スーサイド・スクワッド(2016)

製作国:アメリ
監督:デヴィッド・エアー
脚本:デヴィッド・エアー
音楽:スティーヴン・プライス
出演:ウィル・スミス/ジャレッド・レトマーゴット・ロビー 他
★☆☆☆☆


ハーレイ・クインちゃんをひたすら愛でるための123分間

オッス! オラ貧民! ちょっと正社員とかIT社長とか人生をエンジョイしているっぽいプロブロガーとかへの殺意が高まりすぎて鼻血が出たので、マンガの悪役で編成された特殊部隊が世界の危機を救うとかいう、あらすじ読んだだけでIQが音を立てて下がっていく感じの映画を1100円ポッキリで観てスッキリしようと思いまして、特に意味も無く山ほど人が死ぬ様を見物できるのを期待しつつ先週の14日にTOHOシネマズ新宿に行ってきたんですよ。
で、観ました。はい、期待ハズレすぎ。
何から何までコレジャナイ感があふれており、書き出したらキリがないんですが、特にダメだと思った点を三つ挙げます(以下、多少ネタバレあり)。


まず、そもそも人が死なない(そういう描写がほとんどない)点。あのー、本作の敵役による、なんか変な魔術的なもので、その辺にたまたま居合わせた人間がちょっと高級なショッカーの戦闘員みたいな化け物に変えられて、スーサイド・スクワッドを襲ってくるんですよ!と説明するのもバカバカしい。もうね、ああいうCG丸出しの連中と主人公たちが戦うっていう絵面だけで胃もたれするんですよ。そういうの、マーベルの映画で、もう見飽きたからと。
むしろ『ダイ・ハード』シリーズとかセガールさん主演の映画とかに出てくるような普通の人間だけど凶悪なテロリストを敵役にすべきだったと思うんですね。で、スクワッドの連中がテロリストたちの予想の斜め上を行く超凶悪な攻撃を仕掛けてくるので、すっかり翻弄されまくった挙句、なす術も無く追い詰められ、生首をスポーンスポーンと景気よく日本刀で斬り飛ばされたり、頭部をバットでグッチャグチャになるまで殴打されたり、生きたまま両腕両脚もぎ取られたりとテロリスト風情にふさわしい愉快な死に様をさらす姿をゲラゲラ笑いながら鑑賞するっていうのが本来あるべき姿だったんじゃないの?と思うんですよね。


次、そもそも全然スッキリしない点。本作は、よくよく整理して考えると、ただの内輪もめなんですよね。もともとスーサイド・スクワッドの一員に無理やりさせられた「魔女」のお姐ちゃん(カーラ・デルヴィーニュ)が、黒幕のババア(ヴィオラ・デイヴィス)のあまりのブラックぶりにブチ切れて反逆したっていう話ですから。そんでそれを極秘裏に処理するためにスーサイド・スクワッド出動!ってことで、マッチポンプ」ってこういう時に使う言葉なんだよって学校で教える時にうってつけだなあと思いました。
つまり全員が黒幕ババアの掌の上で転がされてるだけで、しかも、この構図が最後まで変わらないんですよ。どう考えても、あのババアは最後にぶっ殺されるべきだと思うんですが、それをやらないんでカタルシスの無さがハンパない。スッキリしようと思って観に来たってのに逆にストレスたまってしまって最悪です。


それから、そもそも要らん「ヒューマンドラマ」を持ち込みすぎな点。いや、こっちは『ニューヨーク1997』みたいなソリッドな作品を期待してた訳ですよ(実際、インスパイアされたんじゃないかと思わせる部分もある)。まあ、百歩譲ってハーレイ・クインマーゴット・ロビー)とジョーカー(ジャレッド・レト)の関係を描くのは仕方ないとして、デッドショット(ウィル・スミス)の親子愛とかエル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)の家族愛とかさあ、そういう要素、要らんだろ。特にあの、任務の途中にいろいろあって「もうやってられん!」となったスクワッドの連中がたまたま見つけたバーに入って、ディアブロさんが酒飲んで涙目になって死んだ家族のことを語りだした時にはさすがにイラッとした。そんで他の連中もグラス片手にウンウンうなずいちゃったりして、シンミリしちゃって、バカか! ゴールデン街か!

ていうかなあ、最初から酒瓶片手にラッパ飲みしながら戦うのが悪党だろ!

まあ、他にもジャレッド・レトの熱演がほとんどムダでいたたまれない、とかキャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)ってそもそも誰なの? ブーメラン投げるのが特技の人がなんで選ばれてんの?とかまだまだ言いたいことはありますが、もう何もかも割り切って、ハーレイ・クインの一挙一動だけに熱い視線を送り続けるのが、この映画の正しい楽しみ方だと断言して終わります。

※2023年6月18日加筆修正