『冴えない彼女の育てかた (7)』

この感情の持っていきどころの分からなさをどうすればいいの。。。なんかこう、よく燃える可燃性の気体が自分の中に膨れ上がってるのが分かるのに、どう火をつけたものかに迷ってるみたいな感じがある。たぶん、そう思っちゃうのは、この作品が思った以上にクリエイターの話をしてるからかなぁ。思えば、特に英梨々を巡っては昔からそれは描かれてきたことだったんだけど、僕にはクリエイターとしての負の感情、あるいは転じて創作意欲ってものを持てた実感がないから、それを持て余す。
正直最初に読んでる時はそのクリエイターの性がピンと来なくて、物語で描かれてる感情の全量を受け取れてるか、不安に思っていたんだけど、読み終えてから2時間くらい経った今は、単純に純粋に、ここにこういう物語の転換点を持ってこられた事実に昂ぶってるのかもしれない、という気もしてる。

もしかすると、丸戸さんの過去の作品を相応に知ってるからこその、先入観や思い込みがあるのかもしれないなぁ。倫也が恵に対して考えた”思い上がり”、あれに近いことは考えてしまっていたし。英梨々が描けない理由が、恵にあるんじゃないかってことも確かにちょっと考えた。でも、そうじゃないんだよなぁ。少なくとも英梨々が描けなかった理由は英梨々自身のものだ。倫也以外が理由になりはしない。
そして恵は、倫也の”思い上がり”が外れているからこそ、気持ちの持って行き場に惑うほど、めんどくさくて、持て余して、無茶苦茶可愛いんだよなぁ。キモくて都合のいい妄想の通りには来てくれないよ。だって、加藤恵だもの。でも振り返れば、そう幾らでも積み重ねてきてくれてたものはあった。だって彼女はいつも最高の裏方、倫也にとって最高のパートナーだったものね。・・・あー、ずっるいわぁ、139ページの挿絵。

そういえば前に丸戸さんがこの作品のキャラ作りについて、”王道からほんの少しずらす”って話をされてた気がするのだけど、確かにその意味で今回はすごく納得できるかも。特に恵も英梨々、それから詩羽先輩も。と言うか、その少しずらされた部分が凄くもやもやとしながら刺さりに来るんだよな。英梨々は今まで培ってきた”負け犬”な一面から、自分一人で立ち直る道を選んでるんだよなぁ。本当にこの娘は、倫也から離れて大丈夫なんだろうかと思って、万感溢れまくりの終盤に来たところで、あの挿絵ですよ!!いや、不憫な気もしてしまうけど、英梨々、お前どんだけ愛されてるんだよ、ある意味での話だけど。つーか、あの挿絵のせいで何もかもがぶっ飛んだわw

いやしかし、ここまで来て第一部完ってのは凄いよなぁ。この作品に関して言えば、過去の丸戸作品のような過去の因縁が大事だからこそ逆に全部計算づくで物語を組んでるというよりは、ドライブ感溢れる作りをしてるように感じるのだけれど、それでも裏打ちはしっかり念入りに、そしてやっぱり丸戸さんの本気を感じる。英梨々と詩羽先輩が抜けちゃって、実際この後どうするんだろうと思ったところで、まさかの、でもそれ以外ありえないという感じで出海ちゃんのターンなんだものなぁ。伊織め、やってくれるぜ。確かに倫也がクリエイターとして本気になると言っても、それは企画やシナリオについての話で、絵についてはどうしたって一朝一夕でどうにかなるものではないですものね。。
紅坂朱音については、作中での扱われ方が神様、もしくは化け物なので、正直真っ向勝負を挑むのは、この作品でやるべきことなんだろうかとも思うんだけど、たぶんそうじゃないんだよな。。倫也にとっては倒すべき、と言うか乗り越えるべき相手がまず自分ということになるのだろうし、それが英梨々や詩羽先輩に対して見せるべき戦い方なんだろうな。。

先行きはどうなるか分からない。それでも今は第二部に向けた期待と楽しみしか存在しない。倫也と恵は冬コミから今回までの一件で完全に腹を割って話してる。恵はもう倫也にとって、最高の裏方であることを、”メインヒロイン”であることを躊躇わないだろうから、立ち回り方にも変化があるかもしれない。英梨々は自分自身の手で誇りを取り戻すことを選んだ、詩羽先輩は・・・なんかもう全部掻っ攫っていったw
blessing softwareの3人の女神はそれぞれ新しい立場にいる。倫也自身も目指したいものがある。ならば、立ち回り方も少しずつ変わっていくはず。美智留はちょい蚊帳の外だったけど(苦笑)、ここに出海ちゃんという新メンバーが加わったら、何が生み出されるのだろう。つか、倫也と恵と出海ちゃんって夏コミの時に一緒だった3人なんだよな。ああもう、ワクワクするなぁ、本当に。

と言うか英梨々、倫也と同じクラスになれて良かったねぇ。。いくら一人で立ち直ったと言っても、せめて、それくらいの立場は得ていてほしいもの。一方で恵は違うクラスだけど、”冴えない”呼ばわりされてる割に超美人であることが明らかになってる彼女が違うクラスになってしまったのは、いつでも倫也の目に付く場所から少し離れてしまったのは、ちょっと心配です。でも、その分、恵自身がアクティブに動いてくれるのかな。

ちなみに今回のリバーシブル仕様のカバーの裏側。描かれているのが、誰のどんな姿か?ってところは正直予想してたうちの1つでした。でもまさか、こんな展開を通して、またここに還ってくることになろうとは予想できるはずもありませんでした(苦笑) ああ、でも無茶苦茶可愛いな、恵。ほんと、この娘のどこが冴えないって言うんだろうw

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。4』

これがこの作品の真骨頂か。。。理解した。確かに理解した。理解してしまった。

この作品、巻を重ねるごとに共感できる部分が見えてきてしまうなぁと思っていたけれど、正確にはたぶん逆で、この八幡の掲げる主義主張を吐き出させるために、その牙を突き立てるタイミングを見計らってたんじゃないかなぁって気がしてきた。思えば1巻の頃に八幡に共感できるかって面で感じた″隙″は、彼が(と言うか著者の渡航先生が)まだ本心を見せず、ぼやきやネタにして流すことで韜晦してたからなのかもしれない。ともあれ、そのようやく開陳された彼の牙は、いやぁ読んでて刺さる刺さる刺さる。

この巻を読んで八幡の生き方、主事主張がどこから来ているのか、彼が何を憎悪してるのかがようやく分かったけれど、彼は強いのだろうか弱いのだろうか、とそんなことを考えてしまう。世界の側に無意識な悪意が無ければ彼は憎まないのかな。。いや、ちょっと違うか。別に悪意が自分に向いていなくても、元より彼はぼっちだし、世界が”そういうもの”だと悟ってしまっているから、欺瞞を許容したくないのね、なるほど。

彼が感じてる欺瞞は分かる。自慢じゃないけど、分かる。でもそれを分かった上で敢えて彼に問いたい。自分の生き方に劣等感や後悔は無いのかい?って。自分の経験を振り返った上で言うと、ぼっちであることに劣等感や後悔を覚えるのは、他人との付き合いを諦めきれていないからだと思うんだけれど、例えばこの巻の22ページの1行目で彼は「どれだけ近い距離に人がいても、それを同種と認めなければ渇きが潤うことはない」と独白している。ここで″渇き″という言葉を使っているのは八幡も、他人との付き合いを求めているってことなんだろうか。

更に言えば、彼はその欺瞞を押してでも一緒にいたいと思う相手に出会ったことはないんだろうか。他人に対する諦めを超えて、誰かを求めてしまうような感情を持ってしまうことはないんだろうか。翻って、自分がこの作品を読んでて結衣が眩しく見えるのはたぶんそこが理由なんだろうなぁとも思う。彼女は鋳型に流し込んだような善人ではないけれど、だからこそ、八幡をちゃんと視ようとしてくれてるから。雪乃のように一番根っこの部分で八幡を理解できないかもしれないけど、線を踏み越えようとしてくれてるから。てゆーか、ヒッキー、結衣がモテるって聞いて動揺するんだね。彼自身、気持ちを持て余してるんだろうけど。

てか、前巻で仕切りなおした結衣との関係も、リセットしたからと言ってすべてが割り切れるわけでもないんだな。ただ断絶がなくなっただけで。お互いの距離、と言うより、どういった感情を交わして付き合えばいいのかを測りかねてるだけで。だから演技する。逆に言えば演技しようとするくらいには彼には捨ててないものがあるのだな。

この作品、八幡が彼自身の経験で培われた主義主張を抱いている限り、本当の意味でラブでコメる展開を迎えられるかはまだ分からないんだけれど(タイトルに付いてる「まちがっている」って部分はこれから先も間違え続けるという意味なのか、それとも後で間違っていたと振り返る意味なのかが気になる)、小町のお姉ちゃん候補、もとい2大ヒロインである雪乃と結衣の2人は、八幡に対する立ち位置が雪乃は”共感”、結衣は”救い”(彼はその優しさを認められてないですけど)なのは対照的だなぁ。。

どんどん可愛いところが見えてくる雪乃はしかし、ラストの展開が意味するところがまだ見えないかな。。なんとなく「ラスボスが見えた」感があるけど、それが錯覚なのかどうかも分からない。彼女が抱えている家の事情に、八幡のぼっち理論はどう噛み合うのか、そもそも噛み合わせたいと思うのか。元より、雪乃にだって、彼女自身のぼっち理論があってもおかしくないのに。この作品はどこに向かうのか。
一方で葉山にははっきりと心の中で”敵”として認識されましたが。しかしあの台詞は良いなぁ。八幡と葉山にとっては初めてお互いを正確に認識した瞬間だったけれど、たぶんそれ以上に八幡にとっては自分自身にはっきりとした感情を向けられること自体に意味があるんじゃないかな。彼が欺瞞を厭うて距離を置く世界から、爪弾きにされるのではなく、当事者として向けられた感情。それは八幡自身に自分が何をどうしたいのかを問うきっかけにも成り得るんじゃないだろうか。

一番最後に判明したハイヤーの話も、最初は意味が分からなかったんだけど、そうか入学式初日に八幡がサブレを救うために撥ねられた、その車が雪乃の家の車だったのか。。不思議な縁で繋がった3人。八幡は結衣に一度そうしたように雪乃との付き合いを否定するのだろうかと一瞬考えたけど、そもそもユキペディアさん、ヒッキーに対して優しいわけではなかったし、それ以上にしっかり見てないと、雪乃の方が手が届かないところに行ってしまいそうな気もする。ただ、陽乃姉さんが雪乃たちをどうしたいのかもいまいち見えないんだよなぁ。。

いろいろと気になる部分、渦巻く感情を抱えたまま季節は過ぎていくけれど、青春真っ只中にいる彼らの物語の進む行く末が気になる。

それにしてもこの作品、本編とは別に千葉ネタが面白いなぁ。。今回八幡たちが行った千葉村って、大宮市もとい、さいたま市で言うところの舘岩少年自然の家みたいな感じだろうか。そう思うと、妙なところで共感も湧いてくるけど、麦芽ゼリーは知らなかったな。。食べてみたい。
あと、小町さんは時々ナチュラルにこちらの想像の斜め上を軽々と越えて行ってくれるね。「ベントラーベントラー」には噴いたw

『冴えない彼女の育てかた 6』

だから!まだ共通ルートなのに個別ルートに匹敵する情動を叩き込むのやめてよぉぉおおお!!!でも、ここで、こんな形で次巻に続くのか!!!という懊悩を抱えて悶えてます。

まさか英梨々のエピソードが、あの某浮気ルートを思い起こさせる展開を伴ってやってくるとは思わなんだ。。でも、別に倫也が壊れてしまったわけでも、2人でどこまでも堕ちていこうとしてるわけでもない。いや、冬コミでのパッケージ版頒布という、大切な機会は壊してしまったんだけれども、それを倫也は自分の意志で選択してる。それをさせてしまったのが英梨々、なんだよなぁ。読んでて思わず、"手元に置いとく道具箱"って言葉が頭に浮かんでしまったけど、倫也の英梨々に対するこの扱いは"道具箱"って感じじゃないよなぁ。そんなふうに、倫也にとっての英梨々の特別さを彼の行動から実感させられる一方で、彼の本心は違う意味で彼女が特別だと言っている。

倫也と英梨々の仲直りって、いったい何をしたら仲直りと言えるんでしょうね。英梨々は倫也に認められる誇りが欲しかった。けれども、倫也は"自分だけの"英梨々が欲しかった。自分にはそう読めた気がします。あの夏の花火の夜に預けた勝負は英梨々が戦い抜いたことで区切りがついた。でも、倫也はそれだけじゃない感情だって抱えてしまってるし、そこについての決着は倫也が誰かを選ぶまでつかないのかもしれない。いや、今はそれだけで済まないのかもしれない。その辺りの決着の着かなさ具合がまた悶々としますね。本当に、これだけ滾った感情をぶつけてるのに、まだ誰のEDにも到達できないってのが歯がゆいですわ。伊織じゃないけど、何も無かったことの方があるわけないよなぁ、本来なら。
倫也が感じた劣等感が英梨々の幼なじみとしてのものなのか、それとも一人のクリエイターとしてのものなのかは気になるけれど、そこが宙に浮いたままであることと、この巻のラストは関係があるのかどうか。倫也が認めた英梨々は大勢のファンのためではなく、倫也一人のためでしか到達し得ない新境地なのか、と言ったことまで考えてしまったけど、それだと益々着地点が分からないな。。

そして、この巻でもう一人。解決されずに棘が刺さったままとなっているのが恵。てゆか、倫也は英梨々にすべてを捧げてる間、やっぱり恵たちには連絡取ってなかったのか・・・。事前に恵が提案してくれていた方法と、これまで彼女が自分からサークルに関わろうとしてきた変化を考えれば、恵の気持ちは必然だよなぁ。けど、それでも倫也はその『責任』が欲しかった、ということを行動で表してしまっている。結果として、倫也が取ってしまったのはディレクターとしての責任じゃなくて、英梨々の幼なじみとしての責任なんだもの。

と、最後まで読み終えてからこの巻前半の倫也と美智留のやり取りを思い返すと、少しラストの居心地の悪さ、というか不安感に形が与えられるような気がしますね。「サークルが上手く回っているのは恵のおかげであり、恵は一番の味方だけれど、一番の敵でもある」ということ。このやり取りの後半部分について、美智留に指摘された時に倫也はその意味を理解できていなかったけど、だからこそ、このラストってことなのかなぁ。いや、自分もそこはまだ全部が理解できてるとは思ってないんですけど。

倫也との『ちょっとした断絶』が一月以上が経過してしまった中で、恵は何を考えているんだろう。怒っているのか、後悔してるのか、それとも悔しいのか。この巻のラストの恵は、2巻で彼女が見せた”ムッとした表情”の更に先の状態にある気もするけど、あの時彼女のその表情を描いた英梨々を倫也が選んだからそうなったってわけではなく(恵自身も言ってるように倫也が正しいことをしたのは分かってるのだろうし)、たぶん恵自身が倫也をどう思っていて、どう思われたいかの問題である気がするけど、ここからどう解決するのかが分からないなぁ。倫也の傍らにある恵の居場所はどうすれば、取り戻せるんだろう。
英梨々との問題もそうなんだけど、ヒロインとして結ばれるかどうか?ってことと平行して、サークルメンバーとしてどうか?クリエイターとしてどうか?っていう葛藤がある気がして、その辺りが先の読めない不安感を後押ししてる気がします。
次巻の季節は春。冬が終わり、君のいない春が来る。元より詩羽先輩は卒業してしまうけれど、果たして本当にそれだけで済むのか?そんな不安を感じつつ、次巻を待つのがもどかしいけど、次は短編集かぁ。。まぁアニメ化と合わせてどんな展開がやってくるかに期待して待つしかないか。。

それにしても、今回の髪を伸ばした恵はヤバイね。。正直彼女のポニーは最初のショートボブと比べて、そんなにツボじゃなかったんだけど、あれはこの髪形に到達するためのいわば蛹の時期だったのかと思ってしまうような。正直、凄みを感じるくらい綺麗な女になってると思う。今の彼女は。それこそ、図らずもこの巻のラストと重ね合わせて、closing chapter冒頭の雪菜のような存在感を感じてしまうなぁ。

『凪のあすから』

遅ればせながら『凪のあすから』最終話まで視聴。うん、個人的には納得のいく着地点でした。いや、しかし終わってみると特に2クール目はつくづく自分の好きなとこ突かれた作品だったなぁ。やっぱり、時間と変化ってテーマには弱い。

個人的にちさきを巡る気持ちの変化はやっぱり想うところが多かったなぁ。この作品の”変わること”と”変わらないこと”ってテーマは特にちさきを通して描かれることが多かったように思う。ちさきが光に助けられた時に、彼のことを好きなままだと安心するシーンとか、とても印象的だった。それって、光が変わらないから好きなのか?ちさきが好きだったのは”あの頃”の光なのか?自分は変わってしまったから、変わらない光が好きなのか?そんなふうに幾つもの問いが浮かびましたもの。
「生まれた時からずっと一緒だった」光と「たった5年を共に過ごした」紡の間で、自分の気持ちがどこにあるのかに彼女は悩むけれど、ただ時間の経過って意味で言うなら人の生きる時間の速さは変わっていくものだよね、と。正確に言うなら、その時間の感じ方は。例えば子供の頃は時間が経つのがとてもゆっくりに感じられたけど、大人になってからはあっという間だとに感じるみたいに。この考えで言うなら、光と過ごした時間の方が更に長く感じてしまうものかもだけど、ただそれだけで一概に言えるものでもなく。

結局積み重ねてしまった時間の重さってのは人によって違うんだよなぁ。それが子供から大人になる時期なら殊更に。同じ時間を過ごせるか、変な意味で無く一緒に大人になれるか。それってやっぱり重いと思うんだよな。
で、そのことを違う立場から実感してたのが要なわけですね。ずっとちさきに片想いしてて、ただでさえ昔からちさきが光のことを好きなの知ってたのに、今度は時間にさえ隔てられてしまった。同じ時間を積み重ねることができなかった。だから、どうしようもなく届かない。個人的にある意味この作品で一番感情移入してしまったのは要かもしれません。

そして、だからと言うべきなのか、ヒロインたちの中でさゆが一番好きかもしれなくてどうしよう(苦笑) この作品、2クール目は鳥肌立ったシーンいっぱいあるけど、思わず泣いてしまったのは24話のさゆと要のシーンだけだったんだよなぁ。あれはなぁ・・・駄目でしたわ。さゆの言葉にどうしようもなく、”救われた”と思ってしまった。絶えず蚊帳の外にい多自分を見てくれる人がいるってのはさ、なんて得難いんだろうって。
あのシーン、2人を隔てているのが踏切ってのは印象的だなぁ。自分としては、どうしても『秒速5センチメートル』を想い出してしまった。正直スタッフの方にそういう意識があったのんじゃないかと妄想してやまないくらいに。
秒速でタカキとアカリはたぶん物理的な距離だけでなく、生きる時間の速さが違ったから隔てられた。『凪のあすから』でも、片想いだったけど、要のちさきへの気持ちは生きる時間の速さの違いに隔てられた。けれども、その生きる時間が5年隔てられた末に繋がってくれる気持ちもあった。待っていてくれる人が、見ていてくれる人がいた。たぶん、自分が救われたと思ってしまったのはその辺りも理由なのだと思う。

24話辺りまでを見ていて、結局”変わること”と”変わらないこと”にどちらが正しいってのはないんだよなぁと思ったので、最終話の展開と結末は頷けるものだったなと思います。だって人によって生きる時間の速さってのは違うし、だから人によって選ぶ答えが違うのは当たり前なんだよね、と思うから。人の繋がりって、そういうものだと思うから。だから人の数だけ物語がある。

最後の”おふねひき”で海が荒れた時に要が最初に助けに行ったのがさゆなのも印象的な変化だよなぁ。自分はあれを都合が良いとは思えなかったのだけれど、たぶん10年前の自分だったらそうは思わなかったかもなぁとか思ってしまった。まぁ人の気持ちの変化ってのはそういうもの。
あと、自分はやっぱり美海が好きだったので、彼女の気持ちを汲んでくれたのが嬉しかったって気持ちはありますね。要と美海って結構対照的だと思うんだよなぁ。ちさきが積み重ねた新しい5年間のために身を引こうとする要と、光がずっと昔から想ってきた気持ちのために身を引こうとする美海と。ただ、どちらかと言うと三角どころか四角関係的な一方通行の片想いはちさきが担ってくれたので、まなかと美海はどちらかと言うと見届ける語り部的な役になることも多かった気がします。それに最終的に辿り着く答えが変わってもいいし、変わらなくてもいいってことなのは自分の中で組み立てていた視方の通りだったので、敢えて光にその結論を出させるところまでは描かずに留めたんだなと。美海自身も自分の気持ちを否定してないですしね。だから、良かった。

この作品、特に終盤で「好き」って気持ちが象徴的なものとして描かれてるけど、人が生きてく時間の速さの違いを実感するのも、それに思い悩むのも、それは”相手となる誰か”がいるからだよなぁ。その誰かへの気持ちがあるから、変わってしまうこともあるし、変わろうと思うこともあるし、変わらず思い続けることもある。その想い悩む気持ちも、時間の変化も肯定して描いてくれたから納得感があるってのはあるかなと思う。『凪のあすから』ってタイトルも、停滞を表す『凪』と、変化の兆しや未来を伺わせる『あす』を繋げてる辺り象徴的だったと思います。

『マブラヴ アンリミテッド ザ・デイアフター episode:01』

マブラヴ オルタネイティヴ クロニクルズ02 UNLIMITED THE DAY AFTER episode:01』終了。無茶苦茶面白かった。この作品に対して「面白い」って言葉を使ってしまっていいのか迷うところはあるけど、今回はそう思える着地点を見せてくれました。それでいてこれは紛れもなくオルタだなぁと思う。いや、世界観的にはオルタじゃなくてアンリミなんだけど。

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『冴えない彼女の育てかた 4』

最初に表紙を見た時に「この娘は誰だろう?」と思ったら、そして最初にページを繰った時に「お、サークル名も決まったから今回からメンバー紹介という名のキャラ紹介ができたのか」と思ったら、そうか、それもすべてはこの巻で『Blessing software』が完成することへの布石だったのね。うん、考えてみたら同人ゲームなのだから、スクリプト担当が必要なのは前提とした上で、シナリオ担当と絵師だけでなく音楽担当が必要だよなぁ。一瞬「また新ヒロインか」って思ってしまったけど;、新しい人材が必要なのは必然であった。

新ヒロインの美智留さん、表紙でかかれてるあぐらがやたらと肉感的なのは思い切り本編を反映していたのね。これは確かに悩ましいっていうか艶めかしい・・・。てゆーか、彼女のステージ衣装がスカートの下にスパッツ穿いてるのかどうかが気になって仕方ない&下乳も良いけど横乳も良いよね!な感想が頭を過ぎって仕方ないけど、それはそれとしてやっぱり可愛いなぁ。この作品の中で初めて明確に倫也の夢に対する敵として立ちはだかりながら、そこからの引っくり返し方の気持ち良さがなんかこう実に用意周到なんだけど、確かに倫也が自分で駆け回ってるのが分かるから面白過ぎる上に爽快で堪らない。ヒロインを”攻略”するたびに改めて思ってしまうけど、やっぱり倫也って丸戸作品の主人公だよなぁ。美智留も倫也の明確な敵になっておきながら、そこは2人で築き上げてきた時間がある”幼なじみ”だからかもしれないけど、関係自体はそうそう変えられない。寧ろ倫也の努力が功を奏した瞬間にこそ、互いの関係が変わってしまうことで見えてくる可愛さ。・・・あぁ、彼女もまた倫也の魅せる本気に触れてしまったんだなぁっていう(苦笑)

しっかしそれにしても、この巻で倫也の夢を叶えるサークルが形になったことで、倫也を取り巻く彼女たちの空気が少しずつ変わってきた気がするなぁ。”作品が完成に近づく”ってことはそれだけこのサークルのメンバーの関係が成熟してきたってことでもあるよなぁってことを実感してしまう雰囲気が漂い始めた巻でもありました。・・・てゆーか正直この空気って『WHITE ALBUM2 -introductory chapter-』の学園祭前の軽音楽同好会に通じ始めたように思えるのは気のせいじゃないよね?それは皆が同じサークルのメンバーとして1つの作品を創り上げることに真剣に向き合い始めたってだけでなくて、たぶん誰もが倫也に”本気”になってきてしまっているから、今はまだバランスが取れているけど、これが崩れたらどうなってしまうんだろうっていう、たしか学園祭前に依緒たちが抱いていた不安感。そんなところにも共通した雰囲気を感じてしまいます。

これ、誰が最初に引き金弾いちゃうんだろうなぁ。てっきりこの巻のラストの辺りで美智留がその役目を担ってしまうのかと思ったけど、流石にそうはならなかった。もっとも、あれは倫也がそれまで散々美智留の明け透けさを意識してたのに、そのくせしてしっかり原初の”幼なじみ”としてのセオリーをたぶん本人が意図せず踏んでしまっているせいっぽいけど。これが英梨々相手だとたぶん同じ”幼なじみ”でも少し勝手が違うんじゃないかなぁ(いや、どうだろう)。何せ、倫也は英梨々を”初めて意識した”相手だと独白するのに躊躇ってないですからね。つまり、それってぶっちゃけて言えば倫也の初恋が英梨々だったってことじゃないですか。今回幼なじみとしてのお株を奪われて何かと抜け殻になってたのがやたらめったら可愛いかった英梨々だけど(ご両親が倫也をオタクの道に引き込んだことを嬉々として語るシーンがなんかもう面白可愛過ぎたw)、その意味じゃまだまだ勝負はついてないんじゃないかな。>英梨々

あと、英梨々と言えば驚いたのは加藤さんとの関係だよなぁ。まさかここでお互いに名前で呼ぶようになるところまで踏み込むとは予想外だった。でも、考えてみれば英梨々にしてみれば、もしかして加藤さん、初めて自然体で話すことの出来る”女友達”なのかもしれない(いやほら、詩羽先輩はたぶんライバルとして意気投合することはあっても、同じサークルの仲間ではあっても、”友達”とは思えてなかったような気がするし)。だから根っこのところでお人好しだったり優しかったりする英梨々がそれを望むのは必然なのかも、と思う一方で、そこに倫也を挟んで視た場合彼女が何を考えているのか気になってしまうのは2巻のラストの2人のやり取りがあるからなんだよなぁ。あの時、英梨々が加藤さんに対して感じていたのは皮肉?共感?でも、どちらにしてもその感情が育ってないわけはない気がする。だって、この巻であれだけ仲良くなったた2人だもの。いや、それだけでなくたぶん今回一番倫也に対して動いたのが加藤さん・・・ううん、恵なのは間違いないと思うし、英梨々はその時彼女の傍にいたのだから。

自分からスクリプトを覚えて、しかもそれを通じて倫也にメッセージを送るなんていう気の利いた”意趣返し”。しかもそれを用意する時に彼女が英梨々に言った台詞は「見栄、張るよ・・・・・・女の子なら、さ」なんだよなぁ。つまり恵が自分から倫也に対する自分の位置づけを”友達”でなく”女の子”とした辺りに彼女の大きな感情の変化が視える気がします。英梨々はそんな恵をどんなふうに見てたんだろう。てか、彼女のことを名前で呼ぼうとしたのも、あのやり取りの後なんですよね。そこに見え隠れする2人の感情の変化が今後の展開にも影響を与え・・・ていくのかなぁ。WA2の時は基本的に中心となるヒロインが2人だけだったけど、この作品の場合すでに多角形を形成してるんで、揺り戻しが来るにしてもどの方向から来るのかが素直には読めないのだわ;
でも、恵が倫也と2人だけで喫茶店にいる時のやり取りがここ最近の彼女の中では一番上機嫌っぽく視えた(久しぶりの2人きりだから?)のは、倫也がその微笑みに陥落させられるくらい間違いない気がします。あーもう!可愛いなぁ、くっそー。てゆか、恵さん、なんだかんだでスマホいじってるシーンが多いけど、これがただの無関心に見えて実は彼女視点で見たら内心結構な情念が渦巻いてるのに素知らぬふりをしてました的な展開になっても、なんかおかしくはない感じになってきた気がする。いや、流石にそれは深読みのし過ぎかもしれないけど。ついでに言えば、そういう展開を期待してるとも言い切れないのはやっぱり自然体な彼女のフラットさが魅力的だと思ってるからなんだよなぁ。

そして、そんな英梨々と恵、それから美智留のことも含めた顛末を今回は一歩引いたところから見てたように思える詩羽先輩。けれどもラストにはまた大きく先を見据えた伏線が来た感じがします。この巻を読んでWA2の学園祭前の雰囲気を思い出してしまった一番の理由はそこなんだよなぁ。つまり「『Blessing software』があの作品を創り終えてしまったら、その後はどうなる?」っていう問い。これってまんま「WA2の学園祭が終わったら?」って問いに重なってくる。しかも、ただ関係が崩れるだけじゃない。美智留の指摘によって倫也が冬コミの先にある春、詩羽先輩の卒業まで視野に捉えた。もしかしたら以前から意識はしてたのかもしれないけど(倫也のことだからその可能性は高そう)、改めて他人に、しかも同じサークルのメンバーとなった美智留に指摘される形で目を向けさせられた。あの独白を読んだら『WHITE ALBUM2 -closing chapter-』の「冬が終わる。君のいない春が来る」ってコピーを思い出すなって言う方が無理な話だと思うんだ。。。

この作品のヒロインはまぁ皆さん曲者揃いではありますけど、一番”めんどくさい”のが誰かって考えたら、なんとなく詩羽先輩な気がしてしまうのはこれまでの丸戸作品の影響なのかなぁ。でも、実際たぶん周囲がよく視えてる分、抱えてるものはありそう。それが次巻で解消されるのか、それともこの作品の完結の時まで引きずることになるのか。てか、そもそもこの作品のゴールってどこなんでしょうね。それこそWA2じゃないけど、”学園祭”=冬コミは『Blessing software』としては一つの到達点になるのだと思うけど、倫也たちの関係から考えたら寧ろその先の関係がどうなってしまうのかが気になってくる。作中の季節はだんだん冬が近づいてきてるけど、その辺りどうなるのかなぁ。てゆか、”冬”ってだけでいろいろと勘繰ってしまうのは・・・やっぱりWA2を彷彿とさせられてしまう時点で仕方ないと思うんだ。。。

『ソードアート・オンライン (12) アリシゼーション・ライジング』

最後の数ページは今回はどこで終わるんだろう?と思いながら読んでたけど、ここでこういう終わりかー!はー続きが気になる。アリスとの想い出はかつてキリトも経験したはずの記憶。ラストの展開はそれを開く鍵になったりするのかなぁ。一方でユージオは規則の縛りから一つ外れて自分の剣に何が込められるのかをはっきりと意識し始めた姿が印象的。今回ユージオの視点からキリトの奮戦ぶりと動けない自分という対比で語られることが多かった気がするけど、その意味でもラストの展開を含めてユージオがもう一人の主人公として試され続けてるように感じる。気になるのはキリトが懸念していたような、いつかユージオと剣を交えるような展開が訪れるのかどうかだけど。。仮にその時がやってくるとしてもアドミニストレータに整合騎士にされて、みたいな展開は嫌だなぁ。ユージオ自身はキリトが「自分はアンダーワールドで死んでも本当に死ぬわけではない」ということに対して感じてる心苦しさの一端にその理由はともかくとして、ほんの少し気づいたようだけど、いずれはそこが2人の運命を分けたりするのだろうか。てか、キリトは「ここで死んでも身体は死なない」と思ってるようだけど、本当にそうなんだろうか。アンダーワールドで死んだら身体ではなく、魂そのものが死んでしまうんじゃないのかなぁ。。。


この巻の前半ではカーディナルによってアンダーワールドの置かれた状況と倒すべき敵までの道筋が明かされたけれど、ラスボスがラスボスなのでまだ得体の知れなさがあるというか一筋縄では行かない感じもあるかな。でも、ただ一直線にフロアを上がって整合騎士と戦っていくだけより、得られるものは多い気がする。その意味でラストの展開は次巻に期待が高まる。それに本当のラスボスは現実世界にいるのかもしれないし。アンダーワールドから脱出させられる10人と言う頭数は多いようで少ないけれど、やっぱキリトなら違う道を選んでくれるのだろうか。てゆーか、しっかしキリトさんの無双ぶりはすげぇなぁ(苦笑)いったい何人攻略してくれるのやら(違) ファナティオはいったん戦線離脱してしまったけど、フィゼルとリネルは再登場あったりするのかなぁ。


そういえば整合騎士って別に番号が若い方が強いとは一概には言えないのですね。番号が若い方がなった時期が早いというだけで。あと、アドミニストレータから与えられた武器によっても強さは結構変わってきそうな気がするけれど、その点アリスがあの破格の武器を与えられた理由はなんなのだろう。それだけ当人に何らかの素質があったということなのか。


それにしても思えばアインクラッドもラスボスはGMだったけど、アドミニストレータはその生まれとアンダーワールドがこれまで積み重ねてきた歴史そのものの重みから枷から外れた”手が付けられない感”が強い。やっぱりどことなくアクセル・ワールドの加速研究会を彷彿とさせる実験を重ねてきてるっぽい一方で、持ってる力はただの人間ではなく既に圧倒的高みにいる。敵の正体は視えたけど、どう挑んでくれるのかなー。やっぱアドミニストレータが感情を切り捨てたのに対し、キリトたちは感情のある人間だってことが鍵になるんだろうか。