非人道的なことであろうと、私は私の方法で彼に幸せを運んであげるつもりです。私のやっている事は『正義』ではありません。むしろ、彼を最も死へと近付けるような方法をとっているのだから、『悪』であると言ってもいいかもしれません。……ですが、痛みを伴わない幸せが『正義』だと言うのであれば、そんなものは犬にでも食わせてしまえばいいのです。痛みを伴う幸せこそが、人が最も必要とする幸せなのですから」

「僕に言わせれば、人の命を削る事を幸福の価値基準にするあなたの考えこそ、犬に食わせてやりたいですよ」

「そこは意見の相違ですね。……まぁ、こればかりはどうしようもないことですが」

 レイドはレッドリガの襟から手を離すと、踵を返して歩き始める。未だに図表を表示している映写機を腹いせに踏み砕き、扉に手をかけた。そんなレイドの背中に、レッドリガの声が投げかけられる。

「……机、弁償していただきたいのですが」

「背信行為をしていた分のツケだと考えてください。安いものじゃないですか?」

「おや、意外と手厳しい事を言いますね」

「……それでは」

今度こそ部屋を出るべく、扉に掛けた手に力を入れたレイドへと、再びレッドリガが声をかけた。

「そうそう、そう言えば、もう一つ言っておかなければいけないことがありました」

「……なんですか?」

 気だるげに振り返ったレイドに対して、レッドリガは唇を吊り上げて言った。

「実はですね――」





 レッドリガとの爐話瓩鮟えたレイドは、自身の部屋の扉の前で蹲る、一つの影を見つけた。その影の正体は、近付くまでもなく分かった。

「……ルナ? 一体どうしたんだい? 今日は試運転に来なかったけど、調子でも悪かっ――」

 レイドの言葉は、ここで途切れた。突然立ち上がったルナが、突然体当たりをかますかのように、レイドへと抱きついてきたからだ。

「ル、ルナ、一体どうしたの……って」

 困惑の声を上げたところで、レイドははたと気付いた。

(震えてる……?)

 そう。ルナのその小柄な身体は、小刻みに震えているのだ。まるで、怯えるかのように。

「ルナ……何があったんだい?」

「…………」

 真剣な表情と声音で尋ねるレイド。その問いかけを無視して、ルナは口を開く。

本当にか細い声で――。

「――ねぇ、抱いてよ」

「…………え?」

 突然突きつけられた言葉。その言葉に対して、レイドは――

1、ルナを引き離して、一体何があったのか聞いた。

2、「それをルナが望むなら」と、その場で抱いた。

3、ルナを落ち着かせるべく、無言で抱きしめ、部屋の中へと招き入れた。

 

4、「何か混乱しているみたいだね」と、部屋へ送り返した。

 

 

 

   ***

 

はい、今回はここまでっ!

そして、いよいよやってきましたエロ選択肢!

果たして初期よりも大分閲覧数が減ってしまった今、多数決をとるほどのコメントが来るのかどうか!

まぁとりあえず、一票とか二票でも滞りなく進める予定ではありますが。

ではでは! ノシ Byぶしどーくん

2013-01-20

もう一月も後半ですよ…… Byぶしどーくん

皆さんおはこんにちこんばんは。ぶしどーくんです。

いやぁもう一月も終わりますねぇ。時の流れは速いものです。

この作品も、せめて今年中には最終話まで進めたい……と思っております。

頑張るぞ! おー!

というわけで、早速本編更新です! ではでは、どうぞ〜!

 

 

 

   ***

 

   第七話 〜別離〜 シーン2

 

 その日ウチモトがその現場に居合わせることとなったのは、全くの偶然と言っていい。

 今回も何かしらの怪我を抱えて帰ってきた同僚のことを考えていたせいで、普段より眠りが浅かったという事もあるだろう。おかげで早起きしてしまったので、ふと散歩をしてみようなどという考えが浮かんできたこともあるだろう。

 とにかく彼は――ナイツロード発足初期から組織の一員として働いてきた、ベテラン傭兵であるウチモトは、本当にたまたま、偶然、奇跡的な確立で、その場に居合わせてしまったのだ。

 まず視界に入ってきたのは、黒い二つの影だった。大きなものと、小さなもの。その二つの黒い影が、彼の知り合いを――同僚の一人であるルナ・アシュライズを囲んでいると気付いたのは、影に気付いて一拍置いた後だった。

 ウチモトは分析する。

 ルナを囲んでいる二つの影は、彼の記憶の中に存在する人物では無い。そして同時に、ルナにとって友好的な知り合いであるという可能性もない。もし友好的な関係であるならば、ルナはあのように怯えた表情はしない。

 ――即ち、敵。

 一秒にも満たない思考時間の内にそう判断したウチモトは、即座に戦闘体勢をとる。彼の丸い身体がまるで猫のようにしなり、体型に見合わない俊敏な動きで駆け出した。

「邪魔だ」

 だがしかし、一歩目を踏み切った直後から、ウチモトの足は動かなくなった。だというのに、ウチモトの視界は前へ前へと動いていく。

「…………」

 一体何が起こったのかと、ウチモトは視線を己の下半身に向け、そして絶句した。

 ――そこにあるはずのウチモトの下半身が、存在しない。

 目を見開いたウチモトは、重力に引っ張られた上半身と共に下降していく視界の中で、後方に倒れている自身の下半身を見る。

 そしてそこで、ウチモトの意識は途切れた。





「あ、あぁぁ……」

 悲鳴さえも出なかった。偶然通りがかったのであろう、エレクの友人である団員の胴体が、上下にすっぱりと両断されてしまったのだ。その断面はとても鋭利で、胴体が別たれてからしばらく経ったというのに、未だに流血が起こらない。あまりにも綺麗に切断されているのと、ウチモトの胴体を切断した一撃――ハオウと名乗った男の背後に控える、小柄(あくまで目の前の大男に比べれば、ではあるが)な男の繰り出した氷の刃によって過冷却されたことによって、切断面に薄い氷の膜が出来てしまっているのだ。

「ひ、ぃっ!」

 かすれたような金切り声が、喉の奥から競りあがってくる。しかしそれも、恐怖が蓋をしているためか、やはり音として放出されることは無かった。

「おい」

 ハオウが背中越しに、ルナの同僚を殺した男へと声をかける。

「きちんと処理をしておけ」

「当たり前だ。このナゼが、そんなことに気付かない間抜けだとでも思っているのか、能無しめ」

 ウチモトの遺体を黒い繭のようなもので包み、海に投げ捨てながらそう言ったナゼに対して、ハオウは失笑した。

「ククク。よく吼えるなぁ、人間よ? 貴様がそのような態度を取るという事は……」

「いっ、ぎぃ……っ!」

 ハオウは突然腕を伸ばすと、ルナの髪を掴み、そのまま持ち上げる。そしてそのまま、ルナをまるで商品であるかのように、小柄な男の方へと掲げた。

「爛灰讚瓩呂い蕕覆い箸い事か」

「……冗談を本気にするな」

「ハッ、今回はそういう事にしておいてやろう」

「あぅっ!」

 ハオウは小柄な男――ナゼを嘲笑するかのように鼻を鳴らした後、背後に向かって乱雑にルナを投げ捨てた。ソレを見たナゼが、嫌そうに両目を眇める。瞬間、生暖かい怖気がルナの身体を包んだ。

「……爛愁讚瓩麓分が使うのだから、もっと丁寧に扱ってもらいたいものだな」

「フン、全く持って度し難い。人間というのは、やはり下等な存在のようだな!」

「なんとでも言っていろ。魔法少女の素晴らしさが分からん貴様の方が、自分としては信じられない。……考えてもみろ、ここまで完璧な装いで、なおかつ資料によれば天賦の才まで持った可憐な少女が、自分のモノになるんだぞ? 心踊らぬ方がおかしいというものだろう。そもそも――」

「分かった、もういい。このハオウにそのようなくだらない話を聞かせるな」

 何気なく、まるで日常会話のように交わされる言葉。その言葉の意味が、ルナには理解できなかった。

 身も心も捧げる? 自分のモノにする? 自分が使う?

 これでは、これではまるで――自分が、彼らの下へと連れて行かれてしまうかのような話の流れではないか。

「い、やぁ……」

 か細い声が、喉を通して零れ落ちる。この悪鬼どもの下へと連れて行かれる? 冗談ではない。この悪鬼どもに連れて行かれるくらいなら、ここで惨たらしく殺された方がマシだと、ルナは素直にそう思った。

 現実は無常だった。ルナの声を聞きつけたらしいハオウの顔が、ゆっくりとルナの方へと向けられる。その口角が、まるで口が裂けたかのように大きく釣り上がった。

「どうやら自分がこれからどうなるのか察したようだな。……ククク、聡い女は好きだぞ、その辺の凡夫共よりも余程『使い道』がある」

「いや、いやっ……」

 ルナは弱々しく首を振った。いつの間にか失禁していることにすら、恐怖で気づく事が出来ないでいる。そんな絶望の表情を楽しげに眺めながら、ハオウが続ける。

「まずは貴様の身体を魔族のものへと作り変えてやる。幸い貴様は『魔法』を扱う人間だ。となれば、我ら魔族へとその身体を変えた暁には、今までの数十倍、いや、数百倍の魔力を取り扱えるようになる。……どうだ、嬉しいだろう?」

 嬉しいはずがなかった。身体を作り変えると言われて、喜ぶ人間が一体どこにいるというのか。しかし今は、ルナに否定という選択肢は無かった。涙と鼻水と冷や汗とで、その幼い顔をグチャグチャに濡らしながら、ゆっくりと首を縦に振る。

 ソレを見たハオウは、表情の中に愉悦の色を深めつつ言った。

「では、コレを受け入れるがいい」


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 ハオウが左手を差し出す。その掌に、ルナの顔と同程度の大きさをした黒い魔力の塊が浮き上がる。小さく揺らめく炎のようなソレは、見た目に反して超高密度な魔性を帯びている事が、ルナにもひしひしと伝わってくる。その邪気に当てられたのか、競り上がってくる吐き気。

極度の緊張状態にあるためか、ルナはその奔流を抑える事ができなかった。

「うっ、げえぇ……」

 胃酸と共に吐瀉物が吐き出され、つんと鼻を突く臭いがルナの鼻腔をつんざく。

 ハオウは吐瀉物に濡れたルナの顔を気にする事もなく持ち上げ、唇に左手をあてがった。

「恐れることは無い。コレが終われば、貴様は人間という脆弱な殻を抜け出し、偉大なる魔族へとその種を変えるのだ。まるで世界が変わったかのような爽快感が得られることだろう!」

「がっ、――――――――――っ!」

 高らかな叫びと同時に、遠慮なく突き込まれる左手。ルナの顎が外れそうになる事も、無理矢理突き入れられる魔力によって、ルナの身体が痙攣している事もお構いなしに、ハオウはルナの身体を作り変えていく。

 しかし、その間隔は長くは続かなかった。突然、ハオウの手が弾かれたかのようにルナの口から飛び出したのだ。

「むぅ?」

 ハオウが己の左手を怪訝な表情で見つめる。そして数瞬の後、大口を開けて笑い始めた。

「ククッ、クハハハハハハハ! そうか! 貴様、いまだ純潔を保っているのか! クハハハハハハハッ!」

「な、なななななな何ぃっ! それは本当かッ!」

 ハオウの言葉を受けて、ナゼが目をぎらつかせる。ハオウは笑いが堪えきれないとばかりに、顔を抑えながら言った。

「本当だ! この小娘、生殖が可能な年齢になっているというのに一度もした事がないらしい! ハハハハハハ! コレでは魔に堕とす事はかなわんなぁ!」

「ハ、ハオウ! 早く帰るぞ! 処女魔法少女など滅多にお目にかかれるものじゃない! それなりの準備をしなければならん!」

「……なぜだ? 連れ帰って散らしてやればいいだけの話だろう」

「うるさい黙れ! ロマンの分からないやつが口を出すんじゃあないっ! 殺すぞっ!」

 本気の殺気を放出しながら、ナゼがハオウに対して詰め寄る。あまりの気迫を受けて、ハオウは呆れたように息をついた。

「……もういい。貴様のしたいようにするがいい」

 ハオウはナゼを押しのけると、ゆっくりと歩き始める。そしてそのまま、ルナに対して背中越しに声をかけた、

「……明日、同じ時間に迎えに来るぞ。精々それまで、別れの挨拶でも済ませておくことだなぁ! ククククク、クハハハハハハハハハッ!」

「また明日、迎えに来よう。……自分の嫁よ」

 ハオウの後に続いて、ナゼも朝靄の中に消えていく。その背を見送りながら、ルナは恐怖にその身体を震わせ続けていた。

 

 

   ***

 

はい、今回は以上です!

……ナゼさんがいると、シリアスが一切シリアスになりませんね。困ったものです。

次回か次々回には(本当に)久しぶりの選択肢を入れようと思っていますので、その際にはよろしくお願いします〜。

ではでは! ノシ