M/G/sの待ち確率Πの近似(4)
「M/G/sの待ち確率Πの近似(3)」では
もし待ち行列で
- [tex:k
ならば
- ・・・・(2)
が言えることが分かりました。そうすると問題は式(1)が言えるかどうかです。今のところ分かっていることは、
- ならば式(1)は言える。
- ならば式(1)は言える(ただし、、としてを有限の値、とした場合ですが)。
です。ところで「M/G/sの待ち確率Πの近似(2)」で引用した滝根哲哉氏*1の「確率離散事象論講義資料」平成16年4月8日(http://www-optima.amp.i.kyoto-u.ac.jp/~takine/tmp/shiryou.pdf)には、
サーバ数が無限であるので、到着した客は待たされることなく直ちにサービスを受けることができる。無限サーバ待ち行列はシステム内での客の振舞いが互いに独立と見なせる場合をモデル化したものであり、
という説明があります。さらに、
なお、式(23)はサービス時間の平均がであるような全てのに対しても成立する。このように、サービス時間分布に関して、その平均値のみで系内客数の確率分布が定まる性質をサービス時間分布に関する不感性(insensitivity)という。
という説明もあります。では客が待たされることなく直ちに処理中になり、到着はまったくのランダムに発生するので、確かに「システム内での客の振る舞い」は「互いに独立」です。つまり各装置が空いているか処理中であるかは、全ての装置で独立に決まります。そうであれば、処理時間の分布が何であってもが同一の値を持つのは理解出来ます。そうすると
- ならば式(1)は言える。
ということになります。問題は
- 命題1:ならば式(1)は言える。
- 命題2:ならば式(1)は言える。
- 命題3:ならば式(1)は言える。
という命題から、
- ならば式(1)は言える。
と言うことが出来るかどうかです。これは残念ながら言うことが出来ません。というのは命題3が言えたのは、客が互いに独立に振舞う、という点を前提としており、客が互いに独立に振舞えるのは、到着した客が待つことなく処理を開始する、ということと到着がポアソン過程である、ということを前提にしているのですが、では「到着した客が待つことなく処理を開始する」という前提が崩れるからです。ただし、の値が大きくなればの値はかなり大きくても客が待たされずに処理中になる確率が大きくなるので、の値が大きくなるほど式(1)が近似的に成り立つようになる、と考えられます。
では、の値が小さい場合には式(1)はどのくらい不正確なのでしょうか? 今、を対象にしているわけですが、の中でもに近いような待ち行列ならば不正確さがあまり現れないと予想されるので、誤差がより大きく現れると予想されるを考えてみます。そしての一番小さな値としてを考えます。(ならば、となって直ちにとなるためです。)
さて、これから何とかして待ち行列のとを求めなければなりません。その上で式(1)でを代入した
- ・・・・(8)
を評価して式(8)の不正確さを見てみたい、と思います。